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アジアカップで露呈した課題はそのまま残り、森保監督のベンチワークも後手を踏む【コロンビア戦分析】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

アジアカップで露呈した4つの課題

 2月1日に行なわれたアジアカップ決勝戦以来、しばし活動休止状態にあった森保ジャパンが再始動し、3月22日にコロンビアとの親善試合を行なった。

 結果は、64分に冨安健洋(シント・トロイデン)のハンドによって与えたPKをラダメル・ファルカオ(モナコ)に決められ、0-1で日本が国内初黒星を喫することとなった。森保一監督が就任して以来、日本がノーゴールで終わったのも初めてのことだった。

 ただ、この試合が親善試合であったこと、相手がコロンビアという南米の強豪であったことを踏まえると、敗れたこと自体はそれほど大きな問題とは言えない。何より、26日のボリビア戦も含めた今回の2試合が6月のコパ・アメリカに向けたテストマッチととらえれば、あくまでも試合の内容を重視する必要がある。

 その意味では、このコロンビア戦を振り返るとき、アジアカップで露呈した森保ジャパンの課題をあらためて整理しておかなければならないだろう。なぜなら、日本サッカー協会が準優勝で終わったアジアカップでの戦いぶりと森保監督に対する評価を公にせず、結局、うやむやな状態のまま、今回の親善試合を迎えることになったからだ。

 現在の森保ジャパンの課題はどこにあり、このコロンビア戦の狙いはどこにあったのか。そしてその狙いは、どの程度クリアできたのか。そこを明確にして試合を振り返らなければ、トータルで見たときの森保ジャパンの成長プロセスもぼやけてしまう。

 そのアジアカップで明らかになった主な課題は、相手に分析されたときの攻撃面の打開策、大迫勇也が欠場したときの代役発掘とその戦術、チーム全体としての戦術(システム)オプションの構築、そして森保監督のベンチワーク、といったところにあった。

 また、選手の自主性を重んじる森保監督のチーム作りからすると、臨機応変、柔軟な対応という部分も、試合を見ていくうえで重要なポイントになる。しかしこれについては、選手が代わればサッカーの中身も変わってくるため、選手選びとその組み合わせという視点で確認していくしかない。

 いずれにしても、それらのポイントからコロンビア戦をレビューすると、たしかに日本は善戦したものの、多くの課題が残されたままに終わったと言っていい。

対策を練って挑んできたコロンビア

「我々は日本を分析し、彼らの特徴もわかっていた。テーマとして、縦パスを簡単に通させないようにした。後半は、日本のフラストレーションが溜まったタイミングで、我々が(相手の)裏のスペースを使って攻撃的にできた。簡単に言うと、前半は日本に仕事をさせない、後半は日本が疲れてきた時に攻撃に出た、ということ」

 試合後、そのように振り返ったのはコロンビアのカルロス・ケイロス新監督だ。もちろん会見上のコメントゆえ、すべてが本心とは思えないが、実際にこの試合で起こった現象からすると、正鵠を得た総括と受け止めていいだろう。

 そもそもカルロス・ケイロス監督はアジアカップでイラン代表を率いていた人物で、同大会準決勝では、自滅する格好で日本に完敗を喫した苦い経験がある。当然ながら、その対戦時から日本対策は織り込み済みだ。

 しかもこの試合は、コロンビアの監督として臨んだ最初の試合。アジアカップのリベンジに、初陣で白星スタートを切りたいというモチベーションが加わったため、典型的な親善試合とは少し違った展開となった。

 そのコロンビアは、この試合で4-2-3-1を採用。1トップにファルカオ、トップ下にハメス・ロドリゲス(バイエルン)というビッグネームを配置した。GKダビド・オスピナ(ナポリ)、右SBサンティアゴ・アリアス(アトレティコ・マドリード)、MFファン・フェルナンド・キンテーロ(リーベル・プレート)といった主力が負傷欠場し、MFカルロス・サンチェス(ウエストハム)とFWフアン・クアドラード(ユベントス)も負傷により長期離脱中だったものの、それ以外はほぼベストメンバーを揃えた格好だ。

 対する森保監督は、招集メンバーの部分で悩みを抱えていた。

 6月のコパ・アメリカは招待国として参加するために拘束力がなく、ヨーロッパでプレーする何人かの主力を招集できない可能性が高い。そのため、それを想定して今回の親善試合では、長友佑都(ガラタサライ)、吉田麻也(サウサンプトン)、酒井宏樹(マルセイユ)、原口元気(ハノーファー)、遠藤航(シント・トロイデン)、伊東純也(ゲンク)、大迫勇也(ブレーメン)、武藤嘉紀(ニューカッスル)といったアジアカップ時のヨーロッパ組を招集外としている。

 つまり、3月と6月の計4試合を含め、6月のコパ・アメリカまでは戦術の浸透を図りつつ、秋から始まるW杯アジア予選に向け、大迫の代役を含めた新戦力の発掘という明確な目的が加わった格好だ。アジアカップのAチームを一旦解散し、おそらく今後は6月のコパ・アメリカまでに戦力の底上げを図ったうえでW杯予選本番に挑むことになる。

 そういう点では、チームのマンネリ化を回避しながら、新戦力の台頭を促せる現在の環境は決して悪いことばかりではない。むしろ、歓迎すべき状況とも言える。

 そして、そのような狙いを持って臨んだコロンビア戦のスタメンは、冨安、柴崎岳(ヘタフェ)、堂安律(フローニンゲン)、南野拓実(ザルツブルク)というアジアカップAチームの4人、東口順昭(ガンバ大阪)、室屋成(FC東京)、佐々木翔(サンフレッチェ広島)のBチーム3人、同大会を負傷欠場した中島翔哉(アル・ドゥハイル)に、森保ジャパン初招集の昌子源(トゥールーズ)と山口蛍(ヴィッセル神戸)、そして代表初招集の鈴木武蔵(コンサドーレ札幌)の11人だった。

 システムは、通常の4-2-3-1というよりも、鈴木と南野を並列にした4-4-2のかたちをとった。基本的にこれまでの森保ジャパンは攻撃時が4-2-3-1で、守備時は4-4-2になるため、前後半ともにボールを握られたこの試合の展開によってそのかたちを強いられたと見ることもできる。

 ただ、南野が鈴木との段差を作ってボールを受けるシーンがほとんどなかったことからすると、コロンビアの実力を考慮したうえで、敢えて守備を重視した2トップを採用した可能性もある。もちろん、鈴木のプレースタイルが大迫のそれとは異なっている点も、4-4-2を基本とした理由と見ることもできる。

大迫不在時の解決策は見出せず

 そんななか、前半は36.2%(日本)対63.8%(コロンビア)とボールを支配されながらも、日本はほぼ狙いどおりの守備ができていたと言える。

 与えた決定機は、立ち上がり4分のセバスティアン・ビジャ(ボカ・ジュニオルス)のシュートがバーを叩いたシーンのみ。このシーンでは、縦パスを受けたファルカオがフリック気味のパスで巧みに昌子のプレスを外し、中央でフリーになっていたハメス・ロドリゲスからの展開で日本の右サイドを破られている。

 そのときの柴崎のポジショニングに問題はあったが、立ち上がり早々の時間帯だったため、逆にそのピンチがその後の日本の守備を微修正させたとも言える。少なくとも、その後のコロンビアは攻撃の糸口を見出すことができずにいた。

 もっとも、カルロス・ケイロス監督のコメントにもあったように、前半のコロンビアの狙いが日本の縦パスを封じることにあったとすれば、コロンビアにとっても狙いどおりの前半だったと見ることもできる。

 実際、攻撃のスイッチ役の柴崎が前半に見せた縦パスはわずか3本。もうひとりのボランチ山口に至っては0本だった。

 また、アジアカップではボランチの縦パスが封じられたときはセンターバックからのロングフィードで活路を見出したが、この試合では冨安が前半に鈴木へのロングフィードを1本、昌子が前後半1本ずつサイドへのロングフィードを出したのみ。

 むしろこの試合で日本が見せた打開策は、サイドからのクロスだった。

 ただし、前半に7回、後半に8回試みたクロスにしても、タイミングと精度に課題は残った。しかもコロンビアの中央の守備には高さもあっただけに、グラウンダーなど球質の部分で工夫が必要だったと言える。

 その点で言うと、分析されたときの攻撃面の打開策という森保ジャパンの課題については、解決方法は持ち越しになったと言わざるを得ない。また、鈴木と南野による2トップのコンビネーションがほとんど見られなかったことも、このシステムを採用したときの攻撃面の課題として加えておくべきだろう。

 また、大迫が欠場したときの代役という課題も、解決策を見出せずに終わった。

 唯一、この試合で鈴木がボールを収めて攻撃の起点となったのは、GK東口のロングキックを堂安に落とし、最後に南野がミドルを狙った前半10分のシーン。また、最大の決定機となった37分には、中島のクロスを鈴木が頭で合わせるも、枠をとらえることができずにビッグチャンスを逃してしまった。

 ちなみにこのシーンは、南野のプレスバックによってハメス・ロドリゲスからボールを即時回収してから作ったチャンスだっただけに、ゴールが決まっていればこの試合のベストシーンとなったことは間違いない。

コロンビアの狙い通りの試合展開に

 一方、後半は森保監督のベンチワーク、戦術オプションの欠如、そして選手の対応力という課題がまたしても露呈してしまった。

 まず、後半に入るとコロンビアのテンションが変わった。前半にサボっていた左ウイングのルイス・ムリエル(フィオレンティーナ)も下がって守備をするようになったことがその象徴だ。

「日本が疲れた時に攻撃に出た」というカルロス・ケイロス監督の言葉どおり、57分にドゥバン・サパタ(アタランタ)を投入してシステムを4-4-2に変更してからは、リズムは一気にコロンビアに傾き、ほとんど日本が守備に追われる展開となった。

 そんななかで生まれたのが、64分の決勝点だった。サパタのシュートがボックス内でブロックにかかった冨安の肘に当たったのは不運だったが、試合の流れからすれば、日本がいつ失点しても不思議はないという時間帯の出来事だった。

 しかも相手が4-4-2に並びを変えて押し込まれるなか、森保監督は香川真司(ベジュクタシュ)の投入に踏み切ろうとするも、その直前に失点。ベンチワークで後手を踏んだ格好だ。

 システムのバリエーションという点でも、新体制の初陣となったコロンビアに劣ってしまった。鈴木に代えて香川を投入するも、基本的には南野との2トップを維持し、試合の流れを大きく変えることはできず。ゴールこそ奪われなかったものの、66分、67分と立て続けにピンチを招いたことは、選手交代の反省点として挙げておく必要がある。

 それは、71分に見せた2枚代え(堂安OUT→乾貴士[アラベス]IN、山口OUT→小林祐希[ヘーレンフェーン]IN)の采配についても同様だ。逆にカルロス・ケイロス監督は、その後、4-2-3-1(82分)、4-1-4-1(87分)と、次第に逃げ切りの采配で試合を終わらせることに成功している。

 対する森保監督は、攻撃的に出るための2枚代えを行ないながら、その後は鎌田大地(シント・トロイデン)、安西幸輝(鹿島アントラーズ)と、テスト起用的な交代カードを切っている。

 結局、森保ジャパンの課題は残されたままに終わったのが、今回のコロンビア戦だった。

 たしかに半数以上が入れ替わったメンバーでコロンビアに健闘したと言えるが、今回の親善試合の狙いと、現在の森保ジャパンの課題という視点で見ると、評価できる点があまりなかったと言っていい。

 果たして、これらの問題点を残したまま臨むボリビア戦で、森保監督はどのようなアプローチをするのか。昨年の親善試合ではスタメンを大幅に入れ替えるパターンを貫いたが、今回もその流れを踏襲するのか否か。

 ボリビアの実力を考えれば日本が圧倒する可能性は十分にある。しかし、狙いと課題という部分を基準にして、引き続き内容に注視する必要がある。

(集英社 Web Sportiva 3月25日掲載)

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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