なぜ森保ジャパンは準決勝のイラン戦で変貌を遂げることができたのか?【イラン戦出場選手採点&寸評】

(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

最初のポイントになった前半約20分間の攻防

 アジアカップ準決勝のイラン対日本は、大迫の2ゴールと原口のダメ押しゴールにより、3-0で日本が完勝した。そのスコアは別としても、このイラン戦が内容的に見ても森保ジャパンにとって今大会のベストゲームになる可能性は高い。

 少なくとも、これまでの中では満足のいく試合、突っ込みどころの少ない試合だった。

 では、なぜ突然日本が変貌を遂げることができたのか? この試合を振り返るとき、最大のポイントにしなければならないのはそこだ。

 試合後の会見で、これまでと変化した点は何かと問われた森保監督は、「まず変わったこと、変わらなかったことがあると思いますが、基本的にはあまり変わっていないと思います」としたうえで、変化した点について次のようにコメントした。

「試合の入りに関して変わったことと言えば、相手がフィジカルの強さを生かして攻め込んでくるというところで、選手たちが戦う姿勢を持ってアグレッシブに入ってくれた。そこは、これまでの試合と変わったと思います」

 森保監督のコメント通り、確かに前半開始から約20分間、日本はこれまでにない積極的な姿勢を見せ、相手にプレッシャーをかけることができていた。そしてその背景にあったのが、イランと日本の力関係にあったと思われる。

 戦前は、ここまでの5試合をほぼ完璧なかたちで勝ち続けてきたイラン優位と見られていた。そのイランと比べ、まだ一度も満足のいく試合ができずに低調なパフォーマンスが続いていた日本の状況を考えれば、それが妥当な見方だった。おそらくイラン側の認識も同じだったはずで、そこにひとつの落とし穴が潜んでいた。

 果たして、格上イランと対峙した日本は、前線からアグレッシブなディフェンスを実行。今大会初めて、前からのディフェンスをしばらく継続するかたちで試合に入った。逆にイランは、それまでとは異なる入り方をした日本に面を食らったかのように、いわゆる“受け”に回ってしまった。

 低調とはいえ、過去5試合の対戦相手と日本のレベルが異なることはイランも認識していたはずで、彼らが慎重に試合を進めようとしていたことも影響しただろう。実際、序盤のイランは1トップのアズムンにロングボールを入れるだけの単調な攻撃に終始していた。

 ただし、その時間はそれほど長くは続かなかった。権田のパスミスに端を発した22分のピンチを境に試合のリズムがイランに傾き始め、以降前半は「攻めるイラン、守る日本」という構図で推移。その間、前半を終えるまで日本は一度もチャンスを作れていない。戦前に予想された両チームの力関係が、そのまま試合に表れていた時間帯である。

 そのままでは相当に厳しい展開が待っていたはずの日本だったが、しかし後半立ち上がりの時間帯、日本が自ら動いて何かを変えたのではなく、イランが自滅してくれるという望外の展開が待っていた。それが、56分の先制点のシーン、そして勝負を決めたPKによる2点目のシーンだ。

 主審に対して5人もの選手が同時に南野のシミュレーションをアピールしてプレーを止め、その間にプレーを止めなかった相手に仕留められるとは、これ以上の不覚はない。諦めずにプレーを止めなかった日本の真面目な姿勢が奏功したと言えばそうなるが、時にサッカーでは論理的に説明がつかないワンプレーによって勝敗が決することがある。たとえば、ロシアW杯の初戦のコロンビア戦の前半立ち上がり早々のワンプレーもそうだった。

 さらに、イランの2失点目は、南野のクロスをブロックすべくスライディングした8番の“残り手”に当たったVAR判定の末のPKである。自ら招いた失態とはいえ、ショッキングな失点が続いたことで、以降、イランの選手たちに反撃のエネルギーが失われたのも当然だった。

 もちろん、日本の勝因の中に論理的な部分もあった。それが、1トップに大迫が復帰したことである。森保監督は敢えて言及しなかったが、これは前半20分の入り方と同様に、この試合の日本がそれまでと変わったこととして加えておかなければいけない重要なポイントだ。

 大迫がいる試合といない試合では、森保ジャパンのパフォーマンスに大きな違いがあることは過去の試合でも証明されている。代えが利かない選手ゆえ、“大迫ありき”のサッカーになってしまうのも仕方なく、逆にそこを武器にしない理由もない。

 ただ、今大会で大迫が先発しなかった4試合の中で、唯一その解決策になり得る可能性があったウズベキスタン戦の収穫を、その後の2試合で生かせなかったことも確かなわけで、そこはAチームにこだわり続けた今大会の反省点として頭に入れておく必要があるだろう。

 個々のクオリティで言えば確かにBチームの選手が劣るかもしれないが、Aチームの中でBチームの数人をミックスさせ、大迫不在の解決策を見出そうとしなかった森保監督の采配については、結果とは別に大会後にしっかりと検証し、評価を下さなければならない。

 それも含めて、このイラン戦の勝利を継続性という視点から評価するのは難しいところがある。相手の自滅に救われた部分が大きかったこともそうだが、森保ジャパンに自力で勝利を手繰り寄せるほどの強さがあったかと言えば、残念ながらそうとは言えない。

 ベトナム戦後にかすかな希望として挙げたように、これがすべて偶然の産物とは言わないが、かといって必然性の積み重ねによって得られた勝利と言い切ることもできない。

 少なくとも、大迫が先発しながら低調に終わったトルクメニスタン戦もそうだが、格下と対峙した時の森保ジャパンはまだ好循環なサッカーができているわけではない。それは、引いて守る相手をどう崩すのかではなく、森保ジャパンの色、サッカーを出せていないという視点においての話である。

 決勝戦は、相手がカタールになるにせよUAEになるにせよ、再び日本は格上として試合に臨むことになる。普通に考えれば、日本が優勝する可能性は高いだろう。ただ、その勝敗とは別に、これまでの試合との継続性、そしてこの先の将来性という視点を持ちながら、決勝戦を見ていく必要があることに変わりはない。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一(GK)=5.5点

前半22分にパスミスからピンチを招いた。シュートを足でブロックして事なきを得たが、また同じミスを繰り返した。それ以外は無難にプレーできていただけに、悔やまれる。

【右SB】酒井宏樹(73分途中交代)=6.0点

攻撃面への関与はこれまでより少なかったが、その分、守備面で貢献。フィジカルの強い相手に対しても身体を張って球際での強さを見せた。負傷により後半途中で室屋と交代。

【右CB】冨安健洋=6.5点

ロングボールに対して見事な対応を見せた他、対峙した相手のエース、アズムンをほぼ完璧に封じた。フィードは吉田に任せていた部分もあり、効果的な縦パスはなかった。

【左CB】吉田麻也=6.5点

いくつかボールロストはあったが、この試合では無理な縦パスを引っかけてしまうようなシーンがほとんど見受けられず、クリアを中心にセフティファーストに徹していた。

【左SB】長友佑都=6.0点

前半の早い時間帯に攻撃参加からクロスを供給したが、その後は守備に徹した。空中戦も含めて球際で負けてしまうシーンが気になったが、集中を切らさず最後までよく守った。

【右ボランチ】遠藤航(60分途中交代)=6.0点

中盤のプレッシャーが緩かったこともあるが、柴崎との距離間と位置関係も良く、穴を空けるシーンはほとんどなかった。後半60分に負傷交代で退いた。決勝戦は厳しいか。

【左ボランチ】柴崎岳=6.0点

前線に大迫が入った影響もあるが、この試合では先制点のシーンの起点となった他、何度か効果的なパスを供給した。逆に、ボランチとしては球際の攻防に物足りなさが残った。

【右ウイング】堂安律(89分途中交代)=5.5点

自ら仕掛けてシュートを狙うなどゴールへの意欲の高さは感じられたが、存在感はそれほどなかった。守備面ではよく戻って相手のサイドバックの攻め上がりをケアしていた。

【トップ下】南野拓実=6.5点

まだスランプ脱出とは言えないが、大迫と組んだことで負担が減った分、少し息を吹き返した印象。泥臭くボールを追いかけた結果、先制点とPK獲得につなげることができた。

【左ウイング】原口元気=6.5点

この試合でも相変わらず献身的な守備で長友をカバーした。攻撃面での貢献は少なかったが、試合終了間際にダメ押しの3点目を決めた。そのゴールの分がプラス0.5点。

【CF】大迫勇也=7.0点

満を持して初戦以来のスタメン復帰を果たし、2ゴールを決めて存在感を見せつけた。前半はボールが収まらないシーンが多かったが、後半のプレーはパーフェクトに近かった。

【DF】塩谷司(60分途中出場)=6.0点

後半60分に負傷の遠藤に代わって途中出場。セフティな選択を心がけ、しっかりと役割をまっとうした。遠藤が負傷してしまったことで、決勝戦はスタメンの可能性が高まった。

【DF】室屋成(73分途中出場)=5.5点

酒井が負傷したことにより後半73分に途中出場。2点リードした後に投入されたこともあって無理な攻め上がりもせず、堅実な守備をした。

【MF】伊東純也(89分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。試合終了間際に堂安に代わって途中出場。