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不可解な選手交代で再び露呈した森保采配に疑義あり! 【オマーン戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:松尾/アフロスポーツ)

グループ突破を決めた後も期待感が湧かない理由

 本来はなかったはずのPKをもらい、逆にあったはずのPKを主審に見逃してもらったことで、ラッキーなかたちでオマーンに1-0で勝利した森保ジャパン。これで勝ち点を6に伸ばした日本は、晴れてラウンド16進出を決めたわけだが、率直に言って、この試合から今後への期待を感じることはできなかった。

 まずひとつは、立ち上がりから何度も作ったチャンスをものにできなかったこと。主に南野の決定力に課題を残した格好だが、百歩譲って、これはチャンスをたくさん作れたということでポジティブに捉えることもできる。

 しかし、あまりにもお粗末だった後半の内容は看過できない。森保ジャパンが始まって以来、最低の内容。トルクメニスタン戦の前半よりもひどかった。

 前半に原口のPKで先制してからの日本の攻撃は見るべき点が少なくなっていたが、その悪い流れはオマーンが修正を図った後半はより顕著に表れた。とりわけ後半に入ると前線への効果的なボール供給が影を潜め、サイドエリアでも手詰まり感たっぷり。打開策がないまま、時間だけが経過した。

 もちろん、後半も日本は追加点を奪いに行こうとしていた。実際、業を煮やした森保監督も珍しく後半早々の56分に北川を下げ、武藤を投入して前線を活性化させようと試みている。

 しかし、カウンターを必要以上に警戒する最終ラインが時間の経過とともにジリジリとラインを下げてしまった結果、前線との距離が遠くなって全体が間延びした状態で戦うことを強いられてしまったことが、攻撃が停滞してしまった要因のひとつと言えるだろう。

 それにより選手間の距離が遠くなり、良いディフェンス、良いボールの奪い方ができなくなった日本は、奪った後の守備から攻撃への切り替えも遅くなり、単発の攻撃に終始。試合スピードも低下してしまったことで、ピッチ上からは、就任以来森保監督が頻繁に口にしている“連動性”もすっかり消えてしまうこととなった。

 後半最初のシュートは80分(堂安)。90分に途中出場の伊東がドリブル突破から放ったシュートを含め、後半の日本のシュートがわずか2本に終わったことは、試合の中で何も修正できないまま時間を浪費してしまったことの証明と言えるだろう。

 ボール支配率も、前半の70.4%から、後半は56.9%にまで低下。1点をリードした日本が試合をコントロールしていたわけでは決してない。

 しかし最大の問題は、またしてもそれをただ見守るだけの森保監督のベンチワークだった。

 そもそも初戦のトルクメニスタン戦で交代枠を1枚しか使わなかったにもかかわらず、驚いたことにこのオマーン戦のスタメンは、怪我の大迫に代わって北川が、体調が良くなった遠藤がボランチで出場したという2つの変更のみ。3試合をローテーションさせて戦うことを予測させた初戦の采配ぶりを、見事に裏切る格好で試合に臨んだのである。

 さらに、この試合での選手交代策も不可解なものだった。

 まず後半早々に武藤を投入した後、その起用が奏功しなかったにもかかわらず、次の手を打たないまま戦況を見つめるのみ。結局、動いたのはわずか6分とアディショナルタイムが残された試合終了間際の時間帯だった。

 それも、右ウイングの堂安を下げて、カウンター狙いを思わせる伊東を投入。これが残り20分の交代策なら理解できるが、ピッチ上の選手たちの頭の中に“守り切り”の文字がよぎる中、なぜか指揮官は「まだ狙え」とおぼしきメッセージを送ったのだ。

 ならば、なぜもっと早い時間帯で伊東を投入しなかったのか。普通に考えれば、1-0でリードした状態の終了間際には、3枚目のカードとして守備を強化するためのカードを切ってしかるべき。オマーンが最後の力を振り絞って押し込もうとする中、時間稼ぎの選手交代でその意欲とリズムを削ぐ必要もあったはずだ。

 しかし、またしても森保監督は交代枠をすべて使い切らずに2戦目を終えたのである。

 国内親善試合を含めたここまでの7試合を見る限り、森保監督には試合の局面を打開するベンチワークが期待できないことが、ほぼ証明されつつある。おそらくそれが、日本が今回のアジアカップで優勝できるかどうかのハードルとなることは間違いなさそうだ。

 もっとも、選手交代策の前に、間延びしたサッカーをベンチからの指示によって修正することが先に打つべき手だった。しかし、それもしないまま(できないまま?)、戦況を見つめるだけの森保監督に不安を感じずにはいられない。

 おそらく次のウズベキスタン戦はスタメン総入れ替えで臨むだろう。そうなれば、2戦目までのメンバーが約1週間をトレーニングのみで過ごすことで、フレッシュな状態でラウンド16の試合に臨むことはできる。これだけの時間があれば、負傷中の大迫も復帰できるだろう。

 普通なら、そこに大きな期待と希望が持てるはずなのだが、しかしオマーン戦の後半を見た後にその気持ちにはなれない。ここまでの監督采配が、その原因だと思われる。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

前半20分のピンチの場面ではPKを回避すべく冷静に対応。その他にピンチを迎えた場面が少なかったということもあるが、初戦と比べて90分間安定したプレーを遂行した。

【右SB】酒井宏樹=5.5点

堂安との絡みで何度かチャンスを作ったが、今大会を通して初めてのクロスが終了間際の後半42分だったことはマイナスポイント。まだまだ本調子とは言えない内容に終わった。

【右CB】冨安健洋=6.0点

この試合では本職のセンターバックでプレー。慎重なポジショニングで無難にプレーし、吉田とのコンビネーションも上々だった。ビルドアップ時にもう少し積極性がほしかった。

【左CB】吉田麻也=6.5点

初戦から一転、ボールロストやイージーミスが減り、カウンター対策もできていた。攻撃面では前線に積極的にパスを供給してチャンスを作ったが、後半はより安全にプレーした。

【左SB】長友佑都=6.0点

初戦と比べるとトーンダウンした印象は否めないが、守備面ではPK疑惑のハンド以外は無難にプレー。一方、攻撃面では原口との絡みも少なく決定的な仕事ができずに終わった。

【右ボランチ】柴崎岳=5.5点

前線との呼吸が合わず、効果的な縦パスを供給できなかった。守備意識は高まったものの、攻撃を活性化できないのであれば出場する意味も半減。今後に不安を残したままとなった。

【左ボランチ】遠藤航=6.0点

前半20分にスペースを空けてカウンターを受けた以外は、的確なポジショニングで守備に貢献。攻撃の起点という点では物足りなさが残ったが、全体的には及第点の出来だった。

【右ウイング】堂安律(84分途中交代)=5.5点

前半は多くのチャンスに絡んだが、相手のマークが厳しくなった後半は打開の糸口が見つけられないまま後半84分に途中交代。前半24分のシュートは決めておきたかった。

【トップ下】南野拓実=5.5点

立ち上がりから相手DFの間を抜け出す動きで多くのチャンスに絡んだ。しかし前半の4度の決定機をいずれも逃してしまった点はマイナスポイント。守備での貢献度は高かった。

【左ウイング】原口元気=6.5点

ラッキーなPKながら、この試合唯一のゴールを決めた。初戦ほど攻撃面における打開策とはなれなかったが、ピッチ全体を走り回って90分間集中力を切らさずに守備で貢献した。

【CF】北川航也(56分途中交代)=5.0点

負傷の大迫に代わってスタメンに抜てきされたが、目立ったプレーはできずに後半56分に退いた。パスの出し手との意思疎通がなく、南野とのコンビプレーでも課題を残した。

【FW】武藤嘉紀(56分途中出場)=5.0点

停滞したチームを活性化させるべく後半56分に途中出場。森保体制下で初出場となったが、周囲との呼吸が合わず良さを出せずに終わった。主審のジャッジにも惑わされていた。

【MF】伊東純也(84分途中出場)=採点なし

試合終盤、堂安に代わって途中出場。後半90分にドリブル突破からシュートを放ったが、GKにセーブされてしまった。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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