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ウルグアイがW杯と別の顔を見せた原因は森保ジャパンにあり【ウルグアイ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:松尾/アフロスポーツ)

2連戦を自身のイメージトレーニングに使った森保采配

 9月のチリ戦が中止となったこともあり、森保ジャパンにとって年内に予定されている親善試合の中で、最も難関と見られていたウルグアイとの一戦。森保監督が考える現在のベストメンバーで臨んだ日本は、予想以上の試合内容で勝利を収めることに成功した。

 ただし、スコアは4-3。試合後にウルグアイのタバレス監督が「今日は7ゴールが入ったが、もっと多く得点が入ってもおかしくない展開だった」と語ったように、やや大味な試合となってしまったことは否めない。

 とはいえ、試合自体のインテンシティは高かった。その中で、堅守が伝統のウルグアイに大味な試合をさせることになった主な原因は、日本側が作ったものでもあった。そこは評価すべきポイントだ。

 まず、キックオフ直後から球際に強くきたウルグアイのプレッシャーに対して、日本が1対1の局面で負けず、スピードとコンビネーションでそれをかいくぐれたこと。いわゆる、ウルグアイの“脅し”に屈することなく、対等に戦えたことがウルグアイの最初の誤算になったと思われる。

 しかも、開始10分という早い時間帯で日本がウルグアイの隙を突いて先制点を挙げることができたのも、出入りの激しい試合になった引き金となった。

 おそらく、中島からの高速のくさびのパスも予想外だったであろうし、それを受けた南野があれだけ素早く反転してシュートまで持ち込める選手であったことも、想定外のことだったはずだ。

 以降、ウルグアイはプライドを傷つけられた猛獣が逆上するように、個人個人がアグレッシブに動きすぎてしまった。その結果、ロシアW杯で見せたような統率のとれた美しい守備陣形を自ら崩してしまい、結果的にフィールドの至る所に“穴”を作ってしまったように見えた。

 ロシアW杯の記者席で見たウルグアイと、この日の埼玉スタジアムで見たウルグアイが、まったく別の顔をしていたのはそのためだったと思われる。

 もっとも、「親善試合とW杯を比較するのは意味がない」とタバレス監督がコメントしたように、彼らにとっては伸び盛りの若手を育てながら、来年のコパ・アメリカ、そしてその後のW杯予選や2022年W杯を見据えたチーム作りを始めたばかり。選手は結果を求めてピッチ上で熱くなっていたが、百戦錬磨の指揮官は長期的視野に立ってこの試合を冷静に振り返っていたのが印象的だった。

 一方、この試合に出場した日本の若い選手たちにとっては、大きな自信をつかむきっかけとなったことは間違いないだろう。とりわけ、南野、中島、堂安の2列目は、この試合の活躍によって森保ジャパンのキーマンになることを約束されたと言ってもいい。今後は、このレベルのプレーを継続し、さらなるレベルアップを遂げられるかどうかが、最も注目されるポイントになる。

 最後に、この10月の2試合における森保監督の采配である。今回は、2試合を2チームそれぞれで戦ったわけだが、2試合とも選手交代をフル活用することはなかった。特にウルグアイ戦で使った交代カードは2枚のみ。途中出場を果たした青山と原口は、いずれもリードした状況で試合を終わらせるための交代だった。

 そこからは、森保監督自身がこの2試合を公式戦のイメージトレーニングに使っていたことが伺える。追いかける展開の中でも、長期的な目標を見据えて6枠をフル活用した経験豊富なタバレス監督のベンチワークとは、実に対照的だった。

 現在の日本代表は、監督力で選手の持てる力以上のチームを作るというよりも、選手の力を最大限に引き出すために、監督自身が学びながら選手と一緒にチームを作っている印象を受ける。いわゆる西野ジャパン路線の踏襲は、本当にこの先も行き詰まりを見せることはないのだろうか? また、壁にぶち当たった時にすぐに解決策を見出せるのだろうか?

 贅沢な話ではあるが、順調すぎるこれまでの3試合を見ていると、逆にそこが心配になってしまうのだ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】東口順昭(GK)=5.5点

前半と後半に1本ずつ、ヘディングシュートを好セーブ。アジリティの高さを示した。その一方で、判断能力と足元の技術は物足りなさも。DFとの連携も含めて課題が残った。

【右SB】酒井宏樹=5.5点

後半59分に堂安のゴールをアシスト。ただ、前半からイージーミスが目立ったうえ、後半68分のシーン以外に得意の攻撃参加とクロスからチャンスを演出する回数が少なかった。

【右CB】三浦弦太=5.0点

初めて吉田とコンビを組んだことを考えると全体的には及第点の出来かもしれないが、2失点目の凡ミスはマイナス1点に値する。フィードや空中戦などもレベル向上が望まれる。

【左CB】吉田麻也=5.5点

新キャプテンとして出場。特に失点に絡んだわけではないが、最終ラインのリーダーとして守備を締めることができなかった。デ・アラスカエタとの1対1の対応もまずかった。

【左SB】長友佑都=5.5点

中島とのコンビで左サイドを破るシーンが何度かあったが、回数は少なめ。攻撃よりも守備に追われた感は否めない。相手の攻撃の狙い目となったが、粘り強い守備はできていた。

【右ボランチ】遠藤航=6.0点

ウルグアイの選手に対しても1対1で圧倒されることはなく、成長が伺えた。それだけに、細かいポジショニング、パスの精度、判断力などはもっとレベルアップしてほしい。

【左ボランチ】柴崎岳(74分途中交代)=5.0点

試合勘の無さが原因と言えばそれまでだが、持ち前のゲームビジョン、パス能力などが影を潜めて1人だけ試合に入れていなかった。運動量も少なく、守備も遠藤頼みになった。

【右ウイング】堂安律=6.5点

前半は物足りなかったが、後半になって存在感がアップ。代表初得点を記録し、南野の2点目をお膳立て。相手のフィジカルにも負けず、ボールロストが少ないことは大きな魅力。

【トップ下】南野拓実=7.0点

森保体制になってから3戦連続の先発で、3戦連続ゴール。大迫と組むことでより良さが引き立つようになった。相手に囲まれる中で決めた前半10分の得点は秀逸だった。

【左ウイング】中島翔哉(87分途中交代)=6.5点

姿勢の低いドリブルで相手を翻弄した。先制点につながった南野への速いくさびのパスは一級品。後半は自らゴールを狙いにシュート3本を連発するなど、自信も溢れていた。

【CF】大迫勇也=6.5点

厳しいプレッシャーを浴びながら、しっかりとボールを収めることでチーム全体に安心感をもたらせた。シュート精度は気になったが、36分に1ゴールを記録して面目を保った。

【MF】青山敏弘(74分途中出場)=6.0点

4-2の状況で柴崎に代わって途中出場。無難にプレーし、可もなく不可もなく。ただ、直接失点に絡んだわけではないが、守備を安定させるために出場した直後にチームが失点した。

【MF】原口元気(87分途中出場)=採点なし

守備面での貢献を期待され、中島に代わって途中出場。プレー時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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