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森保ジャパンの初陣勝利を額面通りに評価できない理由 【コスタリカ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

曖昧さが払拭されないまま船出した森保ジャパン

 森保一監督の初陣となった9月11日のコスタリカ戦は、3-0で日本が勝利した。

 代表初キャップの佐々木翔が先制点に絡み、ダメ押しゴールを伊東純也が決めたこともあって、彼らの出身クラブであるヴァンフォーレ甲府サポーターにとって喜ばしい夜となったかもしれないが、日本代表にとってはその評価が微妙な試合だったと思われる。

 まずこの試合を正当に評価するうえで大前提としておかなければならない点は、両軍のメンバーがお互いほぼBチームで編成されていたことである。これにより、試合自体のクオリティは通常のA代表よりも一段下がったものになったため、選手のパフォーマンスもそれ相応のものとして受け止めなければならないだろう。

 また、多くの親善試合がそうであるように、後半はメンバーが大幅に入れ替わったため、前半45分が主な評価対象であるということ。特にコスタリカは後半頭から3人を入れ替えたうえ、67分に6人目の交代枠を使い切り、そこでシステムを3-4-1-2から4-4-2に変更したことで多くの混乱を招いたことも、結果を大きく左右した。

 もっとも、「フレッシュな日本と違い、我々は3日前に韓国と試合をしていたために疲労を考慮してメンバーを入れ替えた」とゴンサレス監督が振り返ったように、両チームが試合に臨む条件が異なっていたので仕方がない部分はある。逆に言えば、日本はそこを上手く利用して3-0のスコアに持ち込んだとも言えるだろう。

 いずれにしても、この試合で活躍した中島、遠藤、堂安、あるいは南野のパフォーマンスについては、その前提を頭に入れたうえでの評価でなくてはならない。彼らが見せたパフォーマンスが、そのままベストメンバーのA代表同士の試合でも通用するかは、また別の話になるからだ。

 これらを踏まえてコスタリカ戦の日本を評価すると、上々の出来ではあったが、前半の試合内容からすれば物足りなさも大いに感じる。相手の問題で守備面の課題は出難い試合だったが、後半に躍動したように見えた攻撃面に関しても、前半は39分の南野のシュートシーンにつながったコンビネーションくらいしか見せ場がなかったというのが、実際のところだった。

 そしてもうひとつ、試合の評価を微妙にした要因は森保監督の采配にあった。

 森保監督が選んだシステムは、広島時代や直近のアジア大会で採用した3-4-2-1ではなく、オーソドックスな4-4-2だった。この理由について森保監督は、「いろいろな形に対応してほしいということ。柔軟 な考え方、臨機応変にやってほしいということも含めて今日の形にしました」と語ったうえで、「私がロシアW杯にコーチの1人として参加させていただいて、西野監督から多くのことを学ばせていただいて、それらをその先につなげるという意味でも私自身がトライした」とコメントしている。

 要するに、自分の持つ術だけでチーム作りを行うのではなく、自分自身も柔軟に対応して新しいことにトライしていくという意思表明にも受け取れる。

 おそらく森保監督は、今後も3-4-2-1、4-4-2、そして4-2-3-1を使い分けながら戦うことをイメージしているのだろう。しかし、ひとつのシステムをしっかり確立したうえで、それをベースにプランB、プランCを補足していかなければ、練習時間の少ない代表チームでは高いレベルでチーム戦術を確立するのは困難だと思われる。

 実際、このコスタリカ戦の4-4-2も攻守両面において各選手がアドリブでプレーする場面が目立っていた。まともな相手なら必ずその隙を突いてきただろう。コンセプトが曖昧だと、どうしてもチーム戦術も曖昧になる。その曖昧さが最終的に命取りとなることは、ロシアW杯で思い知らされたばかりである。

 果たして、森保監督はその辺を曖昧にしたまま当面の目標であるアジアカップに臨むつもりなのか。明確な基準がないままこの試合の評価を与えることは、極めて危険だと思われる。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】東口順昭(GK)=6.0点

前半に2つのセーブを見せるなど、無難に仕事をこなした。その一方で、フィードの判断と正確性は課題として残された。

【右SB】室屋成(82分途中交代)=5.5点

前半に何度か守備面の甘さが出たが、攻撃面では後半64分にチャンスの起点となった。堂安との縦関係、深い位置までの攻め上がり、クロスは課題。代表2キャップ目。

【右CB】三浦弦太=5.5点

全体的には無難にプレー。最終ラインでボールを受けた時は安全なパスを選択することが多く、このような試合ではもっと自ら起点となるプレーが求められる。

【左CB】槙野智章=6.0点

DFのリーダーとしてラインを統率。4バックだったこともあり、得意の攻撃参加は自重。ただ、フィードで簡単に相手にボールを渡す場面もあるなど、物足りなさがあった。

【左SB】佐々木翔(78分途中交代)=5.5点

デビュー戦で先制点のオウンゴールにつながるヘディングを見せた。ただ、攻守両面で代表レベルにはほど遠い印象。特に前半20分の好機で即バックパスをしたのはいただけない。

【右ボランチ】青山敏弘(88分途中交代)=5.0点

初めてキャプテンとしてプレーするも空回りの印象。判断力も鈍く、得意のパス供給の部分でもミスが目立った。危険な場所で相手に囲まれ、ボールロストする場面も2度あった。

【左ボランチ】遠藤航=6.5点

得意のポジションでプレーしたこともあり、自信に満ち溢れ、過去の代表戦の中では最も良いパフォーマンスを見せた。高いレベルの試合でも同じようにできるかが今後の注目。

【右MF】堂安律(85分途中交代)=6.5点

後半2度の好機を逃して決定力に課題。それ以外のプレーでは周りとの関係性を意識したプレーも目立ち、ベストメンバーの中でのプレーにも可能性を見出せた。代表デビュー戦。

【左MF】中島翔哉(75分途中交代)=7.0点

マッチアップする相手選手との個人能力の差を見せつけ、次々と局面を打開。他を圧倒するパフォーマンスだった。強い相手と対戦した時にどこまでできるか、期待がかかる。

【FW】南野拓実=6.5点

2度の決定機でミスしたが、66分のゴールでそれを挽回。長くヨーロッパでプレーしているだけあって球際の強さもあり、前線で躍動感を見せた。ただ、プレーの雑さは否めない。

【FW】小林悠(68分途中交代)=6.0点

クロスボールが少なかったため、良さが出難い試合となった。ただ、前半39分に見せた胸で落とした場面など、らしいプレーも随所に見せた。しかし、シュート1本は寂しい。

【FW】浅野拓磨(68分途中出場)=5.5点

必死さは伝わってくるが、スピードを生かして裏に抜け出そうというプレーも効果的ではなかった。ほとんど見せ場を作ることができず、成長の跡を見せられなかった。

【MF】天野純(75分途中出場)=5.5点

中島に代わって途中出場すると、トップ下に入ってプレーし、システムが4-2-3-1に変化。無難にプレーするも、存在感を見せるまでには至らなかった。代表初キャップ。

【DF】車屋紳太郎(78分途中出場)=5.5点

佐々木に代わって途中出場。そのまま左サイドバックに入って、無難にプレー。得意の攻撃参加をする機会は少なかった。

【MF】守田英正(82分途中出場)=5.5点

室屋に代わって途中出場。代表デビューを飾ったが、本来のボランチのポジションではなく、そのまま右サイドバックでプレー。可もなく不可もなく。

【MF】伊東純也(85分途中出場)=6.0点

堂安に代わって途中出場、そのまま右ウイングに入った。残り時間わずかの中で、1ゴールをマーク。結果を残すことに成功した。

【MF】三竿健斗(88分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。青山に代わって途中出場、そのままボランチに入った。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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