ロシアW杯で日本が対戦するセネガル代表攻略のカギは「脱ハリル・スタイル」にあり

(写真:ロイター/アフロ)

 日本代表が来年のロシアW杯第2戦で対戦するセネガルは、多くの日本人にとってあまり馴染みのない国かもしれない。しかし、少し前からサッカーを見ている人なら、すぐに思い出されるのは日本と韓国で開催された2002年W杯ではないだろうか。

 あの大会で初めてW杯出場を果たしたセネガルは、開幕戦で優勝候補フランスと対戦。誰もがフランスの順当勝ちを予想するなか、フランス人の故ブルーノ・メツ監督率いるセネガルは、当時はまだ珍しかった4-1-4-1システムでフランスの攻撃を封じると、前半にマークした虎の子の1点を守り切って「世紀の大番狂わせ」を演じてみせた。

 MFジヌディーヌ・ジダンこそ故障欠場していたものの、その試合のフランスにはFWティエリ・アンリ、FWダビド・トレゼゲ、MFパトリック・ヴィエラ、DFリリアン・テュラム、DFマルセル・デサイーなどそうそうたるメンバーがスタメンに名を連ねていた。にもかかわらず、1998年W杯、ユーロ2000と立て続けにビッグタイトルを制してこの世の春を謳歌していたかつての宗主国に対し、W杯の新参者がその黄金時代にピリオドを打つキッカケを作ったのである。世界に与えたインパクトがいかほどのものだったかは、説明するまでもない。

 結局、歯車を狂わされたフランスは、その敗戦のショックから立ち直れずに1勝もできないままグループリーグ敗退。一方、大金星を挙げたセネガルは一気に波に乗り、初出場にしてベスト8進出という快挙を成し遂げている。

 あれから15年――。長い眠りからようやく目を覚ました「ライオン(セネガルのシンボル)」は、ふたたび牙をむいてロシアの大舞台に登場する。母国を通算2度目のW杯に導いたのは、15年前のフランス戦でアンカーを務めていたアリュー・シセ監督、41歳。現役時代はフランスの名門パリ・サンジェルマンをはじめ、プレミアリーグのバーミンガム・シティやポーツマスでもプレーしたセネガルサッカー界の英雄のひとりだ。

 そのシセ監督は、セネガルがベスト8に進出した2012年ロンドン五輪でアシスタントコーチを務めた人物でもある。当時のチームには、現在A代表の主軸となっているメンバーがプレーしており、五輪翌年からA代表の監督に昇格したシセ監督も、彼らとともに指導者として成長中だ。その点において、セネガルにはアフリカ諸国の代表チームらしからぬ”一体感”がある。

 全般的にアフリカ各国の代表チームは、組織力よりも個人能力に頼ったサッカーをするケースが多い。しかしながら、西アフリカに位置するセネガルは、エジプト、チュニジア、モロッコといった今大会に出場する北アフリカの代表チームに似て、組織力を軽視しない傾向がある。件(くだん)の2002年大会開幕戦でセネガルが大金星を挙げることができた理由のひとつも、まさに組織的なディフェンスにあった。

 その試合のキーマンだったシセ監督が率いるだけに、今回のチームも同じ系統のサッカーを実践する。選手たちの戦術理解度も思いのほか高く、日本としては、2010年W杯初戦で戦ったカメルーンをイメージすると痛い目に遭いそうだ。

 しかも現在のセネガルには、2002年大会を上回るタレントがひしめいている。日本は過去のW杯でチュニジア、カメルーン、コートジボワールといったアフリカ勢と対戦しているが、タレント性で言えば、今回のセネガルは2014年大会初戦で戦ったコートジボワールに近いレベルにある。ほとんどの選手がヨーロッパの主要リーグでプレーしており、伸び盛りの若手も多い。最新のFIFAランキングでも23位と、アフリカ勢の中ではダントツのトップに位置しているのもうなずける。

 チームきってのスター選手は、現在リバプールでプレーするFWサディオ・マネだ。リバプールの主軸として活躍するウインガーは、代表では基本システムの4-3-3の主に右ウイングを担当。爆発的なスピードとテクニックに加え、そのしなやかな身のこなしからチャンスに絡む。マネのプレーはプレミアリーグの一流ディフェンダーたちを大いに悩ませているが、だからと言って代表チームで王様的プレーに走ることもない。

 どちらかと言えば、フィニッシャーは1トップを務めるFWディアフラ・サコ(ウェストハム・ユナイテッド)やFWムサ・ソウ(アル・アハリ)に任せ、自らはお膳立て役を買って出ているような印象もある。幸い、日本にはかつてマネのチームメイトだった吉田麻也(サウサンプトン)がいるので、その情報を頼りに対策を練りたいところだ。

 とはいえ、その他にもモナコのFWケイタ・バルデ・ディアオ(22歳)、トリノのFWエムベイェ・ニアン(22歳)、レンヌのFWイスマイラ・サール(19歳)など、伸び盛りの若手アタッカーも控えており、層は厚い。マネ以外の前線ふたりは固定されていないのが現状だ。

 一方、このチームの屋台骨を支えているのが、中盤の底でプレーするMFシェイフ・クヤテ(ウェストハム・ユナイテッド)、MFイドリッサ・ゲイェ(エバートン)、そして最終ラインを統率するセンターバックのDFカリドゥ・クリバリ(ナポリ)の3人である。彼らの存在なくして、シセ監督が標榜する組織サッカーは成立しないと言っても過言ではないほどの重要人物たちだ。

 この3人に共通しているのは、強靭なフィジカルとボール奪取能力に加え、ヨーロッパのトップリーグで戦術理解能力を磨いているという点だ。とりわけチームキャプテンを務めるクヤテはセンターバックでもプレーできるユーティリティー性を兼ね備え、ダイナミックなプレーで攻守に貢献。また、インサイドハーフでプレーするゲイェも、4-2-3-1を採用するときにはクヤテとダブルボランチを形成する。最終ラインの前で神出鬼没な動きをして、相手の嫌なところで顔を出してくるやっかいなタイプのプレーヤーだ。

 彼らに対して、ハリルホジッチ監督が提唱する”デュエル”で勝負すれば、勝ち目はないどころか相手の思うツボにも陥りかねない。彼らを揺さぶり、いかに中盤にスペースを作ってそこを突けるかが、打倒セネガルの攻略ポイントになるだろう。

 いずれにしても、グループHで対戦する3ヵ国のなかでは、日本がもっとも苦手とするタイプのチームがセネガルであることは間違いなさそうだ。縦に速く、正面から直線的に攻めるのではなく、より多くの曲線を描きながら攻略できるか。ある意味、ハリルホジッチのサッカーとはかけ離れた戦い方かもしれないが、これまでの日本が歩んできた道を考えれば、それができない理由はない。

「脱ハリル・スタイル」。それこそが、セネガル戦の特効薬と言えるかもしれない。

(集英社 Web Sportiva 2017年12月7日掲載)