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【板倉滉】中村憲剛のポジション取りを意識してプレーしたアルゼンチン 「それは初めて見る景色だった」

中田徹サッカーライター
ピッチから階段を登るとVVVの更衣室がある。本田圭佑の姿もそこにある 【中田徹】

■オランダリーグ得点王を完封

 国際マッチウイーク明けの初戦、フローニンゲンは1対0でVVVを下した。主将のマトゥシワが20分に退場したことから、センターバックの板倉滉が前戦に引き続きキャプテンマークを巻いて奮闘。板倉は、オランダリーグ得点王争いで首位を走るギアコマキスをしっかり完封した上、87分にはエル・ハンクリの決勝ゴールにつながるインターセプトをみせた。

「前回のRKC戦では自分のミスから負けてしまった。もちろん、いつも集中して試合に入ってますが、今日は『ここから今シーズンのラスト7試合、しっかりやるぞ』と引き締めて試合に入りました。

 退場者が出たときは、ディフェンダーとして自分は『ゼロ・ゼロで終わればいい』と思ってましたが、その中でも『ワンチャンス、行けたらな』という気持ちもありました。(エル・ハンクリが)スーパーシュートを決めてくれてよかったです。

 キャプテンマークをもらうと気が引き締まる。ともかくチームを勝たせたかった。今日は結果が全てじゃないですか」

 前半のフローニンゲンはギアコマキスに何もさせなかったが、後半になると彼の消える動きや走り込みから際どいシーンがいくつかあった。しかし、板倉を中心とするフローニンゲンの最終ラインは集中を切らすことなく、ギアコマキスにゴールを許さなかった。

「守っていて『ああ、これが得点王か』という感じがありました。体が強いし、動きが機敏だし、ヘディングも強い。DFを背負っても強いから、ちょっと距離をとってから前に入ってインターセプトを狙いました。いい選手でした」

■ボランチとして初めて見る景色が北九州にあった

 板倉は、RKC戦の悔しさをVVV戦で晴らした。国際マッチウイーク(板倉は日本五輪代表の一員としてプレー)では、アルゼンチン相手に失点に絡んだ東京での悔しさを、北九州での再戦で2ゴールを決めて晴らした。

「アルゼンチンとの1試合目、結構、悔しかった。(失点シーンは)今シーズン、あんな感じでやられたの、初めて。(普段、オランダリーグを見ることのない)日本の人にとっては、あれが自分の評価になるわけです。『俺はもっとできる』『俺はこんなんじゃない』『ああ、くっそー。悔しい』というモヤモヤが残りました」

 2ゴールを決めたことについては「俺もびっくり。みんなもびっくりですよ」と板倉。

「北九州はちょっと遠いけれど、家族も見に来てたんです。オランダリーグも見たいのに、(テレビ中継が少なく)日本で見るのが難しいんですよね。それでも俺の親は起きてる時間帯だったらリアルタイムで、文章だけでフローニンゲンの試合をチェックしているんです。久々に家族の前でプレーできて、(自分の活躍を)見せることができてよかったです」

 日本五輪代表には、板倉にとってフロンターレ時代から気心の知れた仲間が何人かいる。今回、ボランチを組んだ田中碧はその一人。板倉は「試合前日から守りのハメ方、攻めている時の立ち位置に関して話し合っていたので、やりやすかった」と振り返る。

「碧はボールを中盤で持って前に向けるので、俺はあまり邪魔にならないようしながら、相手の嫌がるところに前に出てポジションをとりました。それこそ、中村憲剛さんをイメージしながらやってました。

 フロンターレの紅白戦では、自分が憲剛さんに対峙してマークしてました。そのときの憲剛さんのポジショニングって、いやらしいんですよね。そういうところに立ってみようと意識しながらプレーしてたら、『ああ、こういうことをすると相手は嫌がるんだな』と気付きました。

 それは、ボランチとして初めて見る景色でした。だから、試合をしていてすごく面白かったです。しかも一緒にやっているのが碧。(昔からの仲間の三笘)薫も途中から出てきましたし」

 試合後、中村憲剛氏はツイッターに「話したいこと山ほどありますがひとつだけ。コウとアオのダブルボランチに」と書き、“感涙”を意味する絵文字を加えた。板倉本人にも中村憲剛氏からメッセージが来た。

「なにが一番良かったかというと、憲剛さんから終わった後、『いい立ち位置でした』というラインが来たんです。それが一番うれしかった。良かった。3対0で勝って、俺は本当にホッとした」

 尊敬する先輩からの褒め言葉。国を背負って戦うプレッシャーに打ち克ったこと。その異なる性質の喜びを一気に表わしてから、一拍置いて板倉は続けた。

「俺、『金メダル』って言い続けてきたから、あの1試合で終わっていたら……。1試合目、本当に悔しかったんですよ。『こんなんじゃない』と思ってました。でも、みんないろいろ言ってくるしね。しかし、選手はプレーで見せないといけないから。しかも、いつでもいいパフォーマンスをし続けないといけない。がんばります」

 アルゼンチンとの2戦目に引き続き、好パフォーマンスを披露した板倉は、全国紙『デ・テレフラーフ』の週間ベストイレブンに選出された。

全国紙『デ・テレフラーフ』選出のベストイレブン 【画像は紙面キャプチャー】
全国紙『デ・テレフラーフ』選出のベストイレブン 【画像は紙面キャプチャー】

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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