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12月大車輪の働きを見せた菅原由勢 「サッカーは1ヶ月ですべてを変えることができるスポーツ」

中田徹サッカーライター
年末見せた菅原のパフォーマンスは特筆すべきものだった(写真:ロイター/アフロ)

■12月の菅原は大車輪の働きだった

 12月27日のユトレヒト戦を終えた直後、AZの右サイドバックを務める菅原由勢はこう言った。

「自分が行けると思っても、体が動かなかった。疲れましたね」

 それもそのはず、12月に入ってからの菅原は公式戦7試合(オランダリーグ5試合、ヨーロッパリーグ2試合)に出場。うちフル出場が6試合、残る1試合は87分までプレーしたのだ。さすがに疲労の色は隠せない。この1ヶ月を振り返り、彼は「キツかったですね」と言ってから続けた。

「キツかったですけれど、こうやって試合がたくさんできているのはありがたいです。今シーズンの始まりの自分はずっとベンチに座っていた立場でしたので、だからこそ過密日程の中でもチームに勝ちをもたらすプレーが必要だと思ってました」

 残念ながら、ユトレヒト戦はアディショナルタイムに痛恨の失点を喫し、AZは2対2の引き分けに終わってしまったが、それまでのAZは3連勝と好調で、菅原も1ゴール1アシストという結果を残してチームに貢献していた。

 この濃かった12月を振り返り、菅原は、

「ヨーロッパリーグ(12月3日の対ナポリ戦。1対1)から始まって、こんなにタイトなスケジュールの中で試合をさせてもらって非常に楽しかった。こういう状況の中(コロナによる無観客試合)ですら試合ができることは嬉しいです」

 と語った。

 今季開幕から11月までの3ヶ月間、リーグ戦を8試合消化したAZに於いて、菅原は4試合プレーしたが、出場時間はわずか152分間に留まっていた。しかし、ライバルのスベンソン(ノルウェー代表)が負傷したこともあって、12月の菅原はフル回転し出場時間が447分間と飛躍的に伸びた。

「チャンスが偶然巡ってきた気はしますけれど、ここまで出場する機会をもらえたということはプラスにとらえていきたいです。課題も良かったところもいろいろありますけれど、まずは試合に出ることが大事ですので」

■「サッカーは1ヶ月ですべてが変わるスポーツ」

 出場機会を逸していた10月、菅原は非常に悔しそうな顔をしていた。彼は覚悟を決めたようにこう宣言した。

「名古屋グランパスでの最後の1年間、僕はJ1での出場機会を失ってました。それでどうしたかというと、僕はU20ワールドカップ(2019年6月、ポーランドで開催)にフォーカスしてすべてをぶつけ、その結果として自分はAZへの移籍を勝ち取りました。サッカーは1ヶ月ですべてが変わるスポーツです。これからの3ヶ月、自分に何が起こるかわかりませんよ。見ていてください」

 有言実行を果たした菅原に、2020年を振り返ってもらった。

「1年間難しかった。今年の始まりからそう。夏以降、なかなか出場機会を得ることができなかった中で、こうやって出番が来るまで自分を信じて、目標を見失わずにモチベーションを保ちながら積み重ねてきました。プロである以上、日常から模範的な振る舞いをしないといけませんし、上を目指さないといけないと思っている。そういった地道なことをおろそかにせずにやってきたことが今のパフォーマンスにつながっていると思います。まだまだ改善点しかありませんが、それをポジティブに捉えてます。改善点があるということは、成長できるということです。そういうところでは強くなった1年でした。試合に出られない中でも自分を見失わずに淡々とやり続けられたことは収穫だと思います。非常に難しかったですが、それ以上に意味のあった年でした」

■菅原が心の底から思うこと

 1月、オランダリーグはアヤックス、フェイエノールト、PSV、AZの強豪4チームによる直接対決が多く組まれた『スーパー・ジャヌアリー(末尾の資料参照)』を迎える。菅原には2021年の幸先良いスタートを切ってもらい、さらには『スベンソン超え』に期待したいところだ。

「監督が使わざるを得ない選手にならないといけないと、本当に心から思う。1月もまた、1ヶ月間で7試合あります。しかも相手はアヤックス、PSV、フェイエノールトといった強豪ばかり。そういう相手に自分がどういうプレーができるかが一番大事だと思う。ビッグクラブが相手になればなるほど、僕のモチベーションは上がりますので、楽しみです」

 菅原の2020年最後を締めくくる言葉は「自分が代えられたら代えられたでまた議論の余地がある。また喧嘩しますよ」というものだった。「また喧嘩しますよ」の一言には、不遇の時を過ごしていた10月、AZの監督・コーチ相手に議論を挑んだことの再現もあり得ることを示唆していた。

 ロジカル且つファイティングスピリッツ旺盛に、2021年も菅原は闘い続ける。

【資料】

AZの1月日程

  • 1月9日  オランダリーグ PECズウォーレ対AZ
  • 1月13日 オランダリーグ PSV対AZ
  • 1月16日 オランダリーグ AZ対ADOデン・ハーグ
  • 1月20日 KNVBカップ AZ対アヤックス
  • 1月24日 オランダリーグ フェイエノールト対AZ
  • 1月27日 オランダリーグ AZ対ユトレヒト
  • 1月31日 オランダリーグ AZ対アヤックス

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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