2017年、ゲーム実況が立派な職業になる日 - ここ数年のゲーム実況あれこれ

明けましておめでとうございます。約3年ぶりにYahoo!ニュース個人への寄稿ですね。初めて寄稿したのが20歳ぐらいで当時はヤフトピ民の皆様に罵倒されるのが怖くて仕方ありませんでした。今は少し大人になり、メンタルも強化されたので久しぶりに記事を書いてみます。

ブログを一度でも書いていたことがある方ならわかるかもしれませんが、なぜか毎年お正月は「今年はブログを書くぞ!」と絶対に無理な目標を掲げ、黙々とタイピングする正月を過ごしてしまう。そんな正月を今年も迎えて何を書くかですが、今回はタイトルの通り今年を起点にゲーム実況を職業として生活する人がかなり多く増えると思われる件について述べていきます。

ゲーム実況をご存知ない方はこちらのリンクなどを参照した上で読み進めると良い。

ゲーム実況とは

http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%AE%9F%E6%B3%81

実況プレイ動画とは

http://dic.nicovideo.jp/a/%E5%AE%9F%E6%B3%81%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E5%8B%95%E7%94%BB

ここでは”ゲーム実況”を「喋りながらゲームをプレイすること」で、”実況動画"をその様子を動画として撮影したものとし、ゲーム実況をする人のことを"ゲーム実況者"と呼ぶ。

このゲーム実況を職業として生計を立てている人は3年前まで数えるほどしか居なかったのだが、今や2ケタ人では収まらずドンドンと増えている。そして、2016年の様子を見るに2017年にはより一層ゲーム実況が職業として定着していくように思える。

さて、まずはゲーム実況で実況者がどのように収益を上げているのか。収益源は大きく分けて以下の3つになる。

・動画サイトの広告収益:動画再生時に流れる広告などの収益が動画サイトから分配される

・タイアップ動画:ゲーム運営企業から依頼され、ゲームのプロモーション動画を制作し対価を得る

・有料コミュニティ:有料会員限定向けのコンテンツを作成し、会員から料金を徴集する

動画サイトの広告収益、YouTubeでは自身の動画が再生されている際に表示される広告の収益の一部が分配される。そのため、再生数や再生時間が多ければ多いほど収益が得られるというわかりやすい仕組み。ニコニコ動画ではクリエイター奨励プログラムというものに登録し、審査が通るとニコニコがスコアを計算して報酬が支払われる。

1再生あたりの単価としては、YouTubeでは0.1円と一般的に言われているが僕が見ている限りゲーム実況では0.15円前後が多い。ニコニコ動画では0.2円から0.5円程度でゲームタイトルや実況者によってかなり差がある印象だが、総じて単価は高い。ただ、単価が高くとも再生回数を考えるとYouTubeの方がトータルのボリュームは勝っているので支払総額ではYouTubeの方が多い印象だ。

この動画サイトの広告収益のみで生計が成り立つレベルの実況者は2015年から飛躍的に増え始めた。というのも、2014年末からポケモン オメガルビー・アルファサファイア、スマブラ for Wii U、2015年はSplatoon(スプラトゥーン)とマリオメーカー、COD BO3が発売されたり、スマホゲームでは2013年にリリースされたモンストが国民的タイトルにまで上り詰め、白猫プロジェクトがパズドラ、モンストに続いたりと実況で人気を得られるゲームタイトルが多かった。また、マインクラフトが日本のちびっ子達に認知されたことも大きかった。

多くのゲーム実況視聴者は1つのゲームタイトルにつき、1人から3人ほどの実況者をチェックすれば満足なので、人気タイトルが新しく出てこないと新たな人気実況者が生まれるのは難しい。人気実況者も時間に限りがあるし、自身に合う合わないゲームカテゴリがあるので全てのタイトルをプレイするわけではない。その点で、2015年は実況と相性の良いヒットタイトルによって新しい人気実況者が生まれやすい環境にあったと言える。

また、2014年末に任天堂がこれまで黙認していたゲーム実況を正式な手続きをすることによって、正当に収益化できるようNintendo Creators Programを発表したことで、任天堂のゲームをアップできるようになったことも後押しした(プログラムをしっかり使っている人が少ないのがやや問題ではあるが)。

ゲーム実況で生計を成り立たせるために年収360万円(20代の大まかな平均年収とする)が必要だとすると、上記で上げた人気タイトルごとの実況者内でTOP5に入れば間違いなく充分な収入は得られる。TOP10でもタイトルによっては問題なく生活できるだろう。TOP20, 30となると、月々10万円から15万円の間という感覚だろうか。

以上のようにして、2015年には多くの専業ゲーム実況者が生まれた。専業になると、これまで学校が終わってから寝るまでの間、仕事のない土日などにしか動画撮影が出来なかった実況者がフルタイムで専念できるようになるので、動画の投稿頻度も上がるしクオリティも上がり、さらに視聴者を獲得できるようになるという好循環も生まれていた。

一方、いわばタレント業に近いこの職業で月々10万円から15万円という、今から専業になればすぐに月々30万稼げるかもしれないが、稼げなかったら怖いという微妙なラインに立っていた人たちも多かった。

そこで2016年にタイアップ動画がYouTube上で多く出回り始めた。タイアップ動画は冒頭で述べたように企業から依頼を受けてプロモーション動画を制作するものだ。大抵はゲーム企業からプロダクションや代理店経由で実況者に発注される。

YouTube上でのタイアップ動画は2013年ごろから徐々に浸透して来ていたのだが、ゲームの事例は極めて少なかった。2014年の頃はいざ実施しようとすると、ゲーム内のキャラクターボイスの声優事務所の許諾を得ないと動画配信が出来なかったり、業界全体としてやってみたいけどわからない、という点があり実施に至らないケースが多かった。

それでも2015年には徐々に事例が出来始めていた。大手を含め新しい取り組みに前向きな企業が徐々にゲーム実況をプロモーション手段のひとつとして利用し始めたのだ。しかし、2015年前半まではYouTubeのチャンネル登録者が数十万といった規模の実況者への依頼が中心で、数万登録規模の実況者にはあまり声がかからない状況だった。今思うと、良くも悪くも当時の登録者1万から5万人規模の実況者は企業からするとまだ"素人"という見られ方をしていて、仕事を頼むという雰囲気にはなれなかったのだと思う。

その状況が変わってきたのだが2015年後半、2016年前半だった。これまでゲーム実況でプロモーションを実施していなかった企業が「試しに」という予算感で発注するケースが増えてきた。そして、この「試しに」という予算感が専業になるかならないかのラインに居た実況者達と相性がよかった。

登録者が50万人居る実況者では予算が足りないが、5万人規模の実況者であればピッタリ。というケースが多かったのだ。1人で300万円かかる大規模なチャンネルを持っている実況者も居れば、10万円、20万円でちょうどいい実況者も居る。そして、その実況者達の多くが月々15万円前後の広告収入を得ているがあと10万円、20万円あれば専業になれたり、バイトをしながらの大学生はバイトを辞めて実況に時間を充てられるという状況だった。

このようにして、企業と実況者両方のニーズが満たされる形になったことでタイアップの実施件数が増え、2016年後半に向けて市場全体として成長しゲーム実況を職業として生活できる実況者が増えていった。

2016年は実況動画で人気の取れる新規ゲームタイトルが2015年に比べて少なかったのだが、それでもタイアップ市場の伸びにより専業実況者は多く増えた。2017年にはPS VRのタイトルも続々発売されるだろうし、Nintendo Switchも3月に発売される。スマホゲーム市場では任天堂のどうぶつ森などがリリース予定だが、モンストのようなマス向けな大ヒットではなく、よりコアなファンを囲うような中ヒットタイトルが増えてくると個人的には思う。

YouTube上でもApp Storeでもそうだが、マス向けに大ヒットを飛ばすには既存の人気実況者やブランドが立ちはだかるため新規に参入することは年々困難になってきている。そこでコアなファンを囲うタイトルが今後増えてくると、そのタイトルごとに人気を得た者が専業実況者が動画サイトの広告収入を月々15万円前後得られ、タイアップ動画を月1,2本実施して生計を成り立たせるというケースが今年は増えていくだろう。

ゲーム実況の視聴者はYouTubeでは若年層が中心なので、まだまだ増加し続けていくし、任天堂のスマホゲーム参入により30代、40代のスマホゲームをこれまで遊んで来なかった層が実況動画を視聴する層として新たに加わり始めている。視聴者層が広がり、中ヒットタイトルが増えて新規参入者が現れ、タイアップ動画も増えていく。この流れによって、3,4年前までは一部のネットユーザーの趣味でしかなかったゲーム実況が立派な職業として今年は確立されていくだろう。

おしまい。

あとがき

かなり長々と書いてしまったので、いったん本文は上記にて終わりにして、補足と伝えておきたいことをあとがきとして書いておく。

僕自身、ゲーム実況者のプロダクションを運営しているので周りから「ゲームしてるだけで生活できるって最高だよな」と言われることが多々ある。たしかに、ゲームが好きな人にとっては最高の職業である。

ただ、楽な職業というわけではないという点は説明させて頂きたい。専業であれば1日に1本から3本程度の動画をアップしている実況者が多いのだが、その動画1本の長さが20分でも作業時間は20分ではない。(RPGやスマホゲームの場合はそのまま20分のこともあるが省略)

まず、ゲームが上手いことを売りにしている実況者はプレイスキルを磨くために相当な時間を費やして練習や研究をしている。これはサッカー選手や野球選手と何ら変わらず、毎日練習している実況者がほとんどだろう。最近ではe-sportsのプロゲーマーも国内で出てきているが、彼らの生活は本当にアスリートと同じで、チームに監督が居て食事や睡眠、練習時間などが決められているケースもある。また、プレイスキルが売りならば、動画として公開できるプレイを撮らなければいけないのでステージをクリアするまで数時間かかることもあるし、試合で活躍できたものが撮れずに数時間経過してしまうこともある。

撮影が終わったら、次に編集の作業が入る。マインクラフトのような自由なゲームでは、何をしても良いので自身で構成を考えて編集する必要がある。編集に時間が圧倒的にかかるマインクラフトでは、プレイに1時間から2時間、編集に2時間から4時間なんてことは多々あり、1日フルタイムで作業して1本という人気実況者も多い。他のゲームでも動画内でカットすべき部分を見つけて切り取ったりと、編集作業をしているとプレイ時間の2倍から3倍程度時間がかかってしまうことが多々ある。

編集が終わったら最後にエンコードをして、動画サイトにアップロードする。所々単純化したがこれらの作業を動画1本ごとにしているから、かなりの時間になる。こうしてみると、ゲーム好きには楽しい職業ではあるが、楽な職業ではないとわかる。しかも、いつ人気が落ちるかわからない不安定さもあるし、基本的には自宅で一人作業する時間の長い職業だから精神的にも強くなくてはやっていけない。僕の知ってる実況者の中には朝8時に起きてから午前中に撮影をし、午後は19時頃までずっと編集して1日に3本動画をアップするという生活を繰り返してる人も居る。そのぐらい、専業になっている人はストイックなのだ。

とは言え、やはりゲーム好きにとっては夢のような職業が生まれたのは確かで、自分が学生の時に今の状況だったら挑戦したかったと思うのは、僕だけじゃないはず。

今年もよろしくお願いします。