ネットの普及によるヤンキーのカジュアル化 -- バイト炎上事件における考察(1)

バイト炎上事件とヤンキー

ここ1,2カ月の間、ネットでニュースをチェックしていると毎日のように「〇〇のアルバイト店員が冷蔵庫に入って炎上。〇〇が謝罪」といった記事が目に飛び込んでくる。「またかよおい…」と思ってる方も多いだろうし、僕もその1人だ。全く懲りない奴らだ。

この一連の炎上事件については「低単価のサービスを僕達が求めた結果である」とか、「Twitterをグループチャットのように捉えている」、「炎上メカニズムができあがった結果である」、「昔からそういうのはあったけど、それがネットに出やすくなった」等の考察がなされてきた*。

これらの考察はどれも的を得ていると思うし、実際にそのような背景で炎上した子も居るだろう。しかしながら、僕としてはそもそも何でこういう愚かな行為をして、それを全世界に向けて発信してしまうのかを考えると、それはどうもヤンキー精神に起因するのではないかと思えるのだ。

ここで言うヤンキー精神とは「目立ちたい」、「一般人(パンピー)のやつと違ったことがしたい/オレは他のやつと違うという思い込み」、「ダチ(仲間)LOVE」、「世間が悪いと認識してることをやるのカッコイイ」といった"ガチ"で熱い気持ちのことを指している。

昔からヤンキーは世間とちょっとズレていて、それがカッコイイと思ってるし、それで目立つのが気持ちいいと感じる人達だ。だから、ちょっとした悪さをするし、それを公言することがステータスである。

だが、ここでいきなり冷蔵庫に入って写真を撮りTwitterにアップする人をヤンキーと断言してしまうのは説明不足だろうから、僕なりのヤンキーのカジュアル化について話しておく。

昭和の時代のヤンキーと言えば、リーゼントだったり、ぼかぼかのズボンに短い学ラン、女性だったら長いスカート(スケバンみたいな?)で、ロングヘアーのイメージだ。暴走族でお揃いのコスチュームを着て目立とうとしたり。それで何処そこの学校の奴と怠慢張って勝っただの何だのって言いふらすのがヤンキードラマでよく見るタイプであった。

つまりは、この時代のヤンキーはネットが無かったからオフラインで地元の周辺民に対して見た目や世間一般的に悪い行い→それを公言することで自分たちのヤンキーっぷりをアピールしていたのである。

ところが、時代は平成になり、暴走族も減ったし今時あんな髪型/コスチュームをしている人は居ない。これはヤンキー精神を持っている人口が減ったのだろうか?いや、そうではない。昔のヤンキースタイルが飽きられたのと同時にヤンキーアピールの表現方法が多様化したことにより、ヤンキーがカジュアル化したのだ。

今思い返すとこのヤンキーアピールがネット上で容易になったのは前略プロフィールが広まった時だ。前略プロフィールはいわゆる「プロフサイト」で、主に携帯電話(ガラケー)で1問1答していき、プロフィールを完成させるもので、互いのプロフを読み合う簡易SNSみたいなものだ。僕が中学生から高校生の時は結構な人数が使っていた。

この前略プロフィール上でヤンキーは何をしていたのかというと、「嗜好品」という項目に「マルメラLOVE(炎の絵文字)」とか、「兎に角主張したいこと」に「〇〇連合 3代目 △△先輩みたいに強くなりてぇ」みたいなことを書き込んでヤンキーアピールをしていたのだ。

このようにオンライン上で自身のヤンキー性がアピールできるようになったことで、過激なファッションや行動をする必要性が低くなった。彼らは単にアピールして欲求を満たしたいだけであり、本来相手を殴ったり殴られたりという面倒なことが好きな人はそんなに多くない。

オンライン上ならばやってないこともやったかのように振る舞えるし、本当はタバコが苦手で吸ってないけど、何となく吸ってる風に書いておいた方がカッコイイと思ってそう書く人とかも居た。こうしてオフラインでのヤンキーアピールの役割は徐々に小さくなっていき、ヤンキーはカジュアル化してきた。

このヤンキーのカジュアル化の中で重要なのは元々超ヤンキー体質(ケンカして鑑別に入って喜ぶぐらいの人)が徐々に程度が和らいだのはもちろんのこと、それまで隠れヤンキー体質(ひっそりとタバコ吸ってみたり、夜遊びしちゃってみたり)だった層が我慢せずにオンライン上でそれを暴露するようになったことだ。

普通の人でもヤンキーへの憧れは少なからずある。それは麻生太郎氏のマフィア的なファッションが「カッコイイ!」と絶賛されたり、EXILEに憧れてBボーイっぽいファッションをする人達を見れば一目瞭然だろう。

元々ヤンキーだった人達がオンラインでアピールをすると同時に、それまで大人しかった隠れヤンキー達も徐々にオンライン上でアピールをし始めた。学校や家庭では普通の振る舞いをしているが、どこからしらでやっぱりヤンキーに憧れているからそれをオンライン上で実現しようとしてしまうのである。

それで友達と内輪でちょっとした悪さをしてみて写真を撮る、その後、他の人に見られない限りヤンキーアピールにならないということで、オンラインにアップするのである。

こうしてネットの普及はそれまでは表現方法が無かったヤンキー精神を暴露させる起爆剤となったのである。

そして、さらにTwitterの登場でこの流れが加速したように思える。Twitterは以前のどのサービスに比べてもリアルタイムなもの、投稿する際に「これをやったらヤバい」というブレーキを踏む時間が短い。プロフィールの更新ならワンクッションあるが(編集→確認→更新)、ツイートの場合は1ステップで公開が可能だからだ。普段なら分別が付く子もリアルタイムでヤンキーごっこをしていると興奮するのか、そういうことを考えずに投稿してしまう。

こうした投稿はTwitter上で常時待機しているバカ発見隊がすぐに見つけ、小さな火が付くのだが、このタイミングでそのお仲間が「てめーら勝手にRTしてんじゃねぇぞ!」とお得意の「ダチ(仲間)LOVE」な振る舞いをするのもネタになり、炎上を加速させるのである。ここでもヤンキー性が関係してくる。

という流れでバイト炎上事件は起こってきたのでは無いかというのが僕の一意見である。もちろん冒頭でも述べた通り、他の方々が言及している点も要因であり、これら全てが相まって事件は起こっていると思うのだけどその背景にはこんな変化もあるだろうというのを伝えたい。

さて、ここまで長々とヤンキーのカジュアル化などについて述べて来たが、再度まとめると「ヤンキー性は見た目ではなくオンラインで行動や言動でアピールできるようになった」、「それに伴い、隠れていたヤンキー精神を持った子達が表面化してきた」ということになる。

こういったアピールはTwitterの使い方とかITリテラシーを高めることで解決できるという人が居るけれど、それは中々難しい。この解決策については次回の記事で述べるが「タバコを吸うのがカッコいい」と思っていた人達がなぜ減ってきたのかを考えると察しは付くと思う。

それでは、今回はこのへんにして、この記事で僕が炎上しないことを祈って筆をおくことにする。

  • 参考記事

1.冷蔵庫に入って炎上する「おバカな若者」たちは、「誰のせい」で現れた?

2.インターネットの遊び方を身につけよう

3.バイトやりたい放題だったマクドナルドの思い出~バイト炎上事件を思う