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関ジャニ∞もメッセージ…「ジャニーズ事務所、看護協会に5億円」看護職の労働環境・差別の実態は

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
感謝状を受け取った関ジャニ∞ 日本看護協会提供

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療・福祉の現場で看護職は必死のケアにあたっている。ジャニーズ事務所はこのたび、公益社団法人日本看護協会(福井トシ子会長、会員76万人) に、社会貢献活動「Johnny’s Smile Up ! Project」の一 環として5億円の寄付をした。寄付金で基金を設立し、「コロナ対応にも活躍する認定看護師の育成」「看護師等学校養成所への支援」にあてる。また22日には、コロナ「第一波」の看護職アンケートの結果が発表され、労働環境や差別などの実態が明らかになった。

 12月21日、日本看護協会は、関ジャニ∞の5人に感謝状を贈った。代表して村上信五さんが「微力ではございますが、これからも看護職の皆さんをはじめ、医療従事者の皆さんの笑顔と明るい未来のお役に立てるように頑張っていきたい」と語った。

 スターがメッセージを発信することで、看護の仕事に関心を寄せるファンも出てくるだろう。芸能人の社会貢献活動は、影響力が大きく、寄付に結びつきやすいと思う。ジャニーズは、Johnny’s Smile Up ! Projectを通し、PCR検査の拡充や、防護服・マスクなどの支援を行い、21日までにコロナ関連の支援総額は10億6千万円にのぼる。

〇子供の休校・休園で出勤できない

 実際に、現場の看護職は、厳しい労働環境にある。看護協会は22日、記者会見を開き、9月に実施した「看護職員の新型コロナウイルス感染症対応に関する実態調査」の結果を発表した。緊急事態宣言が出された、「第一波」の際の状況だ。

 病院看護管理者からの有効回収数は2765件。看護職の出勤状況に関しては、42・4%の病院に変化があった。「一部出勤できない」は92・7%、「全く出勤できない」は26・8%。その理由としては、「臨時休校、保育園等の休園」が最も多く、「コロナ感染症患者・疑いのある人との濃厚接触」が続く。

〇人手不足、再雇用に課題

 また、34・2%の病院が「看護職員の不足感があった」と回答。 病院で看護職員が不足した場合、病棟再編成や配置転換等により院内で人手を確保した場合が68.9%と最も多かった。

 さらに、病院全体の 15.4%で新型コロナ対応による労働環境の変化や感染リスク等を理由にした離職が「あった」と回答した。感染症指定医療機関等では 21.3%だった。

 人手不足の対策について、53・7%が仕事に就いていない看護職員を雇用する、と答えたが、感染症指定医療機関などでは「感染拡大下では教育・研修の余裕がない」などとして「雇用する」と答えたのは47・8%だった。

 他に、看護職個人のアンケートでは、約3万8000人のうち、20.5%が差別・偏見が「あった」と回答した。内容は「家族や親族が周囲の人から心無い言葉を言われた」が27.6%と最も多い。

防護服を着ていて、「そんな大げさな恰好を」と言われた看護師もいるという
防護服を着ていて、「そんな大げさな恰好を」と言われた看護師もいるという写真:アフロ

〇働き続けられる環境と手当を

 看護協会の記者会見を取材した。まず、看護職が辞めずに働き続けられる環境作りが必要だ。受診控えや、コロナ患者の対応で病床を削減するなど経営が苦しく、減給やボーナスカットに踏み切る病院も多い。「春からずっと、看護職は疲労困憊している。最大の波が来ている今、使命感だけでは限界」「給与カットになれば、士気が下がり、心折れるナースも出てくる」という。

 ジャニーズの寄付は、認定看護師の養成や看護学生への支援に使われる。現場で働く看護職への直接的な支援については、どうなっているのだろうか。協会は「防護服、マスク、グローブを都道府県の支部を通して届けている。看護職の人数が多く、限定的な支援にならざるを得ない」と説明。認定看護師については、感染管理の分野で認定看護師がエクモを使えたり、精神科分野で患者や看護職のケアに役立ったりしていることから、必要と考えている。

 感染リスクが高い看護職への危険手当てについて福井会長に聞くと、「現状では、各病院がやりくりして手当を払っていて、それができない病院もあり、財政支援を国に求めたい。危険手当を一日4千円、つけてほしい」と具体的な数字をあげた。

 さらに、看護職が本来の業務に専念できるように、他の職種との役割分担と体制作りも必要という。住民や家族からの電話が増えて負担が大きく、清掃や洗濯もしているためだ。

看護師は患者にとって身近な存在だ
看護師は患者にとって身近な存在だ提供:Arata/イメージマート

〇潜在看護師のデータベース化も

 看護師資格を持ちながら働いていない「潜在看護師」は70万人以上いるとみられる。福井会長は「潜在職員の雇用・復職の呼びかけを続けているが、技術がどのぐらいかわからない、研修の余裕がないなど、雇用側にも不安がある。有資格者の名簿や研修履歴をデータベース化し、把握できる仕組みを国に要望していく」と話した。

 第一波では軽症者への看護が多かったが、最近では、ICUで働いた経験があるなど、即戦力が求められる。大阪や北海道など、他県への応援派遣も始めている。「もともと日本は、看護職の配置が少ない」と福井会長は強調した。全国に感染が及んでいて、他の都道府県から出すということが、難しいそうだ。

「給与2倍なら働く」 ICUで働いてきたベテラン看護師の女性は、「こうした問題の解決策を見つけるのは簡単ではありませんが、給与が2倍になれば、復職する人も増えると思います」と話す。「患者さんからの感染や、ちょっとしたミスが命取りになるなど、もともと看護職はリスクの高い仕事です。子供を持てば、預ける場所が必要ですし、家族への感染リスクも増えます。でも社会的な地位は高くありません。リスクとリターンを天秤にかけ、給与が増えれば、コロナ関連の仕事でも使命感を持って受ける人が増えるのではないでしょうか」

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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