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「休校中のごはん」スーパー入店制限も…続く飲食店割引・提供支援がある

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
休校が長引き、三食の用意にお金も手間もかかる(写真:k.k/アフロイメージマート)

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、年度が変わる大事な時期に、休校が長引いている。緊急事態宣言後、保育園や学童保育に頼れない家庭も増え、虐待や家庭不和も危惧される。特にごはん問題は切実で、「一日中、用意と片付けに追われる」という悲鳴も上がっている。そんな中、割引サービスを継続する飲食店や、お弁当配布・食材の「置き配」で支援する団体もある。

○休校長引き、食支援を継続

3月の休校が突然決まり、子どもの居場所がなくなって孤立することが心配された。特に、「ごはん問題」が切実だった。栄養バランスのいい給食に頼っていた家庭も多いからだ。

多くの子ども食堂も、集まって食事をしたり、交流したりする催しは中止になった。だが、休校が長引く中で、「居場所と食事はかかせない」として、感染防止に気を配りつつ、少人数の集まりを続けるところもある。

集まるのは難しくても、お弁当や食材の配布を続ける団体は多い。寄付されたものも含め、パスタやラーメンの乾麺、レトルトソース、日持ちする野菜・果物、飲み物や菓子などを詰め合わせているそうだ。

手渡しができない場合には、自宅への配送も行われている。3月に取材した子ども食堂の代表から「個別に食材を届けています。宅配便の手渡しを避け、玄関先に置く『置き配』のシステムを利用します」とお知らせいただいた。

〇激込みのスーパー、気遣いも必要

4月8日の緊急事態宣言後、地域のフードコートやレストランの休業が増え、スーパーやコンビニエンスストアに頼らざるを得ない。店は混んでいて、店員さんに感謝しながらも、ピリピリした空気に緊張する。

最近は、休校で子どもが留守番中、犯罪や火事が起きたという報道もある。子どもを一人で留守番させられずにスーパーに連れて行くと、マスクを着用して気を付けていても、肩身が狭い。近所の友人に情報を聞いて、入場制限をしているスーパーや、広めの店に混む時間を避けて行き、店外で子どもを待たせる。

こういう状況なので、短縮しながら営業している飲食店のテイクアウトは、ありがたい。3月から、「吉野家」「餃子の王将」や「デニーズ」といったチェーン店・ファミリーレストラン等で、テイクアウトを中心に、割引サービスが行われてきた。こうした割引で、4月も継続しているものがある(次項で紹介)。

○「10万円給付、子ども食堂支援に」

子ども食堂に取り組む人たちの集まり「日本子ども食堂協会」は、フェイスブックで、子どもの食に関する情報を発信している 。21日の投稿では、割引している飲食店の情報や、相談先を掲載した。政府の「一律10万円給付」についても触れ、子ども食堂の支援に活用してほしいと呼びかけた。

その内容を一部、紹介する。

今回の現金給付を「申請しない」方が一部いらっしゃると思いますが、今回の現金給付は是非「申請」して頂きその貴重なお金をお近くの子ども食堂に食材(お米、お肉など)、現金寄付として有効利用してはいかがでしょうか?

(中略)現在、日本は新型コロナウィルスの影響で全国の子ども食堂の店内飲食が約95%以上休止しております。これによりお子さんを抱える家庭が食費の増加など大変な被害を被り困っています。これらを打開、緩和する民間対策として下記の取り組みが増加しているので皆さんの知っている情報も加えて多くの方にお知らせ願えれば幸いです。

割引サービス情報 2020・4・21現在

1、お近くの子ども食堂で弁当形式での手渡し。(日々増加中)

2、ラーメン一蘭での子供の食事無料サービス。

3、餃子の王将での弁当格安販売。

4、ガスト、吉野家、松屋などのファミレスやファストフードでの安価な提供。

5、その他の飲食店、商店街でのサービスが増加中。

全国【和食さと】「若鶏の唐揚げ弁当」など持ち帰り商品が半額

大阪【河童ラーメン本舗】「ラーメン」と「ご飯」が無料

大阪【萬野屋】「ハラミ」が無料・全国:オリジン弁当 100円引き

鎌倉・佐世保・大阪:全国観光地カツ丼連盟 カツ丼を無料

東京・神奈川・大阪:カラオケパセラ カレーライス100円

全国:天ぷら本舗 さん天:天丼390円・全国:ほっかほか亭

全国:COCOS ココス 弁当 390円・全国:デニーズ テイクアウト半額

協会の伊勢仁志さんは、「困っていたら、近くの子ども食堂に声をかけて。SNSを見ていない家庭も多く、本当に支援が必要なところに、情報が届いていない。口コミで伝えてください」と話している。

〇コミュニティでつながりを保つ

子ども食堂や、テイクアウトを利用することは、「コミュニティでつながりを保つ」という役割も大きい。もちろん、制限された生活で心細くなっているところに、生きていくのに欠かせない食の支援は、単純にありがたい。

それだけでなく、提供している人たちの気持ちがうれしいし、お弁当や食材の配布時に、マスクや手紙を同封する場合もあって、コミュニケーションのきっかけになる。

外で働く人も、在宅している人も、食事を用意するのは、手間とお金がかかる。一日中、「家族のごはん、どうしよう」と考え、用意と片付けに追われる。そういう日々が、通常の夏休みよりも長くなり、SNSでも悲鳴があがっている。

「〇〇さんは、ごはんのしたくはどうしているだろう。パパは多忙で赤ちゃんもいる」「在宅ワークの〇〇さんは、元気いっぱいの兄弟がいる。ごはんも三食って、大変」「医師の〇〇さんは、命がけで働いているのだろうな」。リアルな関係でも、直に会うことができなくなった知人たちの顔が浮かぶ。

〇どんな家庭も、頼れるように

以前、地域の子ども食堂を親子で利用した際、遠慮する家庭も多いと聞いた。支援を求めるのは、恥ずかしいことではない。経済的な問題だけでなく、仕事で不在がちだとか、料理が得意でないとか、他の問題もある。

家事を担当したことがない人は、「それぐらい、できるでしょう」と言うかもしれないけれど、実際に毎日、担当するとなるとプレッシャーだ。「朝、昼に家で食べるお弁当も作っておく」「子どもと一緒に作る」という工夫も聞く。そうしたことをするにも、準備がいる。

家事を担う人が、我慢し続けて壊れてしまったら、子どもも自分自身も、もっとかわいそうなことになる。先が見えない状況では、身内以外のセーフティネットを築き、頼り、大事にすることも必要だと思う。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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