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「休校ショック」子どもの昼食・学習・居場所…それぞれの模索 

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
突然の休校は学校や家庭・企業に大混乱をもたらした(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染拡大の影響による突然の休校要請で、家庭や学校・職場に大混乱が起きた。特に小学校低学年の保護者には、「前もって予定が決まっている、夏休みや春休みの過ごし方にも気を使うのに」と動揺が広がった。学校や学童保育、職場でも対応を模索している。子どもの健全な生活は、どうしたら守れるか。

〇突然のニュースに心理的ダメージ

小学校低学年の子を持つ筆者が、安倍晋三首相の休校要請をネットニュースで知ったのは2月27日の夕方。記事を入稿するにあたって取材先とやり取りしたり、子どもの耳鼻科の薬を薬局に受け取りに行ったり、慌ただしい日常のさなかだった。その数日前、授業参観や保護者会が中止になり、子どもたちが練習し始めた「6年生を送る会」の演目が取りやめになるなど、少しずつ自粛は広がっていた。

大変な状況の人も多い中、軟弱なのだが、まさに「休校ショック」だった。児童が多く、低学年でも学童保育に入れない地域に住むため、学童保育が開かれても利用できない。代わりに利用している学校内の「居場所」は、休校になると、同じように休みになることを、昨年の台風の時に初めて知った。

筆者の場合は、打ち合わせや取材で外出することも多いが、感染拡大防止のためテレワークが進められている情勢で、やりくりできる部分はある。だが、このところのワンオペ状態に、更年期の体調不良が重なり、「子どもの健全な生活をどうやって維持するか、いつまで続くのか」を考えると、不安が押し寄せて心臓がどきどきしてしまった。

さっそく近所の子どもサークルの保護者から連絡があり、意見を交換し合った。少人数でもあり、「運動不足になるから続けてほしい」との声もあったものの、感染のリスクを考え、講師が休止の決断をした。習い事やスポーツジムにしても、こうした際に月謝が返金となり、収入がなくなる職業の人もいる。

28日、午後3時過ぎに学校から休校決定の一斉メールが流れてきた。後で聞くと、学校への連絡自体が、急だったようだ。自治体によっては休校期間が「2週間程度」というところもあったが、私たちの場合は春休みにそのまま突入する。夕方、「居場所」に迎えに行って先生に聞くと、そこも28日で終わり。子どもたちはその日、慌ただしくまとめテストを受け、転校する子のお別れ会を開いたといい、本来は学期末に持ち帰る道具を大量に手にしていた。終業式はあるようだが、宿題や自宅学習の指示はなかった。

〇学童保育は利用できるけれど

何人かの保護者に、過ごし方を聞いてみた。Aさんは、学校のプリントで「相談を受け付ける」旨を見て、29日に相談に行った。学童保育に入っていない低学年を中心に、図書室で過ごせるといい、必要な日は前もって依頼し、利用してみることにした。仕事はキャンセルになったものも多く、オンライン会議を取り入れつつ、感染者が出ていない地域には出張するという。必要な時は、事務所へ子連れ出勤をして、パソコンでオンライン授業を見せている。身内の協力も得られるそうだ。

Bさんは、通っている学童保育に預けられることになった。「時差出勤や在宅ワークも可能だけれど、在宅ワークを選ぶと学童の利用ができなくなるので…」と複雑な様子。Cさんは、在宅ワークができるものの、「子どもを見ながらだと仕事に集中できない」と話す。「出勤日は学童保育を利用する。でも、狭いところに密集するのが心配。少人数で、預かってくれるところがあればいいのに」

〇給食なし…昼食作りにフードロスも

習い事やクラブ活動も休みになり、自宅から出られないとなると、子どもの運動不足やストレスを心配する保護者も多い。保護者が就労、ひとり親で身内の協力もない児童が、公立児童館を利用するのに「親が在宅しているかどうか」を聞かれる場合もあって、子どもも、大人のピリピリした空気を感じている。「学童保育や児童館で大人数の子どもが過ごすなら、学校のほうが衛生的では?」との指摘もある。

民間設立の学童保育は、人手や食事作りの確保に奔走し、朝から開設しているところも。各地から子どもが集まっていて、「感染者が出たら閉鎖」というリスクはある。民間学童を利用するDさんは「慣れている居場所に通えて、楽しそう」と語る。

ベビーシッター料金の内閣府による補助は、3月分を大幅に増やし、最大約26万円だという。これまで勤め先の助成があり、日常的に使っていた人は、安心して利用を増やせるかもしれないが、今から申し込んで、補助が適用になるシッターを探すのは、少しハードルが高そうだ。

給食がなくなってしまい、子どもの昼食についても、様々な動きがある。「ワタミ」「ローソン」、地域のNPOなどが、食事やおにぎりの提供を決めた。一方で、給食用の食品ロスも起きているという。SNSで納豆の配布や、牛乳を使ったレシピについて拡散され、プラスの現象もあるけれど…。子どもたちの昼ごはんをどうするかは、共働き家庭でなくても、大変な問題だと思う。就労に関係なく支援が必要だが、子ども食堂も人が集まることになってしまい、現場では模索が続いている。

〇子連れ出勤・預け合い・オンライン学習

職場でも試行錯誤しているようだ。「子連れ出勤」のために、職場内にスペースを作ったという報道には、賛否両論ある。「混んだ電車で連れて行くのか」「職場で子どもが集まってしまっては、休校の意味がないのでは」という意見だ。また、親同士の預け合いは、「困った時はお互い様」との考えもあれば、「トラブルの原因になる」と危惧する声もある。

子どもの健全な生活の一部として、学習サポートの動きも盛んになっている。オンラインの学習プログラムを無料で提供する企業も多く、もともと配信されていた動画の解説などもあり、うまく利用すればとても助かると思う。ただ、「勉強だからとタブレット漬けになったら、不健康では」「オンラインサービスが開放されても、勉強はしないと思う」と様々な声も聞く。

そもそも休校中の学習については、学校によって、かなり対応が違う。宿題や課題が出た学校もあれば、「ドリルの復習を」と言われる程度の学校もある。日ごろからタブレット学習を取り入れている学校は、それを利用できるし、無料プログラムを導入しやすいが、個人単位では利用できないプログラムもある。

突然、とんでしまった学校の授業をどうするのか。ある学校の管理職は「春休み中に登校可能な状況になれば、補習が必要かもしれない。でも教員が赴任するのは4月1日なので、いつできるか…。そうしたことも含めて、現場は大混乱」と話している。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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