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子どもの病気に奔走する親たち…新型肺炎にも緊張・産後の働き方を考える

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
子どもがいると、病気予防には敏感になる(写真:アフロ)

毎年、インフルエンザが流行る季節は、学級閉鎖や保育園の集団感染が起きて、保護者の緊張も高まります。今季は水ぼうそうも流行し、新型肺炎という未知の病気が…。現在のところは、学校でキッズサイズのマスクをしたり、手洗いうがいをしっかりしたり、冷静な対応をしているようです。もともと子どもは病気が多くて、周囲の大人も、予防や対策に敏感です。けれど、子どもの病気に慣れていない、育休から復職後の親にとっては、試練です。産後の働き方を考える際、避けて通れない子どもの病気について、後編です。前編はこちら→インフル 、胃腸炎…子どもの病気の多さに衝撃・産後の働き方を考える

「仕事が中途半端」と言われー復職前にサポート準備を

筆者が会社勤めをしていたころ、産後1年ほどで育児休暇から復帰しました。冬場の病気だけでなく、夏は夏風邪が大流行で、娘は熱性けいれんを起こして救急外来へ。子どもの病気の多さに衝撃を受け、職場に居づらくなっていました。

仕事は、遅刻・早退は多かったものの、病児保育を利用して欠勤はしなかったので、「穴はあけていない」と思っていました。でもあるとき、上司に「仕事が中途半端」と言われました。そしてまた、娘の発熱が何回か続きました。八方ふさがりの中、土曜出勤の日に、熱が下がらない娘が「ママ行かないで」「一緒に会社行く」と抱きついてきて、引き裂かれる思いでした。

こうした状況は、家族のサポートや病児保育の利用で、避けられる人もいます。職場の理解で安心して休めたり、在宅ワークができたり、融通のきく人もいます。事前にどこまでサポートがあるかや職場の雰囲気をリサーチし、準備しておくといいと思います。

もちろん、夫も看護休暇や在宅ワークを利用するのが理想ですが、そうできない場合もあるわけで、現実的に対応しなければなりません。妻が短時間勤務にする場合は、子どもの病気の多さがキャリアダウンを加速させがちです。夫とキャリアについての話し合いもしておかないと、復職後は修羅場のような毎日を送る中で、余裕がないかもしれません。

病児保育でまさかのけがーリスクも知っておく

娘が2歳の年末、抱っこした瞬間に筆者が腰を痛めた後に、娘が高い熱を出しました。検査をしても、原因が分かりません。出勤するために、病児保育を頼みました。以前は希望すると同じシッターさんが来てくれたのですが、この日は初めての人。会社にいたところ「保育中に、シッターが目を離してけがをさせてしまった」と電話がありました。

あわてて帰ると、顔に目立つ傷がありました。娘に、ごめんねと言うしかありません。高熱なのに預けられて、痛い思いまで…。夜、「ママがいい」と言う娘と、抱き合って泣きました。頭を打ったかもしれないので、次の日、救急外来に連れていき、しばらく心配でした。預けるのは、助かる反面、リスクもあると知りました。後で、突発性発疹だったと分かり、熱がひいても不機嫌が続きました。

「一対一の保育で、目を離した際のけが」というのは、保育園でのトラブルとは全く違います。大きな病児シッター組織で、料金も高額だったのに、けがの際の対応も慣れていない。改善を申し入れて、退会しました。

37度5分が呼び出しラインー保育園と日ごろから話し合いを

筆者の腰痛に、娘の高熱とけがと、踏んだり蹴ったりだった年末。年明けにも、保育園に行ったばかりで呼び出しの電話がありました。保育園の呼び出しラインは「37度5分」です。熱性けいれんを2回、起こしていた娘の場合、保育園の先生は焦り気味で連絡してきます。保育園で投薬はできませんから、通勤バッグにけいれん止めを入れておいて、駆け付けます。10件近く電話して、預ける人を探し、なんとか出勤しました。けいれん止めについては、様々な意見を聞いた結果、けいれんが起きにくくなる年齢まで常備していました。

子どもの病気時の手配というのは、瞬時の判断力とコミュニケーション能力が問われます。夕方や夜に熱が出た場合は、看病しながら夜中にクリニックや病児保育のネット予約。朝を待って、会社や保育園、シッターさんに電話をかけまくり。仕事で鍛えたスキルを発揮して乗り切れるものの、神経が張り詰め、寝不足もあってへとへとになります。子どものために倒れることもできず、職場では周りと同じ働きを求められ、預け先探しに奔走、逃げ道がありません。

3歳になっても病気多発ー保護者にもうつると心得る

病気のたびに、「成長すると、だんだん病気は少なくなっていく」と言われていました。実際は、3歳になっても、毎月のように何かがやってきました。リンゴ病、胃腸炎、中耳炎、アデノウイルス、インフルエンザなど。登園停止も初体験。

激しい胃腸炎で、「口から噴水のマーライオン」みたいに吐くのも初めて見ました。けろけろが治まった日、保育園に行こうねと言ったら、「ママ、会社に行かないで」と必死に抵抗する娘。念のためにクリニックに行くと、脱水症状になっていて、治療が必要でした。もう休めないってことしか考えていなくて、反省しました。

筆者にもうつり、何度か倒れました。以前は、免疫力に自信があったのに、子どもの菌は強力です。子どもの病気で欠席したばかりで、会社を休めないと思い、自分に症状があっても出社したことがありました。その時は、職場のだれかに健康管理室に通報され、呼び出されて注意を受けました。

子どもの病気でキャリアダウンー職場の理解と方向転換も必要

今、振り返れば「周囲のためにも休むべき」と判断できるのですが、当時は「これ以上、休めない」と必死でした。現在も、インフルエンザにかかった時の出社問題や、新型肺炎の対応が問題になっています。子どもが病気しても保護者にうつっても、気兼ねなく在宅ワークをしたり休んだりできる配慮は必要です。年に5日の看護休暇や、有給休暇はすぐなくなってしまうので。

複数の子どもを持って働き続ける友人を見ていると、産休・育休と子どもの病気対応を繰り返すわけで、職場の理解に恵まれている、サポートしてくれる人がいるなど、何かプラスの要因があるようです。最近では、リモートのツールが発展し、働き方が多様になったため、産後にキャリアを尊重されつつ働く若い世代の親も増えたように思います。ただ、早期退職制度を打ち出す組織も多いですし、ある程度の年齢になると、パート勤務や個人事業主になるなど、思い切った転換をしたほうがいいという意見も聞きます。子どもが小学生になると、病気とはまた違った「小1の壁」や、勉強のサポートなど必要なケアが増えるからです。

(日経DUALに連載した「39歳で初産 私のキャリアどうなっちゃうの?」を再構成)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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