子育て中の「夫婦間格差」・短時間勤務を選んだら

(写真:アフロ)

来春に育休からの復帰を考えている家庭は、保育園を探し、復帰後の働き方を計画する時期です。以前よりは、働き方を選びやすい雰囲気になったと思います。一方で、「産後は一人前と見てもらえない」という悩みもあるようです。産後に働く上で直面することや、その改善策を提示するシリーズ、今回は、妻が短時間勤務をすることにより生まれる、夫婦間の格差について考えます。

関連記事→短時間勤務を選んだら・産後の働き方を考える

妻の短時間勤務-夫の長時間労働化

育休から復帰後、短時間勤務にする人は多いと思います。保育園に慣れない子どもを早めに迎えに行けるし、授乳や久しぶりの仕事に疲れているワーキングマザーにとって、とても助かる制度です。

でも、落とし穴もあります。妻にお任せとばかりに、夫はますます長時間労働になりがちなのです。

筆者が育休から復帰した後、深夜勤の部署にいた夫は明け方の帰宅で、保育園の送り迎えをほとんど頼めませんでした。娘は病気が多く、保育園からの呼び出しに駆けつけ、お世話をするのは筆者がメインでした。

もちろん、「夫が融通の効く職種で、子どもの病気や出張の際は、分担した」という人もいます。「夫も残業や深夜勤をしない部署を希望して仕事を減らし、夫婦で協力し合う」家庭もあります。それでも、「365日、子どもの命を守り、家庭が回るようマネジメントする」という役割を、妻が引き受けている家庭が多数派ではないでしょうか。

職種を変えて-評価下がる可能性も

妻が「主に家庭を運営する人」という立場になると、仕事を減らしたり、変えたりする必要が出てきます。

筆者が会社勤めをしていたころ、産前産後は、出勤することが何より大事なシフト制の部署にいました。それ以前に、長く携わっていたのは、自分の裁量で成果を形にする取材職でした。取材職の場合、同じ部署の先輩や後輩が子どもの用事で休み、夜勤をしなくても、みんながカバーしていました。

シフト制の職場だと、急に休めば穴をあけてしまうわけで、「病気の娘を預けて、とにかく出勤する」という目的のためヘトヘトになりました。高額な病児保育シッターの会員になっていたのですが、その申し込みや手続き、引き継ぎ準備も大変でした。

早退したり、休んだりすると、当時の上司に「何でそんなに休むの?」と注意されました。子どもの発熱でパニックになり、病院や病児保育など、あちこちに連絡しなければならない状況の中でも、必ず職場に電話を入れていました。人数が多い部署でしたし、詳しい事情は伝わっていなかったと、後でわかりました。

繰り返し注意されていると、「自分はダメな人間」と思うようになってしまいました。産前までの積み重ねや経験は、ゼロになったみたい。当然、評価も下がりました。まさに「私のキャリア、どこに行っちゃったの?」という心の叫びが止まりませんでした。

このようなモヤモヤを感じる人は、多いようです。最近、「育児に参加しているのに、モヤモヤする」という男性の記事を見ました。それに対して、ワーキングマザーからは「逆にモヤモヤする」という意見があるのです。

「マミートラック的なことに陥っている母親がマジョリティーであり、時に悪気なく、子どもを産んだというだけで突然能力のない人間的な扱いを大なり小なり受け、なんだこれは? でも、子ども小さいし……というどう言葉にして良いかわからないモヤモヤをずっと抱えて、モチベーションや成長機会を奪われていく環境にいるのが普通です」(2019年12月1日、withnewsより)

仕事と孤育てに奮闘の妻-「夫は昇級」のモヤモヤ

子どもがいると、仕事が休みの日もゆっくりできません。幼い子はエネルギー爆発。40代の親は、朝から公園に連れて行く元気がありませんでした。娘が小さかったころのある土曜日、仕事と授乳に疲れ切り、筆者は横になっていました。娘は遊びたくて散らかしまくり、おむつを脱いじゃっても、動けなかった。「これって、ネグレクト(育児放棄)?」と思い、おそろしくなりました。

その後、夫が異動して深夜勤はなくなったものの、「人手が足りないから休めない」と主張され、休日出勤や夜の会合が優先でした。娘が高熱のときも出張に行ってしまい、「孤育て」を痛感しました。もちろん、家事だって、家庭運営のスケジューリングだって、やらなければ家が荒れ果てます。

当時は、さらなる打撃があったのです。夫が昇級したと聞き、筆者は長年、昇級していないことに気づきました。娘の病気と思うようにいかない仕事に打ちのめされていたので、報われない感がさらにアップ。「夫の昇級は、一家にとってはいい話」という目線ではなく、「夫は何も変えなくていいのに、何で私だけ!?」という不満が爆発しました。

夫婦分担できない社会-夫以外の人手も必要

この問題は、「夫が悪い」とか、「夫が変われば、なんとかなる」という話ではないのがポイントです。だれかが長時間労働をしないと、成り立たない部分もあるのが組織の現状です。まず、そういう社会や働き方を変えた上で、「子どもの責任は、母親が主に背負うもの」という意識を変え、「母親なんだから、やっておいてくれるよね」という夫の意識を変えるには、ずいぶんな時間と労力がかかります。

なので現在、可能なサポートを考えるわけです。夫が家事や育児を十分にできない場合、祖父母や近しい人のサポートはあるでしょうか。

ワーキングマザーが増えたいま、「子どもを預けて何でもやらないと、生き残れない」というプレッシャーがあります。会社の先輩が言っていました。「地方出身の高年齢ママと、東京出身で祖父母の援助ありのママとでは、天と地ほど環境が違う」って。その先輩は、祖父母に頼めず、シッターに頼んでやりくりしているようでした。

職場の理解も-柔軟な対応はあるか?

職種や、職場の理解によっても違います。自分の裁量で終わったら早く帰れるとか、持ち帰り仕事ができるとか、柔軟な職場もありますね。周囲のアラフォーママには、管理職や専門職もいます。3人の子を持つワーキングマザーは、女性が多い職場なので、子どもの用事があっても理解を得やすいと言っていました。でも、大事な案件があれば遅くまで残るなど、大変なときはあるようです。

筆者が会社でもがいていたころは、産前と変わらず仕事している知人が輝いて見えて、取り残されたような気持ちになりました。自分の価値が下がるようにも、思えました。

退職後、個人事業主になった筆者は自由に仕事ができますが、収入や制度の面を考えると、キャリアと技術を生かして勤め続けられるなら、組織勤めのほうがいいと思います。短時間勤務のワーキングマザーが活躍できて、評価される仕組みも必要です。

夫婦間で話し合い-支援者を探しておく

「夫婦が、半分半分で家事や育児をする」というのは意外に難しく、どちらかが「主な家庭運営者」を引き受けないと、生活が成り立たないケースは少なくありません。ただ、若い世代の夫婦は「男女平等」の意識が自然と身についていたり、働き方改革や在宅ツールが進化していたり、今はまた違った状況だと思います。

夫と家事や育児を分担できるのか、キャリアは平等をめざせるのか。それとも、どちらかが主な家庭運営者を引き受けて、キャリアは抑える覚悟をするのか。復帰する時に、そうした話し合いや、シッター・身内などの支援者を探しておくということはできると思います。

(日経DUALに連載した「39歳で初産 私のキャリア、どうなっちゃうの?」をもとに再構成)