「働きづらい人に必要なのは、保護よりチャンス」・多様な働き方を考える

ハンディがあっても接客の仕事について活躍できる場がある(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

川崎の殺傷など事件が相次ぎ、引きこもりやハンディのある人たちの支援について改めて注目が集まりました。カウンセリングや見守りも必要ですが、支援を受けつつ働くことで自信を取り戻せる場合もあります。医療・福祉の現場を経験してきた日本財団の竹村利道さんに、生きにくさを感じる多様な人が働ける社会の実現について聞きました。

●「理解して」と言わなくても

竹村さんは大学を卒業後、高知の病院で医療ソーシャルワーカーとして勤めた。退院した障害者が、数か月も経たないうちに病院に戻ってくる。「地域で暮らし続けることができるように」と、その後は地域の障害者支援センターで15年、働いた。

障害者の自立を阻んでいるのは、福祉の制度ではないかと思った。「デイサービスや作業所では、自分だったらこんなことしたくないと思うような作業が多かった。障害者にとっても、スポーツや文化活動は楽しいのではと思い、パチンコや居酒屋、バーに行きました。みんな元気になったし、受け入れ先にも理解してもらえました」

周囲の福祉事業所は、障害者に単純な作業を割り当てて、月に1万数千円しか払えなくても「仕方ない」という空気があった。「障害者も働いて納税したら、社会の一員になれる。理解して、と言わなくても」。2002年、竹村さんはNPOと有限会社を立ち上げ、障害者を雇用した。それは失敗してしまい、次に弁当屋を始めることにした。知的障害のある2人を雇用、車で販売に出向くやり方で、1日に25万円も売り上げた。

●尊厳を取り戻す仕事

さらに障害者の就労支援の事業所として、食品工場やカフェを展開した。数百万円する野菜のスライサーなど、効率的な設備を整えた。業態も考え、和カフェ、スパニッシュバル、土佐酒バルといった店を広げていった。現在は現場をスタッフに任せているが、6か所で140人の知的障害や精神障害のある人が働く。接客や調理など、積極的に仕事を任せ、相応の賃金も支払う。

「工夫すれば、福祉の事業所でも売り上げが上がるし、障害ある人も活躍できる。かつての自分を含め、自立しなければいけないのは事業者の側だと思います。事業者には『あわれではなく、価値を売れ』と言ってきました」

「働きづらい人には、保護よりチャンスが必要。障害のある人が、働くことで矜持を持てるようにするのが大事です。『リハビリテーション』という言葉は、もともと、尊厳を取り戻すという意味。例えば、レストランのテーブルに、ナプキンをおしゃれな形にセットする仕事は、主役ではないけれど、彼らの大切な仕事で、やりがいになっています」

竹村さんプロフィール 1964年、高知市生まれ。駒澤大学卒業後、高知市の総合病院で医療ソーシャルワーカーとして勤務。特定非営利活動法人「ワークスみらい高知」の代表を経て、日本財団国内事業開発チームシニアオフィサー。

●全ての働きづらさを感じる人の支援

障害者の就労支援の事業所は、相談や訓練から、労働者として働くところまで、「就労移行支援、B型、A型」と全国に約2万か所ある。

竹村さんは「障害者の賃金の低さや、運営側の問題など、改善点はあるものの、整った枠組みです。ところが、現状ではこれらの事業所が、医療・福祉の制度で障害者と認められた人しか利用できない。診断がつかなくても、障害者手帳がなくても、ありのままの姿で、働きづらさを感じる全ての人が使えるようになれば」と話す。

2018年、日本財団は「ワーク!ダイバーシティ」というプロジェクトを始めた。様々な働きづらさを抱える人に働く機会を作るため、4年計画で調査やモデル事業を行い、新しい就労支援制度の提案をする。

多様な「働きづらさ」を抱える人々への支援を全て「フォーマルな事業」としてサポートする仕組みを構築。個人や団体の自主的な支援活動も、国の制度や財政によって継続できるようにする計画だ。現在ある、障害者就労支援の仕組みを活用し、進化させることによって実現を目指す。

プロジェクトにあたり、事前の研究から、就労困難者、潜在労働力を推計した。高齢者の就労困難者、ニート、アルコール依存症、難病患者、引きこもり、貧困母子世帯、がん患者、HIV感染者、ホームレスなどの合計は約1500万人で、重複を除いて約600万人と推計。民間の研究機関が発表した2030年の人手不足の推計は644万人であり、カバーできる数字だという。