さくらももこさん死去 乳がんの検診と治療は

セルフチェックも有効だ(写真:アフロ)

「ちびまる子ちゃん」でおなじみのさくらももこさんが、乳がんのため53歳で亡くなったという報道は衝撃だった。「自分は大丈夫?」と気になったアラフォー、アラフィフの人は多いのではないだろうか。45歳の筆者も今春、ひやりとすることがあって乳腺外科で検査を受けた。受診に難しい手続きはなく結果もすぐわかるので、筆者の体験を参考にしていただければと思う。また治療や乳房再建について、情報の集め方やメンタルケアなど、基本的な疑問を専門医に聞いた記事も紹介する。

●急きょクリニックで検査

45歳の筆者はこの春、乳房が痛み、乳腺外科を受診した。昨年末に人間ドックで乳がん検診も受けたため大丈夫だと思ったが、6歳の娘に「病院に行ったら?」と勧められた。

通常は、こうした検査は前もっての予約がいる。ネットで検索したところ近くのクリニックに乳腺外科があり、オンラインで申し込むとすぐに予約が取れた。

予約制なので、待ち時間はほとんどなかった。一通りの検査をする。乳房をぎゅっと挟み、X線撮影をするマンモグラフィと、超音波。マンモは正直、痛かった。超音波は機械で胸をなぞり、横になっているだけ。技師の女性は子育て中で、学童保育の話をしながら和やかに終わった。

●不安が取り除かれた

その後、女性医師が検査結果を見て、説明があった。異常はなく、高濃度の乳腺であると知らされた。マンモだけでは見えにくいので、超音波の検査も組み合わせるといいそうだ。

痛みが続くようなら、整形外科に行くか精神的な原因を探るといいという。更年期に入って、体調の変化もある。娘の初めての小学校と学童生活で、親のほうがナーバスになっていたようだ。

このように結果がわかれば対処できるので、気になる人は受診を。検診の目安、治療や乳房再建、生活の悩み、情報の集め方など基本的な疑問は、専門医に取材したので参考にしてほしい。

乳がん 自分でどうチェックする?昭和大学病院ブレストセンター長 中村清吾教授インタビュー(日経DUALに掲載)

―乳がんの患者はどのぐらいいるのでしょうか。

「国の研究機関の推定値を見ると、年間に約9万人が診断されています。1985年には約2万人だったので、4倍以上に増えました。栄養状態がよくなり、女性の初潮が早く、閉経の年齢は高くなって、月経の回数が多いことが関係します。月経があると排卵期に女性ホルモンの分泌が高くなり、その刺激で乳がんが活発になるからです。昔なら、15~45歳ぐらいの間に、5人、10人と出産する人もいました。その間は月経が止まり、乳腺を刺激しません。出産や授乳の経験がある人は、乳がんにかかるリスクが低くなると言えます」

「20代の患者さんもまれにいますが、35歳以上で増え、40代後半から50代後半が発症のなだらかなピークになっています。発症数に比べて、亡くなるケースはわずかに増えている程度で、年におよそ1万3千人。他のがんよりは治療しやすいですが、対策は必要です」

―どんな人が、リスクが高いのでしょうか。

「初潮が早い、閉経が遅い、月経の周期が短い、出産や授乳を経験していない、または高齢出産をした人。肥満や、ホルモン補充療法を長期間した人などです。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝のリスクを考え、乳房を切除して話題になりましたが、同じ家系に複数の乳がん患者がいる、男性の乳がん患者がいる、両側の乳房にがんが見つかった人などは遺伝性の可能性があります。遺伝カウンセリングという仕組みもあり、血液で調べられます」

「こうしたリスクがある人は、注意して検診を受けましょう。通常、日本では40歳以上になって2年に1回の検診を勧められますが、遺伝性のリスクのある人は25歳から検診をスタートするといいですね。海外の先進国では、リスクの計算式があり、遺伝子検査にも保険が適用され、一律に検診を受けるのでなくリスクが高い人が検診を受けます」

―検診は、どのような内容ですか。

「検診の方法は、上下・左右から板で乳房を押さえてX線撮影をするマンモグラフィと、エコー(超音波)の検査があります。1~2年に1回は検診に行きましょう。自治体や勤務先で案内される検診は受けたほうがいいですね。マンモは、乳腺が発達している若い人の場合は見逃してしまうことがあります。エコーがより確実ですが、検査する人の技量にゆだねられる、画像が残らないなどの欠点があります。現在、三次元のエコーのデータを保存する装置の研究や、乳腺の発達具合(濃度)を測定する研究が始まっています」

「また、自分で定期的に触っていれば、ある程度の大きさのしこりは見つけられます。毎月、月経後の数日以内に自分で触ってみて症状があれば放置せずにすぐに病院でエコーやマンモグラフィで調べてもらいましょう。

―マンモグラフィと、エコーと、両方受けたほうがいいのかという議論もあります。

「ある調査によると、マンモ単独だと千人のうち約3人にがんが見つかりました。マンモとエコーの併用だと、千人のうち約5人。40代は併用したほうがいいものの、『税金を投入して死亡率が減った』とのデータはまだ出ていないため、国としてはっきりと併用の指針を示していません。検診で、マンモとエコーのどちらか一方にするか、併用するかは、それぞれの自治体に任されています」

「疑わしいしこりが見つかったら、針を刺して細胞や組織を採取し、顕微鏡でがん細胞があるかどうかを確かめる生検をします。さらにMRIやCTで、がんの進行度や広がり具合を確認し、治療方針を決めます」

―がんが見つかったら、どんな治療がありますか。

「治療は、手術や放射線、薬物を組み合わせて進めます。生検で、どのような治療が有効ながんかある程度わかります。薬物にはホルモン剤、ハーセプチンなどの分子標的薬、抗がん剤があります。抗がん剤と分子標的薬を組み合わせてがんを小さくしてから手術したり、ホルモン療法と抗がん剤を組み合わせたりします。抗がん剤しか効かないタイプのがんもあります」

「手術には、部分切除と全摘の切除があり、全摘した後に乳房の再建手術を受ける患者さんもいます。2013年から、人工乳房再建手術に保険が適用され、自費で100万円単位でかかっていたのが、自己負担が少なくなりました。以前は、乳房を残せるか残せないかが大きなポイントで、無理に温存するケースもありました。温存が6~7割で残りは全摘だったのが、保険が適用されてから、その割合が逆転しつつあります」

―再建手術について教えてください。

「再建は、手術で失われた乳房をもとの形に近づける手術です。自分のお腹などの組織を使う方法と、シリコンインプラントなど人工のものを入れる手術があり、シリコンを選ぶ患者さんが多い。乳頭と乳輪を残した場合は、乳房の切除と同時にシリコンを入れます。乳頭と乳輪を切除した場合は、エキスパンダーと呼ばれる組織拡張器を入れ、食塩水を少しずつ入れて皮膚を伸ばし、半年から1年後にシリコンでできた人工乳房を挿入します。シリコンは、左右の形を近づけるのが難しかったり、入れ替えが必要になったりというデメリットもあります」

「放射線治療をしてから再建手術をする場合、皮膚が伸びにくい、感染に弱いなどのリスクがあります。乳輪や乳頭を切除したら、これも人工のものか、自分の組織で作ることができます。シリコン製のものは、接着剤で貼り付けます。こうした再建の手術には、乳腺外科と形成外科の協力が欠かせません。教育セミナーを開いて技術を磨いています」

―メンタルや生活面のケアはどのようにしたらいいでしょうか。

「がんの告知を受けると、患者さんは頭が真っ白になり、『がんイコール、死』と考えてしまいがちです。医療者に病気や治療について説明されても、頭に入ってこないし、理解できません。そのような大事な場面には、信頼できる友人や家族に同席してもらうといいでしょう。今は、医師の説明の際に、レコーダーを持ち込む患者さんもいますし、スマートホンの録音機能を使う方もいます。後から冷静に聞いてみることができます」

「理解が十分でないときは、専門性の高い看護師や、ボランティアさんに相談してみてください。患者団体にアクセスして、その輪の中にいれば生活の助言をしてくれて、心の安定につながります。乳がんは、治療しても10年は経過を見なければなりません。その後も年に1回は検診を受けるよう話しています。私たちのブレストセンターでは、患者経験のあるボランティアが相談に乗り、脱毛したときのアドバイスをする業者も入っています。腫瘍内科や形成外科、遺伝カウンセラーなど様々な専門家が集まっている。自分が通う病院やコミュニティに、精神腫瘍科の医師や心のケアの専門家を見つけて、上手に社会的な資源を活用してください」

「また、インターネットの正確でない情報に振り回されないようにしましょう。病気について検索すると、膨大な情報が目に入り、不安が増すかもしれません。私たちはきちんとした治療のガイドラインが埋もれないように、検索サイトにお願いしています」