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子どもが犯罪から身を守る方法・登下校時の安全教育

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
子どもの防犯ブザー。いざという時に使えるよう練習が必要だ(写真:アフロ)

子どもがターゲットになる事件の報道が相次ぎ、自分の身を守る教育が改めて注目されている。知識を持ち、走って逃げる練習や、防犯ブザーの鳴らし方など実践しておくだけで心構えができる。東京都内の小学校で開かれたNPO法人「体験型安全教育支援機構」の1年生向け教室を取材した。

ある日の午前、東京都内の小学校。ランドセルを背負った登下校スタイルの1年生が体育館に集まる。NPO法人「体験型安全教育支援機構」の代表理事・清永奈穂さんら3人が先生になって安全教室が開かれ、学校から取材の許可をいただいて見学した。

●怪しい人ってどんな人?

「一人で学校から帰る人は?」

「はーい」

NPOのスタッフが子どもに語りかけ、会話のキャッチボールが続く。

「みんなの周りには、見守りや地域の人、先生もいるけど、時々、この子かわいい、かっこいいから連れて行っちゃおうかなという人もいる。命をしっかり守っておうちに帰れるように、体を動かして練習をしましょう」

続いて、怪しい人ってどんな人だと思うか投げかけた。「マスクやサングラス、帽子をかぶってる…みんなと違うところがあるからといって悪いことを考えているとは限りません」

●はちみつじまんに注意

NPOは怪しい人を見分けるポイントを「はちみつじまん」と教えている。

は→しつこく話しかけてくる

ち→近づいて来る

み→見てくる

つ→ついてくる

じま→じっと待っている

ん→ん?と注意

近づかれたら離れる、目をそらす、防犯ブザーを鳴らす、近くのおうちに助けてくださいと言うなど、対処法も説明された。

●「嫌です」と言ってみる

「怪しい人は、どのぐらい遠くから見ているかというと…」

体育館でNPOのスタッフが20メートルの距離を取ってみて、「学校で、20メートルのシャトルランってやったことある?」。「あるー」と子どもたち。「その1回分の距離から、ボーっとしている子がいないか狙っています」とやり取りが続く。

「ちゃんと前を見て歩くのが大切です。6メートルは前を向いて」「はちみつじまんの人がいたら、どうしよう。あっち行こうよと言われたら。行きません、と言ってみよう」

子どもたちは、大きな声で「行きません」「嫌です」と言ってみた。1人でも言えるように、代表の児童が前に出て寸劇に挑戦。そのほか、クラスごとに「助けて!」と叫ぶ練習もした。

●腕をつかまれたら「ぶんぶん」

ランドセルにつけておく防犯ブザーの確認もあった。体育館にブザーの音が響き渡る。

「今、鳴らない人は確かめてよかったね。電池をかえたり、新しいものにしてみよう。鳴らない時は声を出せるようにしよう」とアドバイス。

さらに実践が続いた。腕をつかまれたときは、引っ張るのではなく、横にぶんぶんと振って抜くのがいいという。参観に来ていた保護者も参加し、大人が子どもの腕をつかみ、振り払う。

●20メートル、走って逃げる

ランドセルをしょったまま、大人が追いかけてつかまえようとし、20メートル走って逃げる練習もした。

犯罪者は、20メートル走って逃げなければあきらめないという調査があるそうだ。子どもたちは走って逃げながら、大きい声を出す、防犯ベルを鳴らす、ランドセルをつかまれたら置いて逃げきるなど、ポイントを聞いてやってみた。

「大人が本気で走ってくるって結構、早いよね。でもみんな勇気を出して、今の20メートルを走って逃げてほしいんです。それで助かったお友達がたくさんいます」

最後にスタッフは「自分で自分の命を守る練習を、汗をかいて一生懸命やったね」と子どもたちをねぎらった。

支援機構のスタッフ なかのかおり撮影
支援機構のスタッフ なかのかおり撮影

●体験する大切さを実感

45分間、子どもたちは飽きることなく積極的に参加していた。NPOスタッフの話がわかりやすかったし、特に声に出して言う、走って逃げる、腕をぶんぶんするなど実践があっていいと思った。犯罪の怖さを説かれるよりも、楽しみながら体験したことは感覚として残るだろう。

親子向け、大人向けの教室もあるそうで、親や先生も注意するポイントや身を守る具体的な方法を知っていると、余分な不安を減らせるのではないだろうか。

情報はNPOのサイトで。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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