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「そこから全てが変わっていきました」。平野ノラを変えた“片づけ”の力

中西正男芸能記者
人生の分岐点について語る平野ノラさん

 バブルの香り漂うネタで一躍ブレークした平野ノラさん(43)。先月には著書「部屋を片づけたら人生のミラーボールが輝きだした。1日15分のノラ式実践法」(KADOKAWA)を上梓するなど、近年は片づけを通じて生き方を見直す術を発信し新境地を開拓しています。2017年に結婚し、昨年には第一子を出産。平野さんが見出した人生を切り拓く術とは。

汚部屋に侵食される

 子どもの頃から「整理整頓をしましょう」と通知表に書かれるような子で、20代の頃は汚部屋と呼ばれるような散らかった部屋で一人暮らしをしていました。

 とにかく物があふれていて、一つ一つはアンティークの机だとかこだわりを持って買ったものなんですけど、こだわりがあるがゆえに捨てることもできない。その結果、いつの間にか物で部屋が埋まってしまってました。

 ご飯を食べる場所もなくて、テイクアウトで持ち帰ったカレーを食べるのはお風呂場。湯船につかりながらお風呂のフタにカレーを置いて食べてました。さらに、それが進んでそのうち湯船にカレーのカップを浮かべて「これなら、お湯の温度でカレーも温まるし一石二鳥!」と発明感覚で食べてました。

 そのクセ、運気を上げることには人一倍興味があって、休みの日に朝からパワースポットと言われる滝まで行って力を蓄えた気になったりもしていました。一日かけて滝に行く時間があるなら、少しでも部屋を片づけろと今なら思うんですけど(笑)、その時は本気でそれでいいと思ってやっていたんです。

 散らかった部屋にいると、感覚までそこに侵食されていくというか、正しさの感覚がズレていく。恐ろしいものだと痛感しました。

片づけと仕事のリンク

 そんな中、28歳の時に片づけの本に出合って意識が変わったんです。

 高校を卒業してから芸人を目指したものの挫折して、会社員になったり、引きこもったり、なかなか自分の進むべき道を見いだせないまま過ごしていました。

 「このままでは良くない」という思いはあるものの、なかなか変えられない。そのジレンマがまた前向きな気持ちを削いでいく。そのサイクルはうっすら分かるものの、そこからどう脱却したらいいのか分からない。

 それを変えてくれたのが片づけで、部屋を整理していくことが自分の気持ちを整理することとリンクしているとは夢にも思わなかった。でも、そこが驚くほどつながっていて、部屋がかたづいていく中で視界も広がっていったんです。

 山のように積み重なったものを整理していくと、これまで自分が良いと思って買い集めてきたもの。資格を取ろうと思って途中で断念した時の本。そういったものが出てきて、それを今一度見た上で捨てることで、ものと向き合って、本当に自分がやりたいことが浮き彫りになっていく。その感覚を感じたんです。

 その結果、もう一度芸人の道を歩みたいと思いました。そこから全てが変わったというか、片づけと生活がつながっている。この感覚を得たのは本当に大きなことだと思っています。

 それ以来、きちんと片づけをする日々を送っていたんですけど、バブリーキャラでお仕事が一気に増えて、そこからまた部屋が散らかっていったんです。

 劇的に忙しくなって、家に帰っても部屋を片づける気力がない。どんどん先送りになって、部屋は散らかっていく。どんどん状態は悪くなって片づけにくくなっていく。これではいけない。そう思う中で、その感覚が仕事の上での自分ともリンクすることに気づいたんです。

 派手なメイクと衣装でバブリーキャラとして皆さんに認知していただいた。強烈なキャラだからこそ目にとまった。世に出る時は、その刺激が必要なものだったのかもしれないけど、このキャラクターのまま日常的にテレビ番組に出続けることは難しい。刺激の強さが邪魔になるといいますか。

 だったら、少しずつキャラクターも片づけていった方が良い。認知していただいて完全にキャラクターが固まってしまってから変えるのは大変。

 これは片づけのコツと実は同じことで、部屋が散らかり切ってから片づけるのは本当にパワーが要るし、ハードルも高くなってしまう。そうなる前に、一日に15分だけでも片づける。

 なので、キャラクターが固まり切ってしまう前に、メイクの仕方や衣装を少しずつマイルドにしていく。バブルのニオイは残しつつも、刺激が強すぎないというか、普通に番組に出ていても馴染むくらいの味にする。

 そのモデルチェンジを少しずつやっていったことによって、なんとか今もお仕事ができているのかなとも思っています。

子どもへの思い

 片づけによって自分を客観視する。その作業を積み重ねてきたからこそ、新型コロナ禍でもうろたえることがなかったのかなと感じています。

 コロナ禍で仕事は減りました。営業的なものは激減しましたし、休みも増えました。でも、そこで焦ることなく心の底から休めたんです。

 私一人が仕事が減って休みになったのならば大いに焦ったと思うんですけど、エンタメ業界自体が休みになり、自分一人がどうこうというレベルではない。これは如何ともしがたいことだ。だったら、生まれた時間を使って今後のことをしっかり考えた方がいい。心底、そう思えたんです。

 そこでダンナさんと子どもの話をしたんです。それまでは子どもがいなくても二人で幸せな時間を過ごせればいいと思って暮らしてきたんですけど、時間的な余裕ができたことで、もう一つ考えの幅を広げられたというか「今でも幸せだけど、一回チャレンジしてみよう」という話になったんです。

 そして、本当にありがたいとしか言いようがないんですけど、42歳で娘を授かりました。子どもがいないことが不幸だとは思ってなかったんですけど、新たな幸せを得ることができた。ただただ感謝するばかりです。

 自分にとって片づけとは?そうですね…、バブリーっぽく言うと「ミラーボールを輝かせること」だと思っています。

 …でも、これだと本のタイトルと同じですもんね。開運術、それももう一つパッとしないですもんね…。すみません、そこはもう一回、整理整頓させてもらえると幸いです(笑)。

(撮影・中西正男)

■平野ノラ(ひらの・のら)

1978年10月20日生まれ。東京都出身。本名・平野千秋。ワタナベエンターテインメント所属。中学、高校時代はバレーボールに打ち込み、全国レベルの選手として活躍。OLなどを経て、2010年、31歳でワタナベコメディスクールに入学する。肩パッド、ソバージュ、太眉などバブル全盛を思わせるスタイルでブレークし、16年には「OK!バブリー!! feat.バブリー美奈子」でシングルデビューも果たす。17年に一般男性と結婚。21年に長女を出産する。4月28日に著書「部屋を片づけたら人生のミラーボールが輝きだした。1日15分のノラ式実践法」(KADOKAWA)を上梓した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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