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「不安にサンキュー」。Z世代注目俳優・井上想良を鼓舞する山田裕貴の言葉

中西正男芸能記者
綱啓永さんとの「つなそら」コンビでも注目されている俳優の井上想良さん

 ABEMA「恋とオオカミには騙されない」などで注目度が急上昇している俳優の井上想良さん(22)。同じ事務所の俳優・綱啓永さんと「つなそら」コンビとしてZ世代注目俳優ともなっていますが、TikTokで配信される1話1分のドラマ「世界が終わる1分前」(14日スタート)でも綱さんとタッグを組みます。新たな領域に果敢に挑戦していますが、その背中を押すのは先輩・山田裕貴さんの言葉だと言います。

単体ではダメなのか

 14日から、1話1分のドラマをTikTokで配信するという試みにチャレンジします。

 1分ですから、本当に短いです。その中で映画が人の心を動かすように、見てくださる方の心を動かさないといけない。それがないと意味がない。1分に、どれだけのものを込められるか。綱(啓永)と一緒に模索しました。

 綱とはこの取材前にも一緒にお昼ご飯を食べてましたし(笑)、本当に普段から濃く付き合いをしています。

 事務所のレッスンが最初の出会いだったんですけど、同い年だし、初日から意気投合して、そこから「恋とオオカミには騙されない」でも共演することになりましたし、公私ともに時間を共有することが増えていったんです。

 そのうち、周りの方々が「つなそら」という二人での存在の仕方をフィーチャーしてくださるようになり、今ではコンビ的に扱っていただくことも増えました。

 ただ、本当に正直な話、最初はそこに抵抗もあったんです。二人じゃないと仕事に結びつかないと思われるのがイヤというか。自分単体では魅力がなくてダメなのかと。

 でも、実際にすごく仲がいいし、綱と一緒にいると、自分一人でいる時とは違う表情にもなっている。その顔は一人の仕事の時には出ないものだし、その顔を見て井上想良に魅力を感じてくださる方もいらっしゃるかもしれない。

 そして、互いが互いに付加価値をつけることになったら、僕も綱も純粋にうれしいですし、今は二人でいることをすごく前向きにとらえるようになりました。

平等からのスタートではない

 今でこそ綱とのコンビもありますし日々お仕事に邁進させてもらっているんですけど、僕は事務所に入ったのが遅くて、多くのみんなが10代で入る中、21歳の少し手前くらいで入ったんです。

 子どもの頃からシンプルに「きらびやかな世界だな」という感覚はあったんですけど、3歳からテニスを始めてテニス漬けの毎日だったこともあり、そのままスポーツ推薦で中央大学に入ったんです。

 大学のテニス部の絡みで、スポーツブランドのカタログモデルみたいなことをさせてもらうことになって、それがきっかけでワタナベエンターテインメントの社員さんから「事務所のオーディションを受けてみないか」というお話をいただきました。

 オーディションの話を聞いた時に、ふと、思ったんです。「これまでの人生、実は自分の意志で道を選んだことがなかったな」と。

 テニスも、父親がテニススクールを経営していた関係で物心つく前からラケットを握ってましたし、大学もその流れで入ったし、一から自分の意志で踏み出すということをやってこなかった。

 今、ここで踏み出さなかったら絶対に後悔する。直感的にそう思って、オーディションを受けたんです。

 父親とは大ゲンカになりました。親としたら不安定な芸能の道に進ませるのは息子のためにならないという思いがあったんだと思いますけど「こちらからは一切支援はしない」と生活費もストップ。自分で学費を稼ぎながらオーディションを受けて、今に至るという流れなんです。

 そうやって実際に芸能界に入ってみて感じたのは、やっぱり厳しい世界だなということでした。今まで自分がやってきたテニスもそうですけど、まずスポーツは平等からのスタートが絶対的なものだった。誰であろうが、勝ち上がれば優勝できるし、勝ち負けでしか判断されない。適応されるルールもみんな同じ。

 でも、役者の世界は与えられる役やシチュエーションによって、その人に向いている、向いていないもあるし、スタートが平等ではない。

 どれだけ頑張って役に寄せても、たまたまその役がハマリ役の人がいたら、かなわないということもある。難しいし、面白いし、でもやっぱり難しい。だからこそ、どんどんのめり込んでいくんだとも思っています。

「不安にサンキュー」

 スタートが遅かった分、自分でも出遅れた感はありました。案の定、オーディションを受けても結果が出ない。遅く入っている上に、テニスばかりで芝居の経験なんて全くありませんでしたし。

 そんな中、当時のマネージャーさんが「仕事がつながる人、仕事をもらえる人はこういう人だというのを実際に見てみるといい」と案内してくださったのが、同じ事務所の先輩・山田裕貴さんの現場だったんです。

 忙しい撮影の合間だったにもかかわらず、すごく丁寧にお話を聞いてくださいました。

 「これまでテニスを20年間やってきて、そこは自信を持てるんですけど、芝居をずっとやってきた人に芝居ではかなわない。そんな不安がどうしても拭い去れないんです」

 その時の思いをストレートにぶつけさせてもらいました。そこで山田さんが言ってくださったんです。

 「不安に思っているということは、それだけこの仕事に本気で向き合っているということ。オレも不安だし、今からのシーンも不安でいっぱいだけど、不安があるから緊張感が生まれて良い芝居につながる。だから『不安にサンキュー』と思った方がいいよ」

 この言葉をもらって救われました。不安をマイナスにとらえるのではなく、むしろプラスにとらえる。プレッシャーがかかる場面になればなるほど、この言葉を思い出して、実際、そこからオーディションに受かるようになったんです。

 撮影の合間にいきなりやってきた後輩にそれだけのことを伝えようとしてくださる。言葉もだし、その姿勢がすごく優しいし、温かいし、こういう方だから、お仕事が次々に来るんだろうなと。幾重にも学ばせてもらいました。

 まだまだこれからの立場で言うのはおこがましいですけど、この世界に入った時から思っているのが日本アカデミー賞で主演男優賞か助演男優賞をとるということなんです。

 スポーツの世界でやってきたので、自分のモチベーションを上げるためには、分かりやすい目標を掲げることだと。日本で一番評価される。そのためには何をすればいいのか、その表し方の一つが日本アカデミー賞だなと。幸い、今は親も応援してくれていますので(笑)、なんとか、そこを目指そうと決めています。

 …かなりまじめな内容になってますかね?体育会系出身なので、どうも一直線にいっちゃって。何ともすみません(笑)。

(撮影・中西正男)

■井上想良(いのうえ・そら)

1998年8月12日生まれ。大分県出身。ワタナベエンターテインメント所属。テニススクールを経営する父の影響で3歳からテニスを始め、プロテニス選手を目指しスポーツ推薦で中央大学に入学。スポーツブランドのモデルを経験したことが契機となり芸能界に入る。2020年、NHKBSプレミアムドラマ「ファーストラヴ」で俳優デビューを果たす。ABEMA「私が獣になった夜」に主演。ABEMA「恋とオオカミには騙されない」、フジテレビ「シンデレラはオンライン中!」などに出演。TikTokで配信する1分間のドラマ「世界が終わる1分前」が14日からスタートする。身長178センチ。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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