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“ギネス芸人”チェリー吉武が「仕事ゼロ」の中でこじ開けた世界の扉

中西正男芸能記者
新型コロナ禍での思い、そして、家族への思いを吐露するチェリー吉武さん

 「尻でクルミを30秒で最も多く潰す」など22個のギネス世界記録を持つピン芸人・チェリー吉武さん(40)。2019年にゆりやんレトリィバァさんが挑戦し話題になったアメリカの有名オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」の今月放送分に出演し、20日放送のフジテレビ「ワイドナショー」でもフィーチャーされました。妻でお笑いコンビ「たんぽぽ」の白鳥久美子さんは妊娠中で今夏出産予定ですが、新型コロナ禍で仕事が激減する中、つかんだビッグチャンスへの思い。そして、生まれてくる子どもへの思いを吐露しました。

仕事ゼロ

 新型コロナ禍で仕事は激減しています。イベントだとか、いわゆる営業がほぼなくなっていますし、わずかにある営業でも僕の芸風的になかなか厳しくて。

 というのは、しゃべりだけでサラッとステージをやるというタイプでは全くありませんので(笑)、それこそお尻でクルミを割ったり、パーティーの時に使ったりするクラッカーから飛び出す紙テープを大きなストローを使って空中で吸ったり。

 激しく動き回ったり、何かが飛び散ったりするネタが多いので、そうなるとどうしても敬遠されがちになる。

 2019年の仕事量を100としたら、20年はまだコロナ禍前の流れでいただいているのもあって30、40だったかもしれませんけど、今年に入ってからはほぼゼロです。

 仕事はないわ、家にあるストックのクルミだけは増えていくわ、そして、奥さんも妊娠中で夏には子どもも生まれてくるわで、家中、大変なことになっています(笑)。

 そんな中で「アメリカズ―」に出ることができました。実際にアメリカに行ったのは4月で、放送されたのが今月に入ってという流れだったんですけど、実は、5年ほど前から番組に動画を送ったりアプローチはしていたんです。

 タンバリン芸のゴンゾーさんやテーブルクロス引きのウエスPさん、そしてゆりやんレトリィバァさんらも過去に出られていて「なんとか自分もあの場に」とは思っていたんです。優勝したら賞金100万ドルというのもありますし(笑)。それこそアメリカンドリームなんですけど、これまでは箸にも棒にも掛からずという状況だったんです。

 でも、今年に入って3月後半くらいに番組から声がかかりました。コロナ禍で出場者を呼ぶのが難しくなったみたいなことがあったようで、お声がけをいただいたんです。

 コロナ禍で仕事がゼロになったのも事実ですし、逆に、大きなチャンスをもらうことにもなりました。改めて、いろいろとあるもんだなと思いました。

子どもへの思い

 番組で実際にネタとしてやったのは、お尻を使ってクルミを割るネタと顔面でパイを受けるネタの2つでした。

 結果的にはクルミのネタの段階で落ちてしまい、次のステップに進むことはできなかったんですけど、これはありがたいばかりですが、そこから特別枠的にもう一回ネタをやらせてもらえたんです。

 そこでやったのがパイのネタだったんですけど、審査員の人もパイまみれになって会場全体がしっちゃかめっちゃかになるような流れになりまして。結果的には合格することはできなかったんですけど、そうやってチャンスをもらえて会場を盛り上げられたことは芸人冥利に尽きると思いました。

 今のところ、今回の番組出演で営業オファーが増えるとか、そんな直接的な余波はないんですけど、イランの関係者の方から連絡をもらいまして。なかなかイランの方からいきなりメールをもらうことはないので(笑)、世界で活動する意味を再認識した気がしました。

 僕が行った時期は、ちょうど松山英樹選手がマスターズで優勝したり、大谷翔平選手がリアル二刀流で活躍したりしている最中で、ゴルフ、野球、そして尻のクルミ割り…。競技は違いますが、世界で勝負する感覚を勝手に味わっていました(笑)。

 ただ、現実的には、去年からYouTubeを始めたりもしているんですけど、登録者数もなかなか伸びない。ものすごくリアルな話、これまで家に十数万円は入れていたお金も3万円入れられるかどうかになっている。仕事もない。お金もない。子どもも生まれる。奥さんも産休に入る。

 焦りますしピンチです。でも、今あるこの状況をどう乗り切るか。今をどう生きるかによって次が明るくなるんじゃないか。なんとか前向きに捉えて、暮らすようにしています。そんなことを考えながら、今はスーパー主夫として家事をやりまくっています(笑)。

 もちろん、子どもが生まれることはこの上なくありがたいことですし、喜ばしいことです。生まれてきてくれて物心がついた時に、ケツでクルミを割ってる親父だと認識したら「えっ…」とはなると思います。

 ただ、実際にその仕事ぶりを見たら、何かを感じてくれる。汗だくになって、必死にクルミを割っている。その姿から「変なことはやってるけど…」とその先のことを感じてくれたら、うれしいばかりです。そこまでかなり時間がかかるかもしれませんけど(笑)、そう思ってもらえるように力いっぱいクルミを割り続けたいと思います。

(撮影・中西正男)

■チェリー吉武(ちぇりーよしたけ)

1980年10月13日生まれ。ワハハ本舗所属。2005年から活動を始め「尻でクルミを30秒で最も多く潰す」など現在22個のギネス世界記録を持つ“ギネス芸人”としても知られる。18年、お笑いコンビ「たんぽぽ」の白鳥久美子と結婚。19年には、雑誌「ニューズウィーク日本版」の企画「世界が尊敬する日本人100」にイチロー、大坂なおみ、草間彌生らとともに選ばれ話題となる。今月放送されたアメリカの人気番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演。また、夫婦でのYouTubeチャンネル「たんぽぽ白鳥&チェリー吉武」(https://www.youtube.com/channel/UC07M-jJgy3ZVgQhTb48ke2w)も6月21日からスタートさせている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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