「あなたはオバカル」。「R-1」準優勝のZAZYを覚醒させた松任谷由実の言葉

「R-1グランプリ2021」で準優勝したZAZYさん

 独特のルックスとリズミカルなフリップネタで「R-1グランプリ2021」で準優勝し注目を集めたZAZYさん(32)。お笑い界のみならず、多ジャンルから才能を評価されてもいますが、自身の“座標”をとらえるきっかけになったのが松任谷由実さんからの言葉だと言います。

いきなりのダイレクトメッセージ

 2016年の元日に放送された「ナインティナイン」さんの「おもしろ荘」(日本テレビ)が放送されてから、一通のDM(ダイレクトメッセージ)がツイッターに届いたんです。

 中身を見てみると、松任谷由実さんのスタッフさんからで、ユーミンさんが「おもしろ荘」を見て僕のことを面白いと言ってくださっている。もしよろしければ、ユーミンさんのラジオに出てもらえませんかという内容でして。

 完全に、ウソでしかないと思いました(笑)。ただ、それがウソではなく、本当の連絡で、実際に「おもしろ荘」の放送から2週間ほどでユーミンさんのラジオに出していただいたんです。

 そこから連絡先も交換させていただき、毎年ユーミンさんがされている新潟・苗場でのコンサートにもゲストとして出演させていただきました。

 ただ、正直、盛り上がって「ゲストはZAZY!」とテンションが上がっていたのがユーミンさんだけみたいにも感じたので、僕が出て良かったのかなとも思いましたけど(笑)、そうやってお付き合いができていきまして。

言葉の力

 今年の「R-1」が終わった後にもLINEをいただきまして「これからも、自分を貫いた芸をしてください」という言葉を頂戴しました。

 もちろん、分野は全然違うんですけど、エンターテインメントの世界の最高峰の方なので、一緒にいさせてもらっても、心が震えるような思いを何回もさせてもらっています。

 僕がアレコレ言うのは、おこがましいばかりですけど、一番強く感じるのは“言葉の刺さり方”だと思います。

 僕が言っていただいて、その一言で、あらゆる奥行きを感じたし、純粋にうれしかったのが「あなたは“オバカル”」という言葉でした。

 ユーミンさんいわく、僕みたいな芸風だと“サブカル”という言葉で評されることが多くなっていくかもしれないけれど、それは違うと思っていると。

 サブカルというのは、カルチャーという本道があって、そこの横にあるサブという位置づけになるけれども、僕はそうじゃない。“オバカル”だと。

 「カルチャーのサブにあるものではなく、オーバーカルチャー。カルチャーを越えているものだと思うの。ま、私が作った言葉なんだけどね(笑)」と言ってくださいました。

 いかにユーミンさんがこのエンターテインメントの世界を広く、深く、見続けてらっしゃるか。その結果、その世界の空間認識みたいなことがいかに定着化しているか。そんなことをその一言から思い知りましたし、トップの意味も学ばせてもらいました。

 先日も、ライブを見させてもらって、終わった後に「楽しかったです」とお伝えしたら「楽しかった?いいじゃない!楽しいというのは新しいことが始まるきっかけだからね」とサラッと言ってくださって。

 そんな名言も名言みたいなことを何も振りかぶらずにいきなり挨拶の中でサラッとおっしゃる。本当だったら、もっともったいぶって言ってもいいくらい含蓄に溢れた言葉を事も無げにおっしゃる。言葉からしても、何もかも規格が違うと思いました。

ZAZYじゃなくなる日

 「R-1」をきっかけに仕事量も5~6倍になりましたし、これまで芸人をやってきて、間違いなく、今が一番良い状況にはなっていると思います。

 ただ、芸人を始めた頃は、まさか、こんな格好で、こんなネタをやって、ZAZYを名乗っているなんて夢にも思わなかったです(笑)。

 今は舞台だけでなく、普段から私服として、こういう格好をしているんですけど、もともと本名の赤井俊之時代は、白シャツに黒ジャケットみたいな特に特徴のない大学生みたいな感じだったんです。

 ただ、8年ほど前からZAZYを名乗るようになってから、だんだんZAZYが本体を侵食していったんですね(笑)。趣味趣向がZAZYに寄って行きましたね。

 そもそも、こういうスタイルに至った理由というのは「人のいない方へ、いない方へ」ということだったんです。

 僕がこの世界に入った頃、丸刈りの芸人さんは先輩にも多かったんですけど、長髪の人はほぼいなかったんです。そして、長髪で金髪となると、ますますいない。じゃ、そちらを目指してみようかと。

 ネタ的にも、当時は絵を使ったフリップ芸をメインでやっている人も鉄拳さん、バカリズムさんくらいしかいらっしゃらず、数が少なかったんです。だったら、フリップ芸であり、そこにリズムというかその要素をさらに乗っけたことをすれば、誰もいない領域になるかなと思ったのが今の形の原点でした。

 そうやって「人のいない方へ」を詰め込んで、そちらに特化していったら、いつの間にか、こういうことになっていました(笑)。

 もともと、僕自身が人がやっていることに興味を示さないというか「それをまた僕がやる意味があるのかな」と思うタチだったことも大きいんでしょうね。勝負を考えても、既に人が密集しているところで戦うのは簡単ではないですし。

 だから、もし、この先、ZAZYみたいなルックスやネタがポツポツと増えてきたら、もう僕はZAZYじゃなくなると思います。全く違う何かになっているだろうなと。

 そう考えると、「R-1」後にユーミンさんがくださった「これからも、自分を貫いた芸をしてください」という言葉の深みが増す気がしますが、本当にそうなるだろうし、そうするだろうし。今後どうなっていくのか、自分でも分からないのが面白くもありますね。

 今のまま60歳、70歳になっても、それはそれで面白いかもしれませんけど、そうなったら、そこには内田裕也さんという偉大な先人がいらっしゃいますからね(笑)。

 そうなったら「ここは内田裕也さんがいてたしな」となって、その年から一気にモデルチェンジしてるかもしれません。それはそれで楽しそうやなと(笑)。

(撮影・中西正男)

■ZAZY(ザズィー)

1988年6月27日生まれ。大阪府出身。本名・赤井俊之。吉本興業所属。NSC大阪校33期生。2017年に拠点を大阪から東京に移す。金髪の長髪にホットパンツ姿で展開するリズミカルなフリップネタで「R-1グランプリ2021」準優勝。日本テレビ「ぐるぐるナインティナイン」の名物企画「おもしろ荘」出演をきっかけに松任谷由実との接点が生まれ、松任谷のラジオやコンサートへの出演を依頼されるようになる。5月に単独ライブを開催予定だったが、新型コロナ禍で8月10日に延期。詳細はヨシモト∞ホール公式サイトで随時発表される。

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。noteで「全てはラジオのために」(note.com/masaonakanishi)も執筆中。

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