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「新型コロナ禍でなくても、そんなに呼ばれなかったと思います」。「オズワルド」を押し上げる冷静さと熱情

中西正男芸能記者
「オズワルド」の畠中悠さん(左)と伊藤俊介さん

 「M-1グランプリ」で2019年、20年と決勝に進出したお笑いコンビ「オズワルド」。大舞台を経て、ここから飛躍というタイミングで新型コロナ禍となりましたが、ツッコミの伊藤俊介さん(31)は「コロナがなくても、僕らはそんなに呼ばれなかったと思います」と話します。一方、ボケの畠中悠さん(33)は「M-1」優勝への熱情を吐露しました。二人を押し上げる熱く、そして真っすぐな思いとは。

“かといって”

伊藤:19年、20年と「M-1」で決勝に行くことができました。

本当だったら、そこからチャンスを得るタイミングで新型コロナ禍。大変だったでしょ?とも言われるんですけど、もしコロナがなくても、僕らはそんなに呼ばれなかったと思います。

これは卑屈になってるとかじゃなくて、一緒に出ていたファイナリストに比べると、明らかに呼ばれる番組が少ないですしね。

特に19年の後。ファイナリストとして“抱き合わせ”というか、みんなで呼ばれるような場には呼んでいただきましたけど、そこから精査されて少なくなりましたから。

コロナで見えにくくなった部分もありますけど、そこは明確に感じていました。

もともと優勝するつもりだった、ただ、優勝できなかった。

「M-1」の順位で言ったら、去年は「ニューヨーク」さんと僕らは同点で5位でした。でも、仕事量的には圧倒的に「ニューヨーク」さんです。比べ物にならない。

それが事実ですし、今、起こっていることです。

ただ、かといって…ということですね。

焦ったところで、仕方がない。

結局、地道にやっていくしかない。その結果、何かチャンスが得られた時にしっかりとやる。それ以外にない。

グラデーションというか、徐々にそうなっていったと思うんですけど、今は焦らなくなりました。本当に、つい最近のことですけど。

一つ一つのお仕事を一生懸命やる。シンプルですけど、今はそう思っています。

畠中:19年に「M-1」決勝に出るまでは、とにかく決勝を目標にライブにもこれでもかと出てきました。ただ、決勝に出てからは明確に気持ちが変わりました。

「決勝に行く」から「優勝する」になったんです。

芸人誰しもかもしれませんけど、松本人志さんの存在は大きい。

初めてお会いしたのが19年の「M-1」決勝でした。僕らは順位は低かったんですけど「5年目でここまで来られたのはすごいよね。まだまだ伸びると思います」というコメントをいただいたんです。

それがまず純粋にうれしかった。また見てもらえるように頑張ろう。そして、優勝という形を残したい。すごく単純なことではあるんですけど、それくらい言葉に力をもらったというか。事実、そこから、その言葉に衝き動かされるという感覚になりました。

伊藤:基準の考え方が「M-1」になっている感じがしますね。

優勝したい。よりそう思うようになったので、行動とかネタの作り方とかも今までとは全然違う。今まで通りでは無理だと分かったので、その辺は確実に変わってますね。

去年3月に開催予定だった単独ライブが新型コロナ禍で延期になったんです。今月9日、ほぼ1年越しにやるんですけど、もともとやろうと思っていた去年のネタの質と、今年やるネタの質。これは段違いで進歩していると思っています。

それくらい、この1年でいろいろなものを変えてきたと思っていますし、これはすごく感覚的なところですけど、もっとお客さんを“巻き込める”ようになったと思います。

「M-1」優勝後の世界

伊藤:ただ「M-1」で優勝したら、こんなことをやりたいということは特にないですね。優勝することと売れることは別もんなんで。

でも、一つ間違いないのは、優勝したら、そこで自分たちの「M-1グランプリ」が終わる。終われる。それですね。

その先を細かく考えてはないですけど、まずはそれなのかなと。

もちろん、メチャクチャうれしいと思います。想像できないくらいうれしいと思います。でも、それを上回るくらい「やっと終わった…」が来るのかなと。

畠中:優勝したら、漫才師として一生やっていってもいいという証をもらえる。それも感じていますね。

それで何かが保証されるわけではないですけど、僕らが頑張れば、この先も漫才を続けていける。その楽しさはあるだろうなと。

あと、ネタの変化による楽しさもあるだろうなと思います。

「M-1」優勝を目指して作るネタと、ただただ二人で面白いものを考えてやっていこうというネタでは見える景色が全然違うんだろうなと。

まだ今のところは完全に「M-1」を見据えての景色なので、優勝したら、新しい景色が見えてくるのかなと思っています。

…妙にカッコつけた言い回しみたいになってますけど(笑)、それを見るためにも、まずは優勝しかないですから。なんとか、そこにたどり着きたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■オズワルド

1987年12月7日生まれで北海道出身の畠中悠と89年8月8日生まれで千葉県出身の伊藤俊介のコンビ。NSC東京校17期生。それぞれ別のコンビを経て2014年に結成。19年、20年と「M-1グランプリ」では連続して決勝に進出する。今年4月5日から東京・ヨシモト∞ホールの看板芸人にあたる“ムゲンダイレギュラー”メンバーに選ばれた。単独ライブ「あたらしいとうきょう」を4月9日に東京・ルミネtheよしもとで開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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