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「ロバート」馬場を救った、ぬか漬けと明石家さんまの一言

中西正男芸能記者
お笑いトリオ「ロバート」の馬場裕之

 テレビ朝日「家事ヤロウ!!!」などで料理の腕前を披露しているお笑いトリオ「ロバート」の馬場裕之さん(41)。YouTubeチャンネル「馬場ごはん」も話題になる中、先月には著書「ロバート馬場ちゃんのキッチンmemo いつもの料理が“パッと”おいしくなる魔法」を発売しました。今や料理タレントの先頭を走る存在にもなりましたが、その源流には迷いの霧を晴らしてくれた大先輩の一言がありました。

今田耕司宅での鍋パーティー

 料理は、子どもの頃からしていたんです。

 ウチはあまりお菓子を食べさせない家で、お腹が空いたら野菜を食べたりしてたんですけど、そのまま食べたのでは味気ない。そこで、自分で調理して美味しく食べることを考えたんです。それが小学4年の頃でした。

 それ以来、ずっと料理は好きで、上京してからも一人暮らしの中で料理はしてたんですけど、仕事に結びついたのは十数年前。今田耕司さんのお宅で鍋パーティーをしていた時でした。

 もともと、その鍋パーティーは木村祐一さんが仕切ってて、いろいろなお料理を作ったりされてたんですけど、その役割を、次は当時「ジャリズム」だった山下しげのり(現・インタビューマン山下)さんが受け継いだんです。

 ただ、何回作っても「山下はガサツや」という声が今田さんからあがりまして(笑)。木村さん秘伝のタレがあるんですけど、それを上品な和食器とかに入れれば見栄えも良くなるのに、必ずマグカップに入れるんです。また、そのマグカップが今田さんお気に入りの高級マグカップで、いろいろしっちゃかめっちゃかになって(笑)。

 そこで今田さんから「馬場ちゃんは料理もできるし、やってくれへん?」と山下さんから引き継ぐ形で、その役目をやらせてもらうようになったんです。

「うまい!」

 そんな流れで今田さんには料理好きということを認知してもらっていて。しばらくして、今田さん、そして、明石家さんまさんとお仕事をさせてもらう機会があったんです。

 そこで今田さんが「馬場ちゃん、ぬか漬けも漬けてるんですよ」と話を振ってくださって、さんまさんに僕のぬか漬けを食べてもらうことになったんです。

 そうしたら、さんまさんが「うまい!」と誉めてくださいまして。そこからTBS「さんまのスーパーからくりTV」にも繋がり、番組を見たスタッフさんがお仕事に呼んでくださるようになっていったんです。山下さんがガサツだったおかげで道が開けました(笑)。

 実は、その時期というのは、すごく迷っていた時でもあったんです。

 というのは「ロバート」としてコントをやったら「面白いな」と言ってもらえるけれど、バラエティーに出て、ネタ以外の形でそれぞれが前に出るとなった時に、どうしたらいいのかが分からなくて。

 韓国のアイドルに似てるとも言われるから、そのグループの振り付けを全部覚えるとか、いろいろ考えはしたんですけど、そもそも踊りも得意ではないし全くできなかった。

 何かとっかかりがないと一人では難しい。でも、それが見つからない。時間は経っていく。結果が出ない。そんなサイクルに入ってしまっていて。

 その流れの中で、さんまさんにぬか漬けを誉めてもらうことがあったんです。それって、もちろんネタとかギャグではないんですけど、僕にとっては、自分を出す大きなきっかけになったというか…。

 さんまさんが「うまい!」と言ってくれた。その事実はあるわけで、それがボケにも繋がっていくんです。「オレ、さんまさんに『うまい』って言われたことあるから」と。すると、周りが「いやいや!『面白い』と言われろよ!」とかつっこんできてくれて、そこに、こちらが「次のぬか漬けも頼まれてるから」とさらに重ねていく。

 ここはすごく感覚的な部分なんですけど、さんまさんの「うまい!」をもらったことで、目の前に自信という道ができたと言いますか。

 そうやって、料理のキャラクターがつくと、グルメロケに行った時にも単なる味の感想だけじゃなく、料理人目線のコメントも出せるようになる。そうやって「ここはいける」というパーツを少しずつ増やす形で、前への出方みたいなものが固まっていったんです。そのきっかけが、さんまさんの「うまい!」でした。

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発想の幅を広げておく

 とてもありがたいことですけど、今でもいろいろと料理のお仕事をいただけるのは、芸人としての感覚が大きく作用していると痛感しています。

 芸人って、ネタや言動が“かぶらない”ことを考えるんです。それがあるから、僕の場合、料理でも“他の人がやらなさそうなこと”をやるようにしてるんです。

 よく見るような料理でも「ここを変えたら誰もやってないよな」という要素を探すというか。そこを心がけていたら、面白がってもらえた。その感覚はあります。

 例えば、麻婆豆腐を作るとなったら、こだわりを込めるといっても「〇〇というメーカーさんの豆腐を用意してください」というくらいだと思うんです。そこを自分で豆腐を作るところから始めるというか。さらに、豆腐作りで使う大豆が北海道産だったら、水も北海道の水にこだわってみるとか。

 もちろん、手間がかかるんですけど、それをやることで味の厚みが増すというか、ホンモノ具合が確実に増すと思うんです。

 これが通常の飲食店だったら、なかなかそこまでこだわれない。売り上げアップには直結しないものかもしれないし、毎日のことだし、コストもかかるし。様々な費用対効果を考えても実現は難しいのかもしれませんけど、テレビ番組だし、一発勝負の場ですし。それだけ手間をかけても、十二分に、幾重にも意味が出てくるというか。

 なので、常に発想の幅を広げておくことはやりたいなと思っているんです。本当は、自分がまだ見たことがない料理に出合う。これが一番なんですけどね。そこにはあらゆるヒントが詰まっていますし。

 となると、短期間でも海外に行って、たくさん刺激を受けたいんですけど、日々の劇場出番もありますし、秋山(竜次)が許してくれてないんですよね。

 でもね、僕らのコントって、意外と秋山と山本(博)の2人でもできるんですよ。コントの持ち時間10分のうち、6分くらいはその2人でやってたりしますしね。じゃ、そのまま、あと4分も頑張ってくれと(笑)。でも、それだと、僕が帰ってきた時に「あ、もう、2人でできるから」となりかねませんけどね…。

 だからね、一番いいのは、秋山の一人舞台の公演が1カ月くらい入ってくれることなんですけどね。そうなったら、その期間、こちらはフリーになりますし。なんとなく、そんな仕事が入るようにコッソリと根回しを狙います。ただ、そうなったら、山本がどうするかですけど…、そこはなんとか頑張ってもらいましょうか(笑)。

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(撮影・中西正男)

■馬場裕之(ばば・ひろゆき)

1979年3月22日生まれ。福岡県出身。吉本興業所属。幼稚園からの同級生・秋山竜次、NSC東京校で出会った山本博と98年にお笑いトリオ「ロバート」を結成。NSC東京校4期生。フジテレビ「はねるのトびら」、テレビ朝日「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」などで注目を集める。卓越した料理の技術を生かし、11月19日には著書「ロバート馬場ちゃんのキッチンmemo いつもの料理が“パッと”おいしくなる魔法」が発売された。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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