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女優と監督。小川紗良を衝き動かす「知りたい」という欲求

中西正男芸能記者
女優、そして、監督として活動する小川紗良

 女優、そして、映画監督の小川紗良さん(24)。主演映画「ビューティフルドリーマー」が現在公開中で、監督として初の長編映画「海辺の金魚」も来年公開予定となっています。若くして、二足のわらじで力強い歩みを見せますが、その根っこにある思いとは。

女優と監督

 「ビューティフルドリーマー」はエチュードという即興のお芝居でほとんど作られていて、役名も本名のまま。いったいどこまでが素で、どこからがお芝居なのか。それも分からなくなるくらい、入り混じってまして(笑)。

 さらに、私は監督役で出演しているんですけど、現実世界でも女優と並行して監督として活動してますし、ちょうど撮影期間に自分の監督作の準備もしていたので、より一層、いったい何がどこまでお芝居で、どこからが現実か。何重にも分からなくなるような感覚もあったんです(笑)。

 今回は女優として参加させてもらったんですけど、活動としては、監督もやっているし、脚本を書くこともやっています。なので、作品への関わり方が複数ある感じなんですけど、これって良くも悪くも、いろいろな影響があると感じています。

 役者として脚本を読む時に、脚本家や監督の意図が読み取りやすい。これは明らかにプラスの部分だと思うんです。

 ただ、逆に、いろいろなことが見えすぎて邪魔になる部分も出てくるんです。役の主観に集中しなきゃいけないのに、俯瞰的な目線に入っちゃったりとか。本当だったら、そこは役としての感情に没入すべきところを、その構図を全体として見ている自分もいるというか。もちろん、切り替えて集中したいとは思っているんですけど、並行してやっていると、そこが絡んでくるところもあるなと感じています。

朝ドラ「まんぷく」での経験

 ありがたいことに、これまでいろいろと女優としてのお仕事もさせてもらったんですけど、中でも、強い影響を受けたのが2年ほど前に大阪で撮影したNHK連続テレビ小説「まんぷく」でした。

 ヒロインが安藤サクラさんで、当時、安藤さんはお子さんが生まれた後で、現場にも赤ちゃんを連れて来られていたんです。

 NHKの皆さんや周りの共演者さんも、本当にナチュラルに安藤さんをサポートされていて、にぎやかに、楽しく収録にあたっていたんですけど、その姿を見せていただいて、たくさん感じる部分がありました。

 結婚や出産があって、それを仕事にも相互作用としてプラスにしながらやってらっしゃる。その姿を間近で見て、私の中の仕事観というか、女優像が変わったと思います。

 仕事一本で、とにかくそこに集中して頑張るということではなく、自分の生活と仕事が一つの軸で貫かれている。そんな様子を目の当たりにして、もちろん大変なことだとも思うんですけど、こういう形も素敵な形としてあるんだと気づけたというか。

 しかも、私は安藤さんの娘役だったので、安藤さんが実生活でお母さんをやられている姿を見て、こういう生活があって、それが役にも繋がっているのか。それを娘役だったからこそ、強く感じられたんだと思います。

画像

「知りたい」

 これは女優としても、監督としても、執筆でもそうなんですけど、私が仕事をする上で根本にあるのが「人のことを知りたい」という思いなんです。

 自分ではない人の人生を知る。そして、女優なら、一部ですけど、その人の人生を演じることによって疑似体験することにもなる。

 去年、私が初めて撮った長編監督作品は、児童養護施設が舞台だったので、施設について、働いている人について、育った人について、たくさん調べました。その中で、楽しいことも、大変なことも、いろいろなことを知ることになる。

 そういったことが女優にしても、監督にしても、この世界の仕事をする大きな意義だと思いますし、私はそれを楽しいと感じるんです。だから、この仕事をやっているんだろうなと思います。

 ただ、今年は特別な年になっていて、新型コロナ禍で4月、5月は撮っていた作品も止まり、基本的にはずっと家に居ました。

 そこで改めて、文化って「要」「不要」で言ったら「不要」の方に分類されちゃうんだということを感じました。それを見せつけられたというか。この感覚はとても大きなものでした。

 でも、映画館が営業を再開した時に、一人の観客として久しぶりに映画を観に行ったんです。そこで、すごく救われたというか、全身が癒される感覚があって。わが身をもって、不要ではなく、やっぱり必要だよなともう一回思い直す体験もしました。

 仕事が止まっている時に、新しく始めたこともありました。もともと散歩はしていたんですけど、いつも以上に散歩の機会が増えて、散歩中に写真を撮るようになったんです。

 最初は簡単なカメラで撮っていたんですけど、徐々にのめり込んでいって、本格的なカメラを買ったんです。仕事が止まっている間にも、何かプラスというか、そういうものも作っておきたいなと思って。

 ま、まだカメラは仕事に結びつくようなものではないんですけど(笑)、そうやって一つ一つ前に進んでいけたらなと思っています。

(撮影・中西正男)

■小川紗良(おがわ・さら)

1996年6月8日。東京都出身。高校在学中、雑誌のモデルをきっかけにデビュー。女優と監督を両立して活動し、女優としてはNHK連続テレビ小説「まんぷく」、AbemaTV「フォローされたら終わり」などに出演。主演映画「聖なるもの」(2018年)はプチョン国際ファンタスティック映画祭長編コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した。現在、主演映画「ビューティフルドリーマー」が公開中。監督としては早稲田大学在学中に製作した「あさつゆ」からスタートし「BEATOPIA」「最期の星」などの映画を残す。初の長編監督作「海辺の金魚」は来年公開予定。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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