2012年に「全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを受賞し、その後、女優としてキャリアを積み重ねてきた吉本実憂さん(23)。盲目の女性旅芸人を演じた主演映画「瞽女GOZE」も10月23日から公開され、常に前に進み続けますが、根底にある「自分に満足したことはない」という思いを吐露しました。

ウソがヘタ

 「女優さんって、ウソをつくのがうまいよね」って、よく言われたりもするんです。「お芝居ってウソの世界で、それを作るのが女優さんだから」という文脈で。

 もちろん、お芝居である時点でドキュメンタリーではないですし、作ったものというのは間違いありません。

 でも、私はウソがすごくヘタで感情がすぐ顔に出ますし(笑)、私の場合は、ウソがあったら作品として心に届かないと思っているんです。だから、私はリアルな感情、リアルな表現。そこを追及するようにしています。

 今回の作品では、これまでにない体験をさせてもらいました。役柄が盲目の女性ということもありましたし、その中で三味線を弾いて歌を歌う。実在の人物・小林ハルさんの人生の一部を生きるということにプレッシャーも感じましたけど、監督がしっかりと時間を取ってリハーサルもしてくださり、三味線のけいこもし、丁寧に世界に入っていくことができたと感じています。

 さらに、撮影中も、本当にありがたいことに、共演の小林綾子さんがとても心のこもった接し方をしてくださいまして。

 綾子さんは作品の中で私に寄り添ってくれる優しい親方を演じてらっしゃるんですけど、カメラが回っていない時も、一緒にいる時間、ずっと親方のままでいてくださって。劇中のように私に寄り添って、気遣ってくださったんです。

 なので、綾子さんとのシーンでは、感情が崩壊するくらい涙が出ました。お芝居と現実の境目がなくなるくらい、心が通っていたというか。その時の“色”みたいなものは、きっと映像にも出てくるんだろうなとも思いました。

 完成披露試写の時に、出来上がった作品を初めて見たんですけど、ここまで自分の作品で感極まって涙を流したことはなかったです。もちろん、これまでの作品も一生懸命やらせてもらっているんですけど、試写を見る時は、技術的な部分とかどこか客観的に見る自分がいました。でも、今回は自分の映像ながら、そこに入り込んで見ていたというか。ただただ純粋に「多くの人に見てもらいたい」と思う作品になりました。

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髪を切っただけで

 今回も、まさにそうだったんですけど、これまでも自分の転機になるような経験をいくつもさせてもらいました。

 一つは「軍師官兵衛」(2014年、NHK)でご一緒させてもらった中谷美紀さんとのお芝居でした。中谷さん演じる正室の光が、官兵衛(岡田准一)への思いを私に伝えるというシーンがありまして。

 当時、私はまだキャリア1~2年だったんですけど、中谷さんの思いの深さ、強さに心が震えたんです。初めて、これが役に入り込むということなんだと思いましたし、お芝居の入口を開けてもらった気がしました。これは何年経っても忘れない感情です。お芝居なのにこんなに届くんだ。これが本物なんだという衝撃がありました。

 あと、もう一つ、これは私自身のことなんですけど、20歳の時に30センチくらい、髪の毛を切ったんです。演じる役の役作りのために切ったんですけど、それがすごく大きなポイントだったなと。

 それまでは「全日本美少女コンテスト」でグランプリをいただいて、事務所内のガールズユニットでリーダーを務め、お芝居もやらせてもらう。すごくありがたい環境なんですけど、その中でいろいろな責任感とプレッシャーを感じていたんですね。常に「ちゃんとしなきゃ」というのが強くあって。自分を作りこむというか。「こうあるべき」「こうしないといけない」という思いが常にあったんです。

 だけど、なぜか髪を切ったら、そういう思いが、スッとなくなったんです。髪を切って恋人を忘れるみたいな感覚に近いのかもしれませんけど(笑)、何か、そこでスッキリとリセットされたと言いますか。自分が解放された気がしたんです。

 そこで、そもそも、自分はどういう人間だったんだろうと考えた時に、決して決まったレールの上を歩く人間じゃない。実際、小さい頃ははだしでそこらへんを走り回ってたような子だったなと(笑)。

 それが、髪を切っただけでガラッと変わったんです。とても不思議だったんですけど、今から考えると、それまでがどれだけ気を張っていたのか。どれだけ力を入れてやっていたのか。それを強く思いますし、実際、顔つきもそこからだいぶ変わったんです。自分で言うのもアレなんですけど、優しい顔つきになって。

 やっぱり、いっぱいいっぱいになって毎日走り続けていたので、何か少しでも理不尽なことがあると、よくケンカをしてました(笑)。近くにいた人の言葉を借りると、すごくとがっていたと、そんな感じで張り詰めていたものが、髪と一緒にスッと流れて行った。そんな感覚でした。

 でも、そうやって張り詰めていた時期も無駄なことではないし、それがあるから今があるとも本当に思いますし。当時の感情や表情は、それはそれで今後の役で使わせていただこうと思います。本当に無駄がありません(笑)。

「満足したことはない」

 実は、今年1月から俳優、そしてアクション指導もされている坂口拓さんのところにアクションを習いに行ってまして。以前、映画でご一緒したことでご縁をいただき、多い時は週に3回くらい教えてもらっています。

 アクションもリアルを追求する一つの技術ですし、それをまたリアルを追及されている坂口さんから学べるというのもありがたいことだなと。やっているうちに、同じようなアクションシーンでもリアリティーのあるものとそうでないものが見分けられるようになってきて。リアルじゃないものを見ると、何とも言えない気持ち悪さを感じて、そこらへんは同年代の女の子とは全然話が合わなくはなりましたね(笑)。

 自分に満足したことはないですし、これから先も満足しないんだろうとは思います。だからこそ、少しでもできることを増やして、技術も身につけて、それを全て表現につなげたい。これからも、ずっとそう思っている自分でいられたらなと願っています。

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(撮影・中西正男)

■吉本実憂(よしもと・みゆ)

1996年12月28日生まれ。福岡県出身。オスカープロモーション所属。2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを受賞。14年に「獣医さん、事件ですよ」(日本テレビ)で女優デビュー。同年、NHK大河ドラマ「軍士官兵衛」で栄姫を演じ「ゆめはるか」で映画初出演にして主演を務める。主な出演はドラマ「表参道高校合唱部!」「とと姉ちゃん」「クズの本懐」「さくらの親子丼」、映画「罪の余白」「HiGH&LOW THE REDRAIN」「レディ in ホワイト」など。19年の映画「透子のセカイ」でフランス・ニース国際映画祭最優秀外国映画主演女優賞を受賞。盲目の女性旅芸人・ 瞽女(ごぜ)を描いた映画『瞽女 GOZE』(10月23日からシネ・リーブル池袋で上映。全国順次公開予定)に主演。映画「大コメ騒動」(21年1月8日全国公開予定)にも出演する。