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48歳で役者の道へ。「願えば叶う」体現する海道力也という生き方

中西正男芸能記者
48歳から役者の道を歩み始めた海道力也

 迫力ある面容と100キロ超の巨体でオンリーワンの存在感を放つ俳優・海道力也さん(58)。48歳で芝居の世界に入り、芸歴10年にして自身を題材にしたドキュメンタリー映画「インディーズの帝王」(来年3月公開予定、金本真吾監督)が製作されるなど、どこまでも他に類を見ない道を歩みます。その根底にあるのは「願えば叶う」という信念でした。

自分は何がしたいのか

 早めに結婚をして子どもを3人授かったんですけど、そこからバツイチになりまして。それからはリアルな話、養育費として毎月10万円を送っていたんです。

 僕が47歳の時、一番下の子が高校を卒業しまして、そこで「養育費はもういいよ」となりました。もちろん、親としての務めは今後も続くんですけど、ある意味、一区切りついた感覚にもなったんです。

 そこで、ふと視野が広がったというか「ここから自分は何がしたいのか」という思いが出てきまして。このまま終わるのもアレだなと思った時に、そういえば、自分はずっとVシネマに出てみたいという思いがあったなと。

 子どもの頃はテレビや映画を見て、そういった世界にあこがれを持ってもいたんですけど、結婚して必死に働く中で、その意識は薄れていきました。ただ、それが養育費を払い終えた時に、グーっと再燃してきて「あそこで思いっきり悪役をしてみたい」。その思いが沸きあがってきたんです。

 とはいえ、お芝居なんてやったこともない。それまでは芸能界と全く関係ない自営の仕事でしたし。「そんな状況で、本当にできるのか?」という思いからのスタートやったんですけど、とにかく今の事務所を探して飛び込みました。

 ただ、レッスンが始まっても、周りにいるのは息子みたいな年齢の若者ばかり。なんなら子役の子どもたちもいる中に一人だけ48歳のオッサンが混じっている。なかなかの状況ではありました(笑)。

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2年は仕事ゼロ

 そして、2年ほどは全く仕事も入ってこなかったんです。事務所にエキストラとかのお仕事はたくさん来ますし、そんな案件をまわしていただいたりもするんですけど、全く受からない。こんなん言うたらアレですけど、ほぼ誰でも通るエキストラの仕事らしいんです。それでも、僕だけはダメなんです。

 周りの方々から言っていただいたのは「顔も体も目立ちすぎるから、エキストラとしては“邪魔”になってしまう」と。メインキャストがそこにいるのに、エキストラに目がいってしまっては差し障りがある。仕事はなく、ただただレッスンをする時間が続きました。

 若い頃から頻繁に“その筋の”構成員に間違われてきましたし、他にも、クスリの売人だとか、愚連隊のメンバーとか…。普通に飲食店のトイレで用を足していたら、見るからに怖い人が寄ってきて「お疲れ様です!」と頭を下げて行ったりね。「誰と間違えてんねん!」となりましたけど(笑)、そんなことが山のようにあったんです。

 だからこそ、自分の風体はこういう仕事に向いているんじゃないかという意識づけにもなったんですけど、役者として最初にまわってくるようなエキストラ的なお仕事では、この姿がだいぶ邪魔にもなったみたいでして。

 ただ、2年ほどレッスンを受けた頃、事務所でワークショップがあったんです。そこに石原貴洋監督という方がお見えになって、監督の作品「大阪蛇道」という映画で、暴力団の組長役をさせてもらうことになりました。また、その映画が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」と「ドイツ・ハンブルグ映画祭2014」で招待作品となり、そこからいろいろとお声がかかるようになっていきました。

 それまでのエキストラ的なお仕事じゃなく、目立っていいというか、存在感を出さないといけない役。そして、そんな役を経験のない自分に石原監督がくださったことに感謝しかないですし、その作品をきっかけに大きく道が拓けました。

 あと、いろいろな現場に行かせてもらうことで、そこにいらっしゃる達者な皆さんと同じ空気を吸って、あらゆることを学ばせてもらったのも大きかったです。椎名桔平さん、高知東生さん、仁科貴さん、渋川清彦さん、川瀬陽太さん、坂口拓さん、田畑智子さん、小栗旬さん、山田孝之さん…。それぞれのオーラを目の当たりにして、自分なりにそれを取り込もうとも思うようになりました。

 この仕事で一番うれしいことは、監督さんやプロデューサーさんが「海道さんに出てもらって、本当に良かった」と言ってくださる瞬間です。役者は自分自身が商品。だから、そこを肯定してもらうと、自分という存在全部を丸ごと肯定してもらった感覚になると言いますか。この喜びはこれまで生きてきた中では味わったことがないものでした。

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「願えば叶う」を体現する

 よく「願えば叶う」と言うでしょ。そら、世の中、そんなにうまいこといかへんというのもホンマやとは思います。ただ、少なくとも僕は48歳からスタートして、頭の中でやりたいと思ってきたことが次々と実現してきたんです。

 まさかの形というか、そんなんもありましたしね。もともと、僕は竹内力さんの大ファンで、いつか、いつか、竹内さんに会いたいと思っていました。そしたら、去年「痛快!明石家電視台」(MBSテレビ)で“顔の怖い人特集”があって、なんと、そこに僕も出してもらったんですけど、その回のゲスト的が竹内さんでして。

 映画やドラマではなく、まさか明石家さんまさんの番組とは思いもしませんでしたけど(笑)、ずっと強く願っていれば、こんなこともあるもんなんやなと。

 最早これは恐縮するばかりですけど、そんな僕の姿を見て、一念発起して俳優をやろうと思った方や映画監督になろうと思った方もいらっしゃって。これは48歳から始めた自分やからこそ思ってもらえたことやと思いますし、幾重にもありがたいことだと思います。

 だからこそ、48歳からのスタートでしたけど、何とかこの仕事でこれからも頑張りたい。関西では少しずつ知ってもらえるようにもなってきましたけど、できれば、全国で知ってもらえる存在になりたい。もっと言えば、海外にも行きたい。願いは大きく持っておいた方がいいですからね。ただ、もし海外に行くとなっても、僕、一つも英語はしゃべれませんので、そこはどうにかせなあきませんけど(笑)。

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(撮影・中西正男)

■海道力也(かいどう・りきや)

1961年12月25日生まれ。兵庫県出身。プロジェクトコア所属。48歳から役者の道に入り、キャリアをスタートさせる。映画「大阪蛇道」(2013年、石原貴洋監督)で役者として本格デビュー。その後、関西を拠点に映画、ドラマなど出演多数。自身を題材にしたドキュメンタリー映画「インディーズの帝王」(金本真吾監督)が来年3月公開予定。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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