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“フェアリー俳優”第3世代・綱啓永が語る覚醒の瞬間

中西正男芸能記者
フェアリー俳優と呼ばれる綱啓永

 2017年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリに選ばれ、芸能事務所20社が競合した綱啓永(つな・けいと)さん(21)。テレビ朝日「騎士竜戦隊リュウソウジャー」ではリュウソウブルーを演じ、幅広い人気を得ています。また、23日スタートのMBSテレビの連続ドラマ「ホームルーム」(テレビ神奈川、チバテレなどで放送)にも出演。かわいらしい雰囲気を持つ“フェアリー俳優”とも呼ばれますが、飛躍を支えるのは事務所の先輩・山田裕貴さんからの言葉だといいます。

ここまでできないか…

 今はこういうお仕事をさせてもらっていますけど、子どもの頃から僕の中で芸能界は雲の上の存在というか、自分とは縁がない世界だと思っていたんです。

 実際、オーディションを受けたこともなかったですし、今の仕事のきっかけになった「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」も母親の友人が応募してくれて、知らない間に受けることになりました。

 なので「ジュノン―」を受けた時も、このまま大学を卒業してどこかの会社に就職する。完全にそうなると思ってました。

 そんな状況だったので、お芝居の素養も全くないですし、ゼロからレッスンを受けて、初めて迎えた現場がTBSのドラマ「文学処女」(18年)。

 入る前、芸能界にはただただ華やかなイメージしかなかったんですけど、入ってみると、華やかさ以上に努力と苦労があるんだなと…。今思うと、当たり前のことなんです(笑)。ただ、当時はそれだけ本当に何も分からない状況でした。

 自分の芝居を見てみても、当然ながら、全然ダメ。自分なりに全力でやって、努力もしてなかったわけではないのに、何一つできない。自分でも「ここまでできないか…」と思うくらい。

 なので、芝居をやっていても苦労と落胆ばかりで、楽しいなんて感情はなかったんです。そんな中、芝居をして楽しさを初めて感じたのが「リュウソウジャー」が始まってからでした。

初めてのプラスの感情

 うまい、うまくないは一旦置いておいて、初めて役になりきれた瞬間があったんです。自分の中でしっくりきたというか「あ、できた…」と思えたんです。

 劇中で出てくる長老(団時朗)の素性に関して、少しおどけた演技をする場面だったんですけど、そのシーンを撮り終えてから、共演している方やスタッフさんから「お芝居、うまくなったね」と言われまして。

 自分の手ごたえと周りからいただいた評価が合致したことも大きくて、やっと追い求めるべき方向性が少しだけ分かったといいますか。それがすごく嬉しくて。

 これまで芝居に対してはマイナスな気持ちしかなかったのが、初めてプラスの気持ちが出てきた。「オレも頑張れば、できるのかもしれない」。そんな思いが湧いてきて、そこからは臆せず意欲的にのぞめるようになったと感じています。

 あと、自分が小さい頃から見てきて憧れていた“戦隊シリーズ”に出演できているという自負もすごく大きかったと思います。

 放送に先駆けて、1話、2話あたりの撮影を公園でやっていると、散歩中の保育園の子どもたちが来たりするんです。

 その時はまだ放送前なのでみんな「リュウソウジャー」のことも知らない。当然、僕のことも知らない。劇中、僕は青い髪をしてるんですけど、子どもたちには見た目そのままに「青髪!」と言われたりしてました。

 興味を持って撮影を見てもらうだけでもありがたいんですけど、いつかは「リュウソウジャー」と認識されたいし「青髪」じゃなく、役名のメルトと呼ばれたい。他のメンバーとも当時そんな話をしていました。

 それが1年ほど経って今になると、みんな「メルト!」と呼んでくれる。これって、本当にすごいことだし、ありがたいことだなと。

 子どもの頃に見ていたシリーズに自分が出て、かつての自分みたいな子どもたちが当たり前のように役名を呼んでくれる。そうやって人の心に印象を残して、感情を生み出す。これって、この仕事ならではのものだなと強く思います。

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フェアリー俳優

 あと、普通に生きていたら、絶対にそんな人生を生きられないようなぶっ飛んだ人間を演じられるのもこの仕事の魅力だなと。猟奇的な人間や、すごく大きな会社の社長さんだとか、自分からは遠い存在の人にもなれる。そこも楽しいと今は思っています。

 それでいうと、自分のことを“フェアリー俳優”と呼んでいただいているのも、ありがたいことだなと。普通に生きていて、妖精と言われることなんてなかなかないですから(笑)。

 千葉雄大さん、志尊淳さんらのお名前を考えると、おこがましい思いもありますけど、そんな経験ができていること自体はすごく幸せだなと。

山田裕貴からの言葉

 今もまだまだですけど、とにかく、ここまでは何とかやってこられた。そこには先輩のアドバイスというか、支えみたいなものもたくさんありました。

 そういった部分ですぐに頭に浮かぶのは、山田裕貴さんの存在です。同じ事務所の先輩でもあり、戦隊シリーズの先輩でもありますし。

 「リュウソウジャー」の撮影をしている時、その日はたまたま別の作品の撮影で山田さんが同じ撮影所にいらっしゃいまして。楽屋に挨拶にうかがったんですけど、そこでいろいろなことを教えてくださいました。

 中でも印象的だったのは「演じようとしすぎない方がいい」という言葉でした。

 もちろん台本があるんだから、基本的にそれに準じた言葉を発することになる。ただ、例えば「ありがとう」というセリフがあったとしたら、本当に「ありがとう」と言いたくなるまで「ありがとう」と言ったらダメだと。

 「ありがとう」だったら、まずは相手への感謝。そして、それを直接相手に伝えたい。その思いがあふれ出してきて、結果「ありがとう」に繋がる。なので、あくまでも気持ちがあってのことで、結果的にセリフはその感情の最後の出口みたいなものだと。

 他にも「いったんゼロにする」ということも教えていただきました。もちろん、台本はしっかり読む。そして、セリフや流れを頭に入れる。ただ「ヨーイ、スタート!」のカチンコが鳴ったら、頭をいったんゼロに、フラットにすると。

 感覚的な話になってしまいますけど、それまでの僕は覚えたセリフがあって、それを順番に出していくような頭の中の動きでした。それをいったん頭をゼロにして、相手のセリフを受けて、出てきた言葉がたまたま台本のセリフと一致するというか。

 ゼロにするのはすごく怖い流れでもあったんですけど、それがうまくいくと、不思議と周りの皆さんから「今の、良かったよ!」と言ってもらえることが多くて。

 だったら、もっとうまくその流れをできるようになりたい。そんな思いも生まれてきて、山田さんから言葉をいただいてから、役者として現場に持って行く芝居が変わったんじゃないかなと。本当にまだまだなんですけど、自分の中ではとても大きかったと思っています。

 今まで、あまりこういうこと面と向かって山田さんにお伝えしたことはなかったんですけど、よく考えたら、このインタビューを山田さんが読まれたら、記事を通じて思いが伝わることになりますよね。

 全部本当のことだし、本当に感謝もしているんですけど、それはそれでなんというか、照れくさいところもあります…。だったら、この記事が山田さんに読まれることを前提に「飯、連れてってください!」と上乗せで言っておこうと思います(笑)。

(撮影・中西正男)

■綱啓永(つな・けいと)

1998年12月24日生まれ。千葉県出身。2017年「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリに選ばれ、ワタナベエンターテインメント所属となる。18年、TBSドラマ「文学処女」で俳優デビューを果たす。愛くるしい雰囲気を持った“フェアリー俳優”の第3世代と呼ばれる。第1世代は千葉雄大、第2世代に志尊淳。1月23日にスタートする毎日放送制作の連続ドラマ「ホームルーム」(関東ではテレビ神奈川、チバテレなどで放送)ではヒロインに思いを寄せる図書委員長役を演じている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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