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松尾雄治氏、ラグビー「ONE TEAM」が流行語大賞受賞も「MVPはいない」と語るワケ

中西正男芸能記者
ミスターラグビーとして活躍した松尾雄治氏

明治大学、新日鉄釜石、そして日本代表で活躍したミスターラグビー・松尾雄治さん(65)。今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」で「ONE TEAM」が大賞に選ばれるほどラグビー熱が高まっていますが「今大会のMVPですか?それはいない」と持論を展開しました。

時代を変えた

 まさか流行語大賞をラグビーの言葉が取る時代が来るとはね。それだけ日本代表が頑張ったということですし、頑張りすぎるくらい頑張って、時代を変えたということですよ。

 ラグビー経験者、OBたちもビックリしてますよ。ここまでやるかと。感動したし、感激しましたもん。いい歳して、まだこれだけ涙が出るかというくらいやってくれた。簡単に「ONE TEAM」と言いますけど、本当の「ONE TEAM」になるのは大変なことですから。素晴らしかったです。

 だからこそ、これまでのラグビー関連の人たちの古い考えを打ち破らないといけない。それはするのは今ですよ。今しかない。

土壌はあった

 土壌はあるというか、いろいろな人から言われますもん。「なんで、もっと一般の人にラグビーを分かってもらうようなことをラグビー協会はしてないんですか」って。「これを知らなかったなんて、何年も時間を損しました」「もっと早くから、ラグビーを見ていたかった」という女性の話もたくさん聞きましたし。

 僕の時はまだワールドカップというもの自体がなかったから、こうやって国際的に盛り上がる機会がなかなか難しかったけど、昔から“一試合で集まる人数”で言うと、ラグビーはすごかったんです。野球だったら5万人くらいのところ、早明戦だったら6万人くらい集まるんだから。

 そういう意味で土壌はあったんだけど、それを発展させない。させられない。やっぱり、何にしろ、協会がマイナス思考なんですよ。皆さんが協会に何か言っても「いや、それは辞めた方がいいですね」とか「それはできません」から始まるわけですよ。

 ただ、という意味では、ここからまだ伸びしろが残っているというか、これからですよ。「これだけ素晴らしいスポーツがあるんだぞ!」というのをさらに知らしめるのは。

MVPはいない

 例えばね、今、日本国内のチームには外国人選手がたくさんいるわけですよ。外国人選手だけでチームが作れるくらい。だったら、実際に外国人選手ばかりのチームを作って、日本生まれの選手ばかりのオールジャパンチームがそこと試合をする。それを北海道から沖縄までいろいろな会場でやっていくんですよ。

 外国から来ている選手は日本で頑張って稼ごうという思いもあるわけだから、その試合のチケット代からしっかりと報酬を払う。そして、彼らは本当に強いですから、純粋な日本チームはなかなか勝てないですよ。でも、それが日本チームの底上げにもなるし、新たなスターを作ることにも繋がる。

 そして、全国津々浦々あらゆる場所で試合をやっていくことで、生でラグビーを見てもらって、子どもたちが「自分もラグビーをやろう」と思うきっかけが増えてくれたら、これもまたスターの育成に繋がるわけですよ。「見たければ東京に来てください」ではダメ。こちらからまわらないと。

 あとね、ラグビーを見ている人たちにも、ラグビーが持つ正義感とか、自己犠牲の精神が潜在的に伝わるとも思うんです。それって、実はラグビーだけじゃなく、生きていく上ですごく大切なことだと思うし、そこがすごくあるスポーツだし。そういう部分でも、社会に広がっていけばいいなと本当に思います。

 今回のワールドカップのMVPですか?ん~、リーチ・マイケルなのかなぁ。でもね、ラグビーではMVPなんていないんですよ。ラグビーはね、誰か一人がやったことなんて全くないんです。みんなでやった。本当に。日本のラグビーは特にそうですから。だからこそ、この日本のラグビーを多くの人に見てもらいたいし、MVPはいないという意味を今一度考えてもらえたらありがたいかなと思いますね。

(撮影・中西正男)

■松尾雄治(まつお・ゆうじ)

1954年1月20日生まれ。東京都出身。ポジションはスタンドオフ。明大時代から大学選手権優勝、日本選手権優勝など輝かしい実績を残す。新日鉄釜石入社後は日本選手権7連覇を含む優勝8回を達成。日本代表でも司令塔として活躍する。85年に現役を引退し、以後はスポーツキャスターとして活動。2011年、東日本大震災で被害をうけた釜石市の復興のために、NPO法人「スクラム釜石」を発足させる。TOKYO MX「週末ハッピーライフ!お江戸に恋して」(土曜、午前11時)に出演中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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