今は「9時間前起床」進化する64歳、片岡鶴太郎

新たな試みに挑む片岡鶴太郎

 芸人として20代を駆け抜け、俳優、画家、タレント、ボクサーといくつもの顔を持つ片岡鶴太郎さん(64)。近年は趣味のヨガでも注目を集めていますが、新たな試みとして定期ライブ「片岡鶴太郎の『鶴やしき』」を立ち上げました。毎回、生のお客さんの前で、その時に鶴太郎さんがやりたいことを、やりたい人とやるのがコンセプト。目の前のお客さんを笑わせるという鶴太郎さんにとっては原点回帰とも言える企画ですが、そこには更なる進化を目指す探求心がありました。

新たなチャレンジ

 毎年新作の絵を描いて、新作展を開くということを還暦まで20年やり続けたんです。

 それだけ描き続けてきたんで、かなり作品がプールできまして。今までの作品と最近の作品を混ぜてお見せする展覧会をやりましょうと新しいコンセプトが生まれたんです。

 となると、これまで新作の絵を描いていた時間を別のことに使うことができる。そこで、実は意外とやっていなかったライブをやれないかと思いまして。生のお客さんの前で、その時に自分がやりたいことをお見せする。そうやって考えたのが「鶴やしき」だったんです。

 今、私が話を聞いてみたい。会ってみたい。そう思う人と、その時一番やりたいことをやる。対談の時もありますし、落語の時もあるし、コントの時もある。毎回、何をやるか分からない。何が出てくるか分からない「鶴やしき」という場。テレビとはまた違う、面白さがあるものをやりたいなと思ったんです。

 第1回は「寄席あつめ」というサブタイトルをつけて、僕がいつかやれたらなと思っていた古典落語「ねずみ」をやろうと思いまして。そこに彦ちゃん(彦摩呂)だとか松村(邦洋)君、パーマ大佐、エド・はるみさんらも出てもらって、どうせだったら、みんなで落語だったりネタをやりましょうと。

全ての原点はお笑い

 今も絵を描いたり、お芝居をしたりさせてもらってますけど、全ての原点はお笑いですからね。そりゃ、やっぱり、お笑い人でいたいと思います。

 いろいろなことをさせてもらって、より一層感じますけど、お笑いは本当に素晴らしい。笑わせることができる人間は素晴らしい。それは、ずっと思っています。

 最初はモノマネという手段で笑いを作って、役者という仕事ではコミカルなものをお見せすることで笑いを作る。また、実は、絵の中でも、ある種、しゃれっ気のある、クスッとするような表現をしたりもしてるんです。方法こそ多少変われど、根底には「人さまを楽しませたい。笑わせたい」という思いは一貫してあるんです。

 ただ、時代の中で笑いは変わるものですから。笑わせ方も変わる。だったら、今の自分だからこそできる笑いがあるはずだし、それをもう一回できたらなという思いも「鶴やしき」には込めたんです。

近くて遠い関根勤

 「寄席あつめ」の次、第2回として12月18日には関根勤さんと二人だけでトークライブをやります。

 意外とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんけど、歳もほとんど一緒で、活動時期も当然同じで、どちらもモノマネをやっていて、さらに格闘技も好き。実際、モノマネでも関根さんは輪島功一さん、僕は具志堅用高さんとか方向性もすごく一致している。

 ところがね、一緒に何かをやるということが今までなかったんです。若手の頃に番組で少し顔を合わすというくらいはありましたけど、二人で語り合うこともなく。今も互いにモノマネ番組の審査員はしてるんだけど、関根さんが日テレで、私はフジテレビという(笑)。なんとも、面白い関係なんです。

 だからこそ、どういう思いでここまでやってこられたのか。モノマネというものへのアプローチの仕方。なぜ格闘技が好きなのか。そして、お嬢さんに対してどんな教えを伝えてこられたのか…。

 関根さんに聞いてみたいことが僕の中にあふれるくらいあって、それをじっくり聞かせてもらいたいなと。ま、その中で、モノマネも出てくるだろうし、即興の掛け合いも出てくるだろうし。このライブは一切打ち合わせも何もせずに本番を迎えようと思っています。

 どう始まって、1時間半どんな時間になって、最後はどう終わるのか。私自身が目撃してみたいんです。その流れをお客さんが壁の穴からこっそりのぞき見しているような。そんなライブになったらなと思っているんです。

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村西とおる監督への思い

 年内は「寄席あつめ」と関根さんとの対談を予定していて、来年以降はだいたい年4回ペースでやれればなと。

 自分の中には既にいろいろやりたいことがあって、一つ考えているのが村西とおる監督との対談です。今、またNetflixのドラマ「全裸監督」で注目が集まってますけど、それが私としてはすごく嬉しくてね。

 80年代、フジテレビ「オールナイトフジ」で村西監督と黒木香さんと一緒にやって、その方々がもう一回フィーチャーされている。今「全裸監督」を見ている若い子たちは元ネタというかリアルタイムを知らないけど、ネットで村西監督のことを検索したりしている。

 そんな状況の中、村西監督とその当時の話をしたり、これまでの話を聞いたり、再ブレークしての心境を尋ねたり。村西監督にも、今だからこそ聞いてみたいことがたくさんあるんです。こう考えると、歳を取るのも面白いもんだなと思いますよね。

今の自分だからこそできるもの

 私が若い頃からはもうかなりの時間が経ちましたけど、今の若い芸人さんに対しては、尊敬の目で見てます。「すごいなぁ」「達者だなぁ」「うまくネタを作るなぁ」と。

 我々の頃とは、まず圧倒的に芸人さんの数が違いますよね。昔はまだそれほど多くなかった。今くらいたくさんいる中で「やっていくんだ」という気構え。覚悟。本当にすごいですよ。

 移動中の車でも、いつも若い人たちのネタを見てるんですけど、やっぱり僕は出てきたのがモノマネですんで、そこは特に見ます。

 一つは、今のモノマネの人はとにかく歌がうまい!これは純粋に僕なんかはかなわない。

 あと、モノマネってね、時代を背負っちゃうんですよ。その時代に流行しているものをモノマネするわけですから、その時代ごとの楽曲の方向性、テンポ、さらには時代によって合致する声帯というのもあるんです。

 僕らの時代というのは、モノマネの中心は五木ひろしさんだったり、森進一さんだったり、演歌歌手の皆さんが中心でした。それでやってきた僕が今の時代の人、例えば、米津玄師さんをやったりすると、まず声の質が違うし、テンポも違うし、歌い方も違う。どう頑張っても、そりゃ厳しいんですよ。

 だから、今の時代で、今に合うものをやっている人は純粋に尊敬しますし、すごいなぁと思います。そして、今の私だからこそできるものも、今の時代にあるはず。そう思って、そこはとことん追い求めていきたいと思っています。

9時間前起床

 この前、10月5日でヨガを始めて丸8年になったんです。今、9年目に突入したところなんですけど、この8年ちょっとの期間、一日も休むことなくヨガはやっています。

 始めた頃から、ヨガ、食事、準備を合わせると起床から家を出るまでに3~4時間かかってたんですけど、今は出発の8時間前に起きています。朝8時に出ようと思ったら、夜中の12時に起きます。もうね、ワケ分かんないでしょ(笑)?

 ただね、朝起きて、毎日同じことをやってますから、ちょっとした差異がすぐわかるんです。「あ、これウイルスもらったな」とか「風邪をひきかけて、肺が苦しくなってるな」とか。それを感じると、そこを補うようなことをして、なるべく一日一日のブレを少なくなるように修正していく。立て直していく。そういう流れになってきましたね。

 今はヨガだけで4時間半から5時間。朝食に2時間。お風呂とか着替えといった身支度に1時間。そして瞑想が20分。なので、8時間と言っても、実は8時間じゃ怖いんです。スムーズにできて8時間ですから。なので、余裕を持って、できれば9時間前に起きてます。

 …まぁね、この話、もうおなかいっぱいでしょ!自分で話してても「何をやってんだか…」と思いますけど、思いながらも、嬉々として9時間前に起きちゃうんです(笑)。

(撮影・中西正男)

■片岡鶴太郎(かたおか・つるたろう)

1954年12月21日生まれ。東京都出身。本名・荻野繁雄。太田プロダクション所属。小さな頃から芸人への思いが強く、高校卒業後の73年に声帯模写の片岡鶴八に弟子入りする。81年、フジテレビ系「オレたちひょうきん族」で全国区の人気を得る。88年、ボクシングのプロライセンスを取得。同年、映画「異人たちとの夏」で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞し、俳優としての活動を本格化させる。俳優としての主な受賞は毎日映画コンクール新人賞、キネマ旬報助演男優賞、ブルーリボン助演男優賞など。画家、書家としても活動する。鶴太郎が「今会いたい人と、今やりたいことをやる」イベント「片岡鶴太郎の『鶴やしき』」を立ち上げる。第1回はサブタイトル「寄席あつめ」と題し、12月7日に東京・かめありリリオホールで開催。鶴太郎、エド・はるみ、彦摩呂、松村邦洋、パーマ大佐、大下香奈らが持ちネタや落語を披露する。また第2回は「片岡鶴太郎vs関根勤『ちょっちゅね団子』」として12月18日に東京・浅草花劇場で開催される。