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松尾スズキが語る“喜劇人としての到達点”

中西正男芸能記者
作家、演出家、俳優、映画監督とあらゆる顔を持つ松尾スズキ

 作家、演出家、俳優、映画監督とあらゆる顔を持つ松尾スズキさん(56)。10月25日には監督・脚本・主演を務めた映画「108~海馬五郎の復讐と冒険~」も公開されます。これまで舞台、映画など数々の作品を生み出してきましたが、今作を“喜劇人・松尾スズキの到達点”と位置づけます。その心とは。

やりきった感

 まぁ、映画の広告というのはだいたい倍付けで言いますから(笑)。“全米騒然”みたいなもんで。ただ、今、自分ができることの到達点であることは間違いないと思います。

 脚本に5年かかりましたしね。笑いに関してはすごく練ったと思います。なので、やりきった感は、自分の中ではあります。だから「じゃ、次は何をやるのか」というのは全く見えない状態です。とにかく、今はやりきった。その感覚だけというか。

 あと、当たり前ではあるんですけど、自分がカッコよく見えたら終わりだと思ってやってはいましたね。そりゃ、自分が監督をやって、脚本も自分が書いて、そして主演の自分をカッコよく見せたら、そんなに恥ずかしいことないじゃないですか(笑)。

 それと、内容で言うと、セックスと笑いって、なかなか結び付きづらいと思うんですよね。ただ、それで笑わせられたら最高じゃないかと思いまして。

 ま、下ネタと言っちゃえば、そうなんですけど、あえてそこに挑戦しているところを見せたかった。そこを戦いたかった。それはありましたね。ただね、やっぱり難しかった。そうか、だから、みんなやらないんだと気づきました…。

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混ぜることが面白さに

 普段から、面白いことを考えてメモを取るとかはしないんですけど、日常生活の中で“混ぜる”ということはしているかもしれませんね。

 なんとなく「あ、面白いな」と思っていたもの同士を混ぜたり、アイデアとアイデアを混ぜたり、もしくは現実にある事件なんかと以前から気にかかっていたことが混ざったり。

 そんな時に、新しいものがヒュッとおりてくる。無意識の裏側に入っていったものが、ある日、ふと出てくるというか。

 考えてみると、僕がやってるのもお笑いと演劇を混ぜたり、ミュージカル畑の人と芸能人を混ぜてみたりとか。混ぜることが新しいことにつながり、面白さにもつながる。それが僕の根本にはあるのかもしれませんね。

 そもそものところで言うと、僕は子どもの頃から赤塚不二夫さんの漫画に影響されて、漫画家を目指していた人間ですから。なので、ギャグ漫画というのが僕の笑いのベースにはありますよね。

 それと、昭和の頃に見たテレビ。欽ちゃんだったり、吉本新喜劇だったり。ああいう体を使った笑い。あとは間。そういうものも自分の中にはしっかりと息づいていると思います。

 面白い動きというのに、惹きつけられるんですよね。子どもの頃からそうだし、チャップリンだとかキートンだとか、無声映画の人の動きを見たりもしますし、ジム・キャリーの動きも面白いし、財津一郎さんも大好きだし。

 そういう“動きで笑わせる人”に目がいくところもありますね。またね、面白い動きをしている芸人だったり、喜劇俳優は、実は、発想も面白いんですよ。

「松尾さんの傑作」

 あと、今回はジェラシーというのが一つの要素にはなるんですけど、ジェラシーを感じている人間っていうのは、本人はものすごくシリアスなんだけど、端から見ていたら滑稽なことが多かったりもする。

 ま、これは愛全般に言えることなのかもしれませんけど、本人たちはもちろん大真面目で、一途で、真剣なんだけど、周りから見るとおかしく見えたりもする。例えば、問題になった“あおり運転”のカップルも、端から見ると「何をやっているんだ」となるんだろうけど、もちろん本人たちは一切ふざけてはいない。なのに、喜劇的に映るんですよね。

 R-18作品だし、最初から広範囲な人を狙ってないので、みんなに「見てください!」は言えない。ま、だからこその価値があるとも思っているんですけどね。自分が18禁の映画を撮るとは思ってなかったですけど、人生経験の積み方によって見え方が違ってくる映画かなとは思います。

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 周りの評判ですか?これがね、すごくいいんです(笑)。特に、物を作っている人というか、いわゆる玄人からのウケがいいというか。「松尾さんの傑作だ」と言ってくださったり。

 映画監督の大根仁くんからも編集をほめられたり。「松尾さん、笑いをとる編集がうまくなりましたね」と偉そうなことを言われましたけど(笑)、あんなプロから言われたら純粋に嬉しかったですね。ただ、まだ公開されてませんからね…。公開されて、皆さんに喜んでもらってから、こちらも喜びたいと思います(笑)。

(撮影・中西正男)

■松尾スズキ(まつお・すずき)

1962年12月15日生まれ。福岡県出身。98年に「大人計画」を旗揚げ。「ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~」で第41回岸田國士戯曲賞受賞。2004年には初監督作品「恋の門」がヴェネツィア国際映画祭に出品された。監督、脚本、主演を務めた映画「108~海馬五郎の復讐と冒険~」は10月25日公開。共演は中山美穂、大東俊介、秋山菜津子、坂井真紀ら。12月からは作・演出を手掛けるミュージカル「キレイ-神様と待ち合わせした女-」が芸術監督に就任するBunkamuraシアターコクーンを皮切りに、福岡、大阪でも上演される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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