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「一番の憧れ」尚玄が語る恩人への思い

中西正男芸能記者
地元・沖縄を舞台にした映画「ココロ、オドル」に主演を務める尚玄

 ヨーロッパなどでモデルとして活動し、その後、俳優として国内外の作品に出演している尚玄さん(41)。地元・沖縄を舞台にした主演映画「ココロ、オドル」(22日から東京・新宿ケイズシネマなどで全国順次公開)でも、存在感を見せています。東京を拠点にしつつ、ワールドワイドに動く尚玄さんですが、指針となるのは「一番の憧れ」と話す俳優・奥田瑛二さんへの思いでした。

座間味島で3週間

 今回の作品の舞台になっているのが、沖縄の座間味島という離島なんです。僕自身、沖縄出身ではあるんですけど、沖縄本島と比べても、すごくのんびりしてるんですよね。なので、撮影にあたり、島の人と話して、お酒も飲んで、島の人の温かさ、ゆっくりしたテンポを体になじませていくところから始めました。

 3週間、座間味島にいたんですけど、こちらの予想を上回る、独特のゆったり感というか(笑)。僕らを見かけると、島の人たちが「ちょっと飲んでいけよ」とお酒をごちそうしてくれたり、釣った魚を刺身や煮つけにして持ってきてくれたり。そんな中で撮影をしました。

 今回は企画段階から関わらせてもらったこともあったし、沖縄を舞台にした作品だったし、より一層思い入れが強い作品にもなりました。演技とは“架空の状況で真実に生きること”として取り組んでいますが、それがとりわけできた感じもありました。

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俳優への思い

 僕は小さい時から俳優をやりたかったんです。小学校低学年くらいからですかね。映画が好きで「スタンド・バイ・ミー」とか「グーニーズ」とか自分と同世代の子たちが非日常にトリップするような世界に憧れて、そこに自分を投影していました。

 その思いは親にも言わず密かに持っていたものだったんですけど、大学で東京に出てきて、お声がけをいただき、モデルの仕事を始めた。それがきっかけとなって芸能の仕事がスタートしたんですけど、最終的には俳優という形を常に見据えていました。

 ただ、やればやるほど、知れば知るほど、奥深さが分かってくる。そうなると、また新たな難しさも分かってくる。何でもそうだとは思うんですけど、俳優は点数がつくものじゃないだけに、本当に大変だなとは思います。常に自分自身と向き合う仕事ですし。ただ、ただ、それでも楽しいんです。本当に好きじゃないとできない仕事だと思いますが、僕は、やめられないですね。

酒がうまくなる映画

 ここまでこの仕事をやってきて、強く影響を受けた方もいます。定期的にお会いしている大先輩、奥田瑛二さんです。知り合いのプロデューサーさんに紹介してもらって、今で十数年が経ちます。先月も沖縄でサシ飲みをさせてもらったんですけど(笑)、僕の映画デビュー作となった主演作「ハブと拳骨」(2005年)から見てもらっていて。

 それを見に来てくださった時は、娘で映画監督のモモ子(安藤モモ子)と来てくれて、終わってすぐにモモ子は「良かった!」とハグをしてくれたんです。

 ただ、奥田さんの表情が全く変わらない。そして、何もおっしゃらない。しばらくの沈黙の後「ちょっと、時間ある?」と言われて、近くのお店に行ってお酒を飲んだんです。

 ワインが運ばれてくるまでの時間も、何もおっしゃらない。まだ、胸の内は分からない。ワインがきて「尚玄、映画にはな、見た後に酒がうまくなる映画と、まずくなる映画があるんだ」とおっしゃったんです。まだ「〇」か「×」か分からない分からない(笑)。

 そして「今日のは、酒がうまくなるよ」とワインをお飲みになったんです。こっちとしたら「早く言って!」というところだったんですけど(笑)、そんな感じで、要所要所で、こちらの糧に、礎になっていく、いろいろな言葉をもらいました。

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手の色気

 いろいろ素敵な俳優さんがいらっしゃいますけど、僕の中で「こういうカッコいい大人になりたい」というのが奥田さんなんです。一言でいうと、すごく色気がある。

 中でも、手の使い方がすごく好きなんです。色気があるんです。言葉で説明しづらいんですけど、普段のちょっとした動き、例えば、ワイングラスの持ち方一つにしても、すごく素敵なんです。

 西洋に比べて、日本ではあまり手の動きはつけないので、やりすぎるとあざとくもなってしまいますけど、奥田さんは実に自然で、とにかく素敵なんです。そこを目指して、僕もこっそり普段から意識してやらせてもらっています。やっているとご本人に言ったことはないんですけどね。

 ただ、今、ここで言っているということは、奥田さんがこのインタビューをご覧になるかもしれませんものね。そうなると、何とも恥ずかしい感じもしますけど(笑)。プライベートではお会いしているものの、まだお仕事でご一緒させてもらったことはないので、まずは共演して素敵な作品を作りたいですね。手の動きですか?ま、それも、その際に何気なくお見せできれば(笑)。

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(撮影・中西正男)

■尚玄(しょうげん)

1978年6月20日生まれ。沖縄県出身。大学卒業後、世界40カ国以上を旅しながらよーりっぱどでモデルとして活動。2004年に帰国し、俳優としてのキャリアをスタートさせる。05年に映画「ハブと拳骨」に主演。08年、米ニューヨークに渡り演劇を学ぶ。映画「Street Fighter:Assassin's Fist」剛拳役、日本テレビ系ドラマ版「デスノート」レイペンバー役など国内だけでなく、海外の作品にも多数出演している。映画「ココロ、オドル」は22日から東京・新宿ケイズシネマなどで全国順次公開。出演は尚玄、吉田妙子、ダニエル・ロペス、仲宗根梨乃、仁科貴、池間夏海、加藤雅也ら。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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