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岡田亮輔を突き動かす2人の言葉

中西正男芸能記者
舞台への思いをストレートに語った岡田亮輔

 劇団四季「マンマ・ミーア」「ウィキッド」などにも客演し、ミュージカルスターとしての地位を築いてきた岡田亮輔さん(36)。ブロードウェーミュージカル「PIPPIN」(6月から東京・東急シアターオーブなどで上演)にも出演し、さらなるステップアップを遂げていますが、その根底にあるのは先輩からの言葉だと言います。

バスケットボール漬けの日々

 中学、高校とバスケットボール一筋でした。本当にバスケが好きでしたし、当時、とにかく強かった日体大のバスケ部出身の先生が指導してくださっていたこともあって、どこまでもバスケ漬けの生活でした(笑)。

 残念ながら、選手としてバスケで食べていけるほどのプレイヤーではなかったんですけど、高校を卒業したら、何かしらバスケ関連、スポーツ関連の仕事に就けたらなと思っていたんです。

布施明からのチケット

 高校3年で部活を引退して、そんなことを考えている最中、昔から母(元女優の岡田可愛さん)が親交の深い布施明さんから「良かったら、観においでよ」とチケットをいただいたんです。布施さんも出演されている、三谷幸喜さん脚本のミュージカル「オケピ!」という作品でした。

 …ただね、本当はこんなこと言っちゃいけないんですけど、当時はバスケばっかりで、舞台には全く興味なかった。なので、感覚としては「ま、せっかくもらったしなぁ…」くらいの、実に後ろ向きな気持ちで劇場に足を運びました。

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 さすが布施さんがくださったチケットだったので、前から3列目のすごく良い席でした。ただ、それでも、始まる前は乗り気ではなくて。

 ただ、ただ、そんな自分が、気づいたら声を上げて笑っていたんです。一人で観に行ったので周りに友だちもいないのに、爆笑している。そんな自分に驚くばかりでもあったんですけど、その瞬間に「舞台って、すごい!」と思って、一気に引き込まれました。

 バスケからガラッと方向転換して「絶対に、これがやりたい!」と…。高校を卒業して音楽・エンターテインメントの専門学校に入りました。ただ、当然なんですけど、完全にゼロからのスタートでした。

底辺の底辺

 その専門学校に行くということは、みんな、小さな頃からバレエをやっていたり、ダンスをやっている人ばかり。何一つやっていなかったのは僕くらい。楽譜を渡されても、何一つ分からない。あまりにもみんなとレベルが違うので、練習でも自分だけはずされる。学校の中で、まさに底辺の底辺でした。

 へこみもするし、悔しい。でも、この悔しさがあったからですかね。辞めようとはならなかったんです。専門学校以外のダンスや歌のレッスンを自分で探してきて、一日に複数のレッスンをまわりながら、何とか専門学校の授業についていく感じでした。

 しっかりと楽しさを認識できたのは、専門学校の発表会。初めて舞台を踏んだんですけど、お客さんに拍手をもらった時に「この楽しさは何なんだ…」と。また、拍手をもらいたい。じゃ、もらうためにはどうすればいいのか。自分を磨くしかない。その思いで、今日まで変わらずやってきました。

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リアルを生み出す

 その中で、いろいろな役者さんともお会いしまして。中でも、大きな影響を受けたのが新納慎也さんです。僕がデビューの頃から本当に良くしていただきました。プライベートでご飯に行かせてもらうこともあるんですけど、新納さんご自身がエンターテインメントと言いますか(笑)。

 関西のご出身で、普段はミュージカル俳優と言うよりも、良い意味で関西のお兄ちゃんみたいな空気で、先輩ですけど「一緒に遊ぼうや!」という感じで、すごく気さくに接してくださるんです。

 ただ、そうかと思うと、舞台上のスキルはすさまじいの一言。そして、もともと舞台どっぷりで育ってきていない自分にとって、すごく興味深い言葉もいただきました。

 「いきなり歌いだすなんて、普通の生活であるわけないもんね。キモい!そう感じるのが普通。だからこそ、観てくださっている方が『キモい!』とならないように、ちゃんと芝居をして、リアルを生み出していかないといけない」

 実際、それを体現されていますし、どこまでも心の大きな、懐の深い方だと痛感しています。

名演技とは

 そして、劇団四季に客演をさせてもらった時に、アイドルグループの元祖とも言える「ジャニーズ」の元メンバー・飯野おさみさんからも大切なことを教わりました。

 本番を前に、僕が緊張してしまっている時に言われたんです。「亮輔、名演技って何だと思う?」と。「分かりません…」と素直に答えると、そこで教えてくださったんです。

 「名演技とは、ゆとりなんだよ。じゃ、ゆとりはどこから出てくるのか。けいこ場から出てくるんだよ。しっかりとけいこをすると、本番でも自信を持って普通にできる。その普通がお客さんにも伝わってリラックスになり、良いお芝居を生む。だから、とにかくけいこ場でやれることは全部やる。そうすれば、無用な緊張もしないし、良いものが生まれるんだよ」

一番の親孝行

 僕には3歳の息子がいるんですけど、ま、年ごろ的にあっちこっち走り回って、特に子育てが大変な時期を迎えています。それでなくても、妻は子育てで大変なので、僕もできる限り、一緒にあれこれやるようにはしています。その中で感じるのは、自分もこうやって、手をかけて育ててもらったんだなということ。

 ウチの母は僕が生まれた時には女優を辞めているので、女優としての母は記憶にないんです。母はドラマや映像が中心で、舞台はやっていなかったですけど、実はミュージカルも大好きで、よく小さな僕の手を引いて舞台を観に行ってました。

 なので、僕がいろいろな作品で舞台に立つ。そのこと自体が一番の親孝行になるのかなと、勝手に思っています(笑)。それが、仕事の原動力にもなりますしね。自分がやりたい役を定めて、そこに向かってどんどん進んでいきたいと思っています!

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(撮影・中西正男)

■岡田亮輔(おかだ・りょうすけ)

1983年2月16日生まれ。東京都出身。身長176センチ。高校まではバスケットボールに熱中し、卒業後は専門学校で舞台の研鑽を積む。その後、ミュージカル「ピーターパン」「GODSPELL カミノコトバ」、劇団四季ミュージカル「マンマ・ミーア」「ウィキッド」などに出演し、ミュージカルスターとしての地位を確立する。ブロードウェイのスタッフが製作するミュージカル「PIPPIN」にも出演。他のキャストは城田優、Crystal Kay(クリスタル・ケイ)、中尾ミエ、前田美波里ら。同作は東京・東急シアターオーブ(6月10日~30日)、愛知・愛知県芸術劇場大ホール(7月6日、7日)、大阪・オリックス劇場(7月12日~15日)、静岡・静岡市清水文化会館マリナート大ホール(7月20日、21日)で上演される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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