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「おっさんずラブ」に「アンナチュラル」、俳優・春海四方が語る求められる理由

中西正男芸能記者
名脇役として多くの作品に出演する春海四方

 TBS系ドラマ「アンナチュラル」、テレビ朝日系ドラマ「おっさんずラブ」など話題作に次々と出演する俳優・春海四方さん(59)。雑誌「日経エンタテインメント!」のドラマ出演本数ランキング(2017年7月~18年6月)で伊武雅刀さん、でんでんさん、升毅さんらと並び3位に入るなど、名脇役として引っ張りだこの状況です。さらに、パフォーマンスグループ「一世風靡セピア」時代の思い出を綴った著書「前略、昭和のバカどもっ!!」も上梓しました。多岐にわたり活躍を見せますが、なぜこれだけ仕事の声がかかるのか。照れくさそうに仕事の流儀を語りました。

どこまでも感謝

 本当にありがたいことに、最近はドラマ「アンナチュラル」(今年1月~3月)、「おっさんずラブ」(4月~6月)と話題になった作品にも立て続けに出していただきました。ただただ感謝するばかりです。

 「日経エンタテインメント!」のランキングも、ありがたいばかりで…。僕みたいに地味に活動している俳優にもこんな形で光を当ててもらって、どこまでも感謝、感謝です。

考えられるだけ考える

 え?いろいろなところからお声をいただく秘訣ですか?それは、全く分からないです(笑)。ただ、お仕事をさせてもらうにあたり、自分の中で心がけていることはいくつかあります。

 まず、台本は前もっていただけますので、演技プランなんて烏滸がましいですけど「こうやったら良いのでは」と思うパターンをいくつも想定して現場に向かいます。考えるパターンの数ですか?それは、考えられるだけ考えます(笑)。

 もちろん、その中から「それでいきましょう!」と選んでもらえたらラッキーですけど、現場の空気や監督さんの意向なんかで考えた以外が選ばれることも往々にしてあります。その時に、それまで考えていたものをいかに潔く捨てるか。これも、強く意識していることではあります。ただ、そこに至るまでに自分が考えたことは、決して無駄にならない。それも真実だと感じています。だから、とにかく、考えられるだけ考えていくようにしているんです。

一回、一回、感じる

 あと、これは芝居の技術論みたいなところになるのかもしれませんけど、一回、一回「その場で感じる」ということも意識しています。

 例えば、1カ月公演だったら、いわば同じことを30日くらい繰り返すわけです。もちろん、次にどんなことが舞台上で起こるのか。相手が何を言うのか。分かっていると言えば、分かっているんです。ただ、慣れないようにしようと。相手の言葉で、そこで初めて感情が動くというか。ルーティンにならず、リアルにその場で感じようと。そこの感覚はとても重視していると思います。

 あと、僕はスタッフさんたちとすごく仲良しだとは思います(笑)。僕らは映像の仕事で撮影に行かせてもらったら、数時間やって、そのまま帰ることが多い。でも、スタッフの皆さんはその場を作るために、毎日朝から深夜まで、何なら夜明けまでやってくださっている。

 そこがあるから僕らは仕事ができるんだし、いい格好をするわけではなく、そこには純粋に感謝しかないです。ありがとうという気持ちで接していると、自然と仲も良くなっていくもんだなぁと感じています。

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誰かが横顔を見ている

 何より、僕はとても不器用な人間なので、人がすぐにできるようなこともなかなかできない。汗水流して、ゆっくり、ゆっくり、一生懸命やるしかない。そうすると、これもありがたいもので、汗水流している横顔をどこかで誰かが見てくれているんです。そういう人たちが「こっちへ来るかい?」と呼んでくださる。それの連続で今まで仕事をやってきました。

 大学に入る時も勉強を教えてくれる恩師がいて、大学に入ってからも導いてくれる恩師に出会い、「一世風靡セピア」にも人の出会いが重なって入ることができた。

 「一世風靡―」が終わって、みんなは映像の世界に行きました。ただ、僕は基礎が全然できていなかったので、舞台をやらせてもらうようになったんです。もちろん、舞台は、とても、とても難しい。でも、多くの場合は1カ月くらいけいこができますから。映像作品は現場に行ったら、すぐに撮影する。それを思うと、舞台の方がその時の自分に向いているのかなと思ったんです。

 そうやって舞台をやらせてもらうようになって、素晴らしいプロデューサーに出会って30代を過ごし、そこで今の事務所の社長から「こっち来るかい?」と声をかけてもらった。本当にその連続なんです。

 今回の「アンナチュラル」とか「おっさんずラブ」も完全にその連続の一つでして。一昨年「子供の事情」という舞台に出演したんです。三谷幸喜さんの脚本で、大泉洋さんが主演。そこに、吉田羊さん、天海祐希さん、小池栄子さん、伊藤蘭さんとそうそうたるメンバーがそろいました。それだけの方々がお出になるし、その舞台をテレビ局の方が観劇に来られていて、その流れでお声がけをいただいた作品でした。

いつか、どこかで結びつく

 今回出した本にもメッセージを込めたんですけど、すぐに結果が出ることはない。ただ、その時に一生懸命やっていることが何年後かに必ず生きてくる。そういう鎖が連なって、今につながっています。昔、僕たちは「一世風靡―」として、何か次のプランがあってホコ天で踊っていたわけではなかった。お金がもらえるわけでもなかった。ただ、その時にやりたかったから一生懸命やっていた。

 そうやってみんなが無条件に上を向いていた。その空気はバブルの一つの形だったのかもしれませんけど、その時のエネルギーみたいなものが、いつか、どこかで、何らかの形で結果に結びつく。今、若い人は「どうせ、やったって…」という結果が見えているような感覚があるから、やることをやめている。そんな部分はあると思うんです。

 その考え方で潰れる可能性も絶対にある。端的に結果を求めるのではなく、それが何年も先に自分にとって、ためになったり、得する話になったりする。そんなことも知ってもらえたらなと思います。

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 ま、僕はあくまでもイチ役者なので、あくまでも、いただいたお仕事を一つ一つ丁寧にやっていくということだけなんですけどね。それがまた次のお仕事につながったら、そのまた次があるように。丁寧に、そして、仕事を面白がってできるのか。そんなことだけで、人生、終わっちゃうんじゃないかなと思っています。

 …こういうことをあんまりクドクド言っちゃうと、それこそ、完全にウザいおっさんになるのかもしれませんね。なんとも、なんとも、失礼しました(笑)。

(撮影・中西正男)

■春海四方(はるみ・しほう)

1959年3月22日生まれ。東京都出身。シス・カンパニー所属。早稲田大学在学中から演劇を始める。大学卒業後、高倉健も住人だったアパート「都荘」の管理人をしながらパフォーマンスグループ「劇男一世風靡」に入団。84年に「一世風靡セピア」結成。同年「前略、道の上より」でデビュー。89年の解散後はふたたび俳優として活動。蜷川幸雄、野田秀樹らが演出する芝居をはじめ、多くのテレビドラマなどに出演している。「日経エンタテインメント」のドラマ出演本数ランキングで3位にランクイン。「一世風靡セピア」時代の思い出などを綴った著書「前略、昭和のバカどもっ!!」を11月24日に上梓した。音楽劇「道」(12月8日~28日、東京・日生劇場)にも出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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