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「サッカーにウソはつけない」平畠啓史の今

中西正男芸能記者
サッカーへの思いを語る平畠啓史

 スカパー!の「平畠会議」「平ちゃんの『ほな行こか。』」などのサッカー番組を持ち、J3の試合では実況まで務めている平畠啓史さん(50)。圧倒的な知識量と熱意でサポーターから厚い支持を受け、芸能界ナンバーワンのサッカー通とも呼ばれています。「今は仕事の9割はサッカー」と話す平畠さんですが、なぜそれほどまでにオファーが来るのか。そして、サッカーファンから愛されるのか。そこにはサッカーにとどまらず、広く通じる哲学がありました。

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サッカー漬け

 本当に、本当にありがたいことに、今はサッカー関連のお仕事をたくさんさせてもらっています。だいたい、仕事の9割はサッカーです(笑)。サッカー選手以外で、こんなにサッカー漬けというのはなかなかないんじゃないかと思うくらい…。本当にありがたいことです。

 スカパー!でJリーグのハイライト番組を10年やらせていただいて、スカパー! でいうと「平畠会議」「平ちゃんの『ほな行こか。』」。Jリーグのインターネット配信番組「ひらチャンねる」。DAZNでのJ3ゲームの実況もさせてもらってますし、NHKのBSでサッカー番組に呼んでもらったり。あとは雑誌のサッカーダイジェストやサッカーマガジンにコラムを書いたりというのが、日常的にやらせてもらっているお仕事です。

ファンを一人でも減らしたくない

 ただね、もちろん、僕が何かを言ったところで日本代表が強くなるわけでもない。僕が何をしたところでどうにもならないのかもしれません。ただ、勝手ながら、ずっと思っていることが一つありまして。それが“Jリーグに来てくれるお客さんを一人でも減らしたくない”ということ。この気持ちだけはすごく強いです。

 もちろん、新しいお客さんにも来てもらいたい。ただ、そこを狙うんだったら、もっと売れてるスターさんがテレビに出てサッカーの話をした方が絶対に効果があると思います。それは僕がやっても効果は見込めないと思いますんで(笑)、僕はとにかく今いる人たちに、そのままサッカーを好きでいてほしい。自分にできることがあるとするならば、一番はそこなのかなと。

夢を見続けるために

 そもそも、僕らが子どもの時には日本にはプロのサッカーがありませんでした。社会人のサッカーを見に行ったりはしてましたけど、お客さんが400~500人とか本当に寂しいスタジアムでした。それが今は、場所によっては、何万人単位のお客さんが入る試合を毎週やっている。

 さらに僕の感覚からすると、まさか日本がワールドカップに出られるなんて思っていなかったですし、当たり前みたいに出ているのが信じられないというか。今の当たり前が、僕にとっては夢の世界。これが続いてほしい。続かせていきたい。おこがましいですけど、そんな感じなんです。

漏れていけばいい

 年間で500~600試合。家で映像で見る分で、そんなくらいですね。あと、スタジアム観戦が年間20~30試合。37歳からサッカー関連のお仕事をさせてもらっているんですけど、そこから毎年そのペースで見ています。あと、試合のフォーメーションや流れ、シュートの経緯、お客さんが何人入ったかなどを書きとめたノートが毎年8冊くらいできていきます。

 最初はね、なんというか、サッカーの番組に出してもらっても、良いことを言おうとか、お客さんが喜びそうなことを言おうとか、自分がサッカー好きなのを分かってもらおうとか、そういう気持ちでいたと思うんです。だけど、途中から「ま、勝手に、漏れていけばいいか」と思うようになったんです。良いことを言いにかかるんじゃなく、ホンマに好きやし、見てるし、そういったものが自然に漏れていく。それでいいんだろうなと。そうなると、さらにサッカーのお仕事をいただけるようになった気がします。ま、逆に言うと、ホンマに好き、ホンマに見ているということがなかったら、それはできないんでしょうけどね。

 自分もサッカーが好きなので、番組を見ていて「あ、この人、あんまりサッカー好きちゃうな」とか「あんま、見てへんな」とか正直、感じる時もある。だったら、自分がしゃべらせてもらう場があるならば、見ている人にそうは思わせたくないなと。じゃ、どうするのか。それは、見るしかないし、行くしかない。じゃないと、ウソになるというか。お客さんの目はシビアですからね。

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サッカーにウソはつけない

 それは、なんて言うんかな、自分がその、芝居できる人間だったら、それっぽいことを芝居でやればいいと思うんですけど、自分はウソがつけるような人間ではないので、すぐバレる。だから、ウソついたらアカンなと。

 そして、何より、サッカーにはすごく恩義を感じています。もちろん、仕事をさせてもらって、お金をいただいている。それも、とてもありがたいことです。ただ、それ以外にも、正味、人との出会いやたくさんの楽しさももらっている。なのに、そこを裏切ったら、自分って、ナンボほどしょうもない人間やねんと。それはすごくありますね。

得をするのは自分ではなく、サッカー

 あとね、これは人がどうこうということではなく、自分自身の考えとして決めていることがありまして。自分を良く見せるために、サッカーを使わない。サッカーを売らないということです。例えば、テレビに出してもらった時に、有名選手とご飯に行ったとか、実はプライベートではこんなヤツなんですよとか。そういう感じのことを僕は絶対にしたくないし、やらないようにしています。サッカーを使って、自分に注目を集めるというか。

 今の生活、本当にありがたいという思いしかないです。もし、自分がもう一回、30歳くらいに戻って、これまでと同じようにスタジアムに行き、サッカーを見ていたとしても、50歳で今みたいな状況になっているか。それは全く分からない。偶然もあるし、運もあるし、縁もあるし、いろいろな要素が絡み合って、たまたま今になっている。これってホンマにありえないことだし、だからこそ、そういう意味でも、感謝せなアカン。そして、エエ加減なことはしたらアカンと思うんです。

本を出して思うこと

 日本全国にクラブがあって、それぞれに本当に魅力があるし、サッカー以外にもスタジアムに行けば楽しいことがたくさんある。そんなことを少しでも知ってもらえたらと思って、サッカー本「平畠啓史 Jリーグ54クラブ巡礼 ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方」を出したんです。

 これもね、もちろん、僕の本ですし、いっぱい売れた方がうれしいというのはありますけど、あくまでも主役はサッカーであって、いっぱい売れたことによって、僕というよりも、サッカーが得をしてほしい。これは心底、そう思うんです。

 ただ、本である以上、売れたら印税が入ってくる。そうですわね…。なんか、エエ格好みたいな話ばっかりになりますけど、ホンマにぶっちゃけ言うと、書く前は、これくらい売れたら車が買えるなとか、そんな計算をしていた部分もあるにはあったんですけど(笑)、バタバタと大変だった中、皆さんに支えてもらってできた本やったんで、もうその時点で浄化されたというか。この本が生まれて、読んでくださった方が読む前よりも少しでもサッカーが好きになってくれたらそれで十分。そんな気持ちになっていったんです。

 …ま、ただね、そら、印税は売れたら必ず発生するものですから。受け取らないというのも逆に不自然ですから。そこは、フツーに、きれいに、思いっきりいただきますよ(笑)。別に悪いことでもないですから。ただ、ま、もしお金が入ったら、結局はそれでスペインかどこかにサッカーを見に行くことで、すぐに消えるとは思いますけどね。

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(撮影・中西正男)

■平畠啓史(ひらはた・けいじ)

1968年8月14日生まれ。大阪府出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。小学4年からサッカーを始め、高校3年時には主将としてチームをインターハイ出場に導く。94年に山口智充とお笑いコンビ「DonDokoDon」を結成。サッカーの知識を生かし、スカパー! のJリーグハイライト番組で10年にわたりMCを担当。プライベートも含めJリーグの試合会場に足しげく通い、芸能界ナンバーワンのサッカー通として知られる。スカパー! の「平畠会議」、「平ちゃんの『ほな行こか。』」、Jリーグのインターネット配信番組「ひらチャンねる」、DAZNでのJ3ゲームの実況なども行っている。著書「平畠啓史 Jリーグ54クラブ巡礼 ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方」が発売中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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