「ABCお笑いグランプリ」優勝の「ファイヤーサンダー」、原動力は“コンビ内パワハラ”!?

「ファイヤーサンダー」の藤田崇之(左)と崎山祐

 「ダウンタウン」や「ナインティナイン」らを輩出してきた若手芸人の登竜門「ABCお笑いグランプリ」で優勝したお笑いコンビ「ファイヤーサンダー」。ツッコミの藤田崇之さん(30)とボケの崎山祐さん(27)が吉本興業の芸人養成学校で出会い、互いに別のコンビでの解散を経験してから「ファイヤー…」を結成。地元・関西を離れて上京し、フリーを経て、現在のワタナベエンターテインメントに所属という決して順風満帆ではない芸人生活を送ってもきましたが、栄冠の裏には激流にもまれてきたからこその強い絆がありました。

優勝から1週間

藤田:8日に「ABCー」で優勝して、300件以上「おめでとう!」という連絡が来ました。どう考えても、人生で一番うれしい日でしたね!

崎山:なかなか大きな“山”のない芸人生活だったので、今回が圧倒的に大きな出来事でしたね。小学生の時、大阪から転校してきた子が非常にお笑いに詳しくて、その子の影響でお笑い番組をたくさん見るようになったんですけど、ずっと見てきた「ABCー」でまさか自分が優勝するとは思ってもみなかった。なので、最初、優勝者として自分たちの名前が呼び上げられても、ピンとこないというか「あ、勝ったの…?」みたいな感じになってました(笑)。

藤田:確かに、まさかの展開でしたね。お笑いを目指したきっかけで言うと、僕はいとこが(お笑いコンビ)「さらば青春の光」の東口(芸名・東ブクロ)でして。向こうの方が先にお笑いを始めていて、ちょいちょいテレビにも出ていたんです。そして、2012年に「キングオブコント」で決勝にも行った。本当にナニな話なんですけど、家も近所だったし、昔からよく遊んだりもしていたんですけど、ものすごく静かな性格で、どちらかというと、親戚の中では僕が一番明るいというか、面白いというか(笑)、そんな感じだったんです。なので「いとこができるんやったら、僕もできるんじゃないか」と思って、お笑いの世界に飛び込んだという流れでした。

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ウエットスーツの肩に…

崎山:…ま、今の話を聞いてもらっても、そのニオイがお分かりいただけるかとも思うんですけど、なんと言いますか、この人はお調子者というか。以前、彼はダイビングサークルに入っていたんですけど、ウエットスーツの肩のところに刺しゅうを入れていたんです。笑いをつかさどる長(おさ)という意味で“笑長”と(笑)。その写真を見た時には、ゾッとしましたけどね。

藤田:…イヤイヤ、ま、誰にでもある、そんな時期ですよ!

崎山:ないわ。誰にもないわ。

藤田:誰も、何も、つっこんでくれなかったんで、みんな当たり前のように僕が笑いの長であることを認めてくれていると思っていました(笑)。ま、いとこの存在がなかったら、単にそうやって明るい感じの人ということで、芸人までは目指さなかったかもしれないですね。実際、大学は大阪教育大学だったんですけど、教員採用の試験も受けていましたし、何もなければ、そのまま学校の理科の先生になっていたと思います。人生、何がどうなるか、分からないものですけど。

絶対に、こんなはずはない

崎山:ただ、入ってからも、もちろんなかなか簡単にはいかない世界ですからね。特に大阪時代は、全く評価されませんでした。互いにコンビ解散を経て、2014年に「ファイヤーサンダー」を結成したんですけど、本当に何も動きがないというか、成功の足掛かりもないままの時間が続きました。ただ、自分の中で「絶対に、こんなはずはない。何かしら納得のいくものを出すまでは辞めたくない」という思いはずっとあったんです。東京に出てきて、この秋で丸3年になるんですけど、大阪の時には全くなかったテレビ出演も去年からさせてもらえるようになり、今回「ABCー」も取ることができた。少しずつ、手ごたえを感じられるようになってきました。

藤田:僕らは互いに解散を経験してますしね。もう失敗もできないしという思いは強かったかもしれませんね。僕としては次にコンビを組むとしたら“面白いネタを作れる人”か、“人間自体が面白い人”か、どちらかしかないなと。コンビを組む前から、彼とは仲良くしてましたし、ものすごく面白いネタを作ることは知っていたので解散を機に組むことになったんです。今でも、ネタは100%相方が書いてますし。ただ、ただ、ただ…、めっちゃ厳しいんです。

崎山:厳しいというか、必要なことを言ってるだけやからな。そのおかげで「ABCー」も取ることができたわけやし。

藤田:それを言われたら、そら、ホンマにそうなんですけど(笑)。ただ、一発目から、なんともキツイ言い方でくるんですよ!

相方が6万、僕が94万

崎山:いや、一発目じゃないから。それはお前がその前を聞いてないだけで、もっと前から同じことを言ってるのに、それを聞いてないから、そう言わざるをえないだけで。そもそも、お前がアホみたいな顔で寝ている間にオレがファミレスで必死にネタを作ってるわけやん。

藤田:これです!まさに、この言い方です!皆さん、しっかりと目に焼き付けてください。今のです!ま、実際、ネタを作ってくれているのは相方なんで、例えば、公園でネタの練習をするために集まったとしても、相方から「今回はこんなネタで…」という話があるまでは、何も始まらない。なので、相方がしゃべりだすまで、最長3時間待っていたこともあります(笑)。

崎山:いや、なんとなくは思い浮かんでいても最後まで固まりきっていないというか、新たに思いついて練り直すこともあるやんか。それを公園をウロウロしながら、必死に絞り出してるんやから。お前は何も考えずに待ってたらエエだけなんやから、非常に負担の少ないポジションやと思うけどなぁ。ふと見たら、子どもたちと楽しそうにサッカーやってたりもするし。

藤田:イヤ、何時間もベンチで座ってたら、そら、子どもたちも気になって、ボールをこっちにパスしてきたりするわけよ。そうなったら、返すやん。そうなって仲良くなったりはしたけど、それでも、オレも純粋にサッカー楽しんでるわけないやん(笑)。そら、ボール蹴っても気が気やないですよ!

崎山:そのわりには楽しそうにしてたけどなぁ(笑)。「ABCー」の優勝賞金は100万円なんですけど、それでいうたら、僕だけファミレス代を払って1人でネタを考えているわけやし、賞金の取り分も、個人的には相方が6万、僕が94万で妥当だろうなと思うんですけど(笑)。

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何があっても謝らない!

藤田:いや、ま、今回の「ABCー」はしっかりとネタ勝負やったから、相方に助けてもらうことが非常に多かったですけど、ここから、もしバラエティー番組とかにちょこちょこ出してもらえるようになったら、こっちが崎山のおかしなところをいじって、笑いにするということを頑張りますから!

崎山:…それはまただいぶ先の話ちゃうか。まずはお調子者でつっこまれやすいお前がいろいろな先輩方にいじられるという方がコンビを知っていただくには早いとオレは思うけどな。「三四郎」の小宮さんにしろ「バイきんぐ」の小峠さんにしろ。そういう流れが主流やと思うんやけどな。

藤田:ま、そう言われたらそうやな…。そらそうなんやけど、もうちょっと潤いのある言い方ができないもんかね!まだ厳しいのはまだ百歩譲って意味があるとしても、あとね、相方は何があっても謝らないんです。以前も、コント中に小道具を出すのを相方が忘れて、それがないがゆえに、ちょっと話の筋も変わってくるみたいな感じになったんですけど、それでも謝ることはないですからね!それは100%、相方が悪いですから、それは謝った方がいいと思うんですけどね。いい機会やから、今、謝ろう!今!謝れる?

崎山:いや、ま、そんなことやあんなこともあったおかげで、全てが糧になって「ABCー」が取れたわけで…。

藤田:もう限界や!(笑)。

(撮影・中西正男)

■ファイヤーサンダー

1987年12月16日生まれで大阪府出身の藤田崇之(ふじた・たかゆき)と、91年3月11日生まれで和歌山県出身の崎山祐(さきやま・ゆう)のコンビ。ともに吉本興業の芸人養成学校・NSC大阪校34期生で、それぞれ別のコンビを経て2014年に「ファイヤーサンダー」を結成する。大阪の吉本興業を拠点に活動をしていたが、2015年に上京し、フリーで活動後、ワタナベエンターテインメントに移籍。今年7月8日に決勝戦が行われた「第39回ABCお笑いグランプリ」で優勝。お笑いコンビ「さらば青春の光」の東ブクロは、藤田の母方のいとこにあたる。「ABCお笑いグランプリ」の決勝ファイナルステージで披露したネタ「無人島」はワタナベお笑い公式チャンネル(https://youtu.be/Nj3IHplVQnU)でも見ることができる。