今も生きる「ET-KING」いときんさんの言葉

向かって左がコシバKEN、右がKLUTCH

 今年1月にリーダーであり曲作りも担当していた、いときんさんが亡くなり、5人となったヒップホップグループ「ET-KING」。2年ぶりのニューアルバム「LIFE」が発売されるなど、新たな一歩を踏み出しつつあります。2014年にはメンバーのTENNさんを失いましたが、メンバーのKLUTCHさん(39)は「いときんの『生きろ』というメッセージを伝えるのが僕らの使命」と思いを振り絞るように話しました。MCのコシバKENさん(38)も「いときんから『生き様を歌わないとアカン。だから、カッコ悪い生き方はするな』と言われたことが胸に残っています」と語りました。

アルバムに込めた思い

KLUTCH:新しいアルバムを作ろうとなったのがちょうど1年前。去年の4月でした。2016年に出した前作のアルバム「Ideologie」はTENNが好きやったアナログヒップホップにこだわった作品で、いときんがプロデュースして、TENNへの思いもたっぷりと込めて作りました。ただ、今回のアルバム制作中に、いときんの病気が分かりまして。おのずと、作り始めた時よりもメッセージが強くなった曲もありますし、タイトルにもあるように「LIFE」ということをより一層考える流れにもなりました。

コシバKEN:今回のアルバムには全部で7曲入ってまして、メンバーそれぞれが作詞もするんですけど、みんなから“命”とか“人生”とか“生きる”とかいう言葉が出てきました。ホンマやったら、言葉とかテーマがかぶらないように整理していかないといけないんですけど、もともとTENNが天国に行って、僕らの中にそういうことを考える意識がとても強くなっていた上に、いときんの病気も重なった。なので、そういう言葉がどうしてもたくさん出てくるのは今の自分たちを実際に表してもいるんだから、あえてダブりを解消したりせず、このままでいこうと。そして、最後にKLUTCHが「タイトルはシンプルに『LIFE』でいいんじゃないか」と言ってくれて、決まったんです。

言葉の重み

KLUTCH:ま、こんなこと、なかなか体験できることでもないですし、だからこそ、残された僕らしか伝えられないメッセージもあるはずだと。特に、いときんは「生きろ」というメッセージを強く残していった。彼が体を張って教えてくれたことを無駄にしたくないし、周りの人に伝えていければと思います。TENNといときん、2人はいなくなってしまいましたけど、僕は19年間一緒に音楽をやってきた中で、今でもTENNやいときんのイズムというか、それがあるから分かったこと、成長できたことがたくさんある。なので、今でもきれいごとやなく、本当に7人でやっている感覚なんです。

コシバKEN:いときんがいなくなって3ヵ月弱ですけど「あ、もういないんだな…」という思いは、毎日こみ上げてきます。特に、最近はアルバムリリース間近で毎日アルバムの話もするし、毎日何回も聴くし、そこにはいときんの声が入ってますから。正直、寂しくもなりますけど、この間、TENNのお母ちゃんのところにアルバムをみんなで届けたんです。そこで、お母ちゃんの気持ちとか、こちらが考えていること、しっかり話すことができたんですけど、その時にお母ちゃんが言ってくれたんです。「いつまでも悲しんでたらアカンで。これは試練なんやで。いときんとあの子があんたらに課した試練やから、あの子らの分まで伝えていかなアカン」と。…これね、つらいと思うんですよ。自分の息子がいなくなっている中、一番の身内であるお母ちゃんがこういう言葉を言うのは、心の中、ものすごく痛いことやと思うんです。だけど、その人がそんなことを言ってくれる。それが、オレたちにとっては財産であるし、一歩を踏み出す力になったし、やらなアカンという号砲にもなったと思います。だから、悲しいのは毎日悲しいですけど、精いっぱい、それをパワーに変えるように考えています。

KLUTCH:同じ言葉でも僕らが歌う言葉と、他で流れている曲の言葉では、これは意味が、重みが、強さが違ってきているのかなと。生き様の部分で。

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カッコ悪いことはするな

コシバKEN:僕はいときんに本当にいろいろ怒られてきましたし(笑)、いろいろ教えてもらったことがたくさんあるんですけど、物を作ることが大好きな人でした。物を作って人を喜ばせるのが大好きな人。今回のアルバムに関しては闘病中というのもあったんで、いときんも今まで自分がやっていた部分を僕らに任す形という部分もたくさんありました。レコーディング全般、サビのメロディー作り、歌詞全体を見渡してのとりまとめなどなど、これまでいときんがやっていたことをこちらがするようになった。その中で、やっぱりこっちは迷うというか「これ、どっちやろ?」と思うこともたくさんあるんです。そんな時に、いときんが言ってくれたのは「生き様を歌わなウソやぞ」と。それが今、自分の中の判断基準にもなっています。そして、さらに「ということは、自分の生き様が歌になるんやから、カッコ悪いことはするな」と。

思いのバトン

KLUTCH:いときんが亡くなる1ヵ月くらい前ですかね、スタジオにふらっと遊びに来て、僕と2人になる時があったんです。いろいろと話してたら、いきなり「これあげるわ」と言って、この金のブレスレットをくれたんです。「友達の証やで」と。その時はまさか死ぬとは思ってなかったんで「何を今さら言うてるんや」と思ってたんですけど、亡くなってから、ふと、うちの事務所の社長の腕を見たら色違いのをつけてたんですよ。互いに「…あれ?」となりまして、聞いてみると同じことを言っていたみたいで。やっぱり自分の家族だったり、メンバーのことだったり、「頼むわな」という思いがあったんかなと…。今となったら聞けないし、分からないんですけど。いときんにはまだ小さい息子と娘がいて、奥さんじゃ伝えきれない部分もあるだろうし、奥さんと出会う前のことは僕らが話すべきだろうし。

コシバKEN:せめて、息子がしっかりと男としての話ができるようになるまでは僕らも一線でやっておかなアカンなと。「この『ET-KING』というものはお前のおやじが作ったものなんやぞ」と息子に言うためにも。

KLUTCH:さびつかせるわけにはいかないですね。ま、いときんがいなくなって、いろいろなニュースで流れたじゃないですか。その中で、どうしても、いときんのいいところがクローズアップされがちになるんですけど、ま、そりゃ、当然なんですよ(笑)。死んでしもてるんやから。ただ、僕らはそばにいて「なんでやねん!」と思うところもたくさんありましたし、そして、伝えられている以上に、ホンマにやさしい男でもあった。誰よりも人間臭い男でした。そこを知ってるのは、やっぱり僕ら。そんな話をあいつの息子だったり娘にする時が来たら、それは僕らがやるべきことなんやろうなと。

コシバKEN:おかげさまで来年20周年を迎えることになるんですけど、それも通過点というか、子どもたちが大きくなるまでは頑張らないと。そんな思いも、今、力になっています。

KLUTCH:息子が大人になった時、これ(ブレスレット)をあげようと思っています。そして、20歳になった時に「お前のお父ちゃん、こんなヤツやってんで」と言いながら酒を飲めたら、その酒はホンマにおいしいやろうなと思います(笑)。

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(撮影・中西正男)

■ET-KING

大阪の福祉専門学校で出会った、いときんさん、TENNさん、KLUTCHが99年に「ET-KING」を結成。その後、センコウ、BUCCI、DJ BOOBY、コシバKENが加入する。2005年からは大阪・大国町でメンバー全員が共同生活をしながら音楽活動を行い、「ギフト」や「愛しい人へ」などのヒット曲を生み出す。2014年、「ET-KING結成15周年記念全国ツアー おまえとおったらおもろいわ!」の最終公演をもって、活動を一時休止。その間にTENNさんの急逝という悲報が届くが、2015年7月から活動を再開する。2016年にはアルバム「Ideologie」をリリース。2017年にいときんさんの肺腺がんが発覚。同年12月に行われた大阪・Zepp Nambaでのライブツアーでは元気に歌う姿を見せたが、今年1月31日に38歳で逝去。4月25日に約2年ぶりとなるアルバム「LIFE」を発売。さらに、6月22日から福岡、名古屋、東京、大阪とツアーも開催する。今月から初の冠番組となるABCラジオ「ET-KINGのえべっさんでぇ!」(日曜・後11時)もスタートしている。