清水健アナ、亡き妻に聞きたい「これで合ってんのかな?」

著書「112日間のママ」が話題の清水健アナウンサー

読売テレビ「かんさい情報ネットten.」でメインキャスターを務める同局の清水健アナウンサー(39)の著書「112日間のママ」が12万部を超えるベストセラーとなっています。妻・奈緒さんが乳がんと闘いながら、長男を出産。しかし、母親になって112日。奈緒さんは29歳の若さで天に召されました。「悲しみにピリオドなんてない。カッコいい言葉みたいに聞こえますけど(笑)、ホンマにないんです。あってくれたらいいんですけどね」と、いまだに揺れ続ける胸の内を、一つ一つすくい取るように言葉に置き換えました。

今でも答えは出ていない

12万部。本が売れない時代、本当に、本当に、ありがたいことだと思います。でも、今でも、ホンマに正直な話、あらゆる思いが渦巻いています。本を出したのは正解だったのか。意味はあったのか。自分の中でも、「出してよかった」という自分と「ホンマにこれでよかったんか?」という自分がいて、日々、まとまらない話し合いをしているような状況でもあります。

自分がこういう状況になって、心底感じたんです。同じように、あるいは、もっと、もっと大変な中で闘っていらっしゃる方が世の中にはいっぱいいる。これは、文字にすると非常におこがましい話になりますけど、そういう人たちの声を自分の体験を通じて代弁できればなと。ほんの、ほんの、ほんの、少しでも。また、自分は日々そういうことを発信する仕事をさせてもらっている。そう考えると、本を出すということは自分がやらなければならないことなんだ。そう、自分でグッと強く思うようにして、思い切って、本を書いたんです。出すことによって、伝わるものは絶対にあるはずだと。

ただ、それと同時に、本を出すというのは“さらす”ことにもなります。もう、いなくなってしまった人間の、一番プライベートな部分を僕の独断で。それをホンマのホンマのホンマ、妻はどう思っているのか。自分はとんでもないことをしてしまったんじゃないだろうか。キャスターではなく、一人の男、清水健として思います。今でも、しっかり両方の面があるんです。今でも、答えは出ていませんし、これからもずっと考えていくんだと思います。

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何回もやめようと思った

ただ、たくさんの方に手に取っていただき、実際、いろいろな反響をいただいています。一番うれしいのは、読んでから「今一度、子供の顔をよく見てみました」とか「夫のことが久しぶりに愛おしく思えました」という声ですね。純粋に“大切な人を思ってほしい”というのが最大のメッセージ。なので、ただただ、皆さんにとっての大切な人を意識する時間につながれば、それ以上のことはありません。

…でもね、書くという作業はつらかったです。本を意識しだしたのは去年の夏。闘病中は、ずっと日記という形で記録は残していたので、書く“材料”はある。ただ、何回も葛藤で立ち止まりました。闘病中は必死にまっすぐ走る、これだけだったんです。でも、書くというのは立ち止まること、もう一回そこを繰り返すことなんです。これがつらかった。何回もやめようと思いました…。

あと、これはどこでも言えなかったことなんですけど、書いていく中で出てくるのはね、ホンマ、後悔ばっかりなんですよ。もっと妻のためにしてやれたことがたくさんあったはずだと。29歳で人生を終えた一人の女性に対して、結婚してからの1年9ヵ月。もっと、もっと、やれることがあったと。「ここは、自分でもよく頑張った!!」みたいなことは、一つもないんです。だから、書きながら「ごめんな…」しかない。きれいごとやなく、それしかないんです。

泣いたらアカンで!

悲しみにピリオドなんてない。カッコいい言葉みたいに聞こえますけど(笑)、ホンマにないんです。あってくれたらいいんですけどね…。1年以上経っても、何にも変わらないです。それを知りました。変わらなアカンのですけどね。

息子は1歳5ヵ月。日に日に成長しますし、それはもちろんうれしいことです。

「ten.」が始まって僕がテレビ画面の中で「こんにちは」ってあいさつしたら、息子も「こんにちは」ってしているらしいんです。僕がテレビに映る度に「あー、あー」と言葉を発している。一緒に散歩もできるようになりました。うれしい。でも、その分「これを一緒に喜びたかったなぁ」とも思います。この喜びを共有できない。うれしいことがある度に、つらさも一つ一つ噛みしめます。…そんなん、思ったらダメなんでしょうけどね、息子にも悪いし。

去年の10月、息子の1歳の誕生日。めでたい日なんですけど、僕は悔しくて泣いてたんです。そうしたら、妻の主治医をしてくださっていた先生からメールが来たんです。

「今日は奈緒ちゃんが頑張った日だから、泣いたらアカンで。奈緒ちゃんを褒めてあげて」と。そのメールを見て、つらいけど、ホンマにつらいけど、自分はそうやって生きていかないとダメなんだなとも思いました。

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いつの日か褒めてもらいたい…

もしも、もしもですけど、今、妻と話ができるなら「これで合ってんのかな?」と聞いてみたいです。本当の話、この答えは一生聞けない。だからこそ、それを聞いてみたいです。本のことも、子供のことも、生活の一つ一つにいたるまで、全部。「これで合ってんのかな?」と。

これから先、息子にはつらいことがいっぱいあると思います。どんどん物事が分かっていく中で、ママがいないということを僕が教えなきゃいけない。それをどう伝えていくのか。「お前のママはこうだったんだ」ということを伝えていくのが、今の僕にとって大切な仕事だと考えています。

その一つとして、息子には「自分より、周りの人」。これを言える子になってほしいと思っています。…これは、妻の口ぐせだったんです。我が妻ながら、ホンマに素敵な考え方やと思いますし、そこは息子にも一番に伝えていきたいなと。

重たい話ばっかりで本当に申し訳ないですけど…(笑)、こんなに悲しい思いをしたことはないです。ただ、こんなに人が温かいと知ったのも初めてでした。

今、妻がどう思っているのか。これも、絶対に答えが出ない中、こちらが一方的に考え続けるしかないんですけどね。僕の考えで本も出して、日々、息子も僕の考えで育てていって。僕が勝手にやっていることばかりなんですけど、いつの日か、もし、もし、妻が「よく頑張ったね」と褒めてくれたらいいな、と思います。

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■清水健(しみず・けん)

1976年4月19日生まれ。大阪府堺市出身。中央大学卒業後、2001年に読売テレビに入社。「どっちの料理ショー」などの情報バラエティー番組を担当し、2009年から夕方の報道番組「かんさい情報ネットten.」のキャスターに。2013年にスタイリストだった奈緒さんと結婚。翌年10月には長男が誕生するも、2015年2月に奈緒さんが乳がんで亡くなる。熟考を重ねた末、自身の体験を綴った著書「112日間のママ」を今年2月に出版。今秋には海外で翻訳本の出版も予定されるなど、大きな反響を呼んでいる。