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「ET-KING」リーダー、TENNさんと別れた先にあったもの

中西正男芸能記者
「ET-KING」リーダー・いときんさん

昨年9月、メンバーのTENNさんが亡くなり、今年7月から6人で再始動したヒップホップグループ「ET-KING」。来年4月30日に、再始動後初のワンマンライブを大阪城野外音楽堂で開催します。リーダーのいときんさん(36)は「TENNが逝ってから半年ほどは、つらすぎて記憶がないんです。僕らはメンバー全員で共同生活をしてきたので、ずっと“おって当たり前”の関係やった。それが“おるのは当たり前ではない”という考えに変わりました。でも、今はみんなでいる幸せをより一層、感じられるようにもなりました」と思いを振り絞るように話しました。

あいつのことばかり考えて…

ホンマに、去年、そして、今年はいろいろありました。

2年前から、自分らで作った大阪のスタジオを拠点にして、音楽も、セールスも、契約も、何もかも自分らの手でやっていこうと。それはTENNも一緒に決めたことやったんですけど、とにかく最初から最後まで自分らが手がけたものを皆さんのところに届ける。それをやろうとしていた最中に、あいつが逝ってしまいました。

TENNがおらんようになってからは、正味、ホンマに、しんどかったです。今振り返っても、死んでからの半年くらいは、覚えてないんです。記憶がとびとびにしかないんです。つらすぎて。家族の顔も、仲間の顔も、子どもの顔も見られてない。あいつのことばっかり考えて。せやけど、吹っ切れたというか、明らかに変わったのが、一周忌の時にTENNの母ちゃんと話した時でした。

母ちゃんに動かしてもらった

こっちが励まさなアカンのに、逆に母ちゃんが言うてくれたんです。「大丈夫やで。離れてないから。また会えるし。ちょっと遠いところにおるだけや」と。

TENNそのままみたいな母ちゃんにそう言われた時、なんでしょうね、スーッと気が楽になったんです。無理してそう思い込むとか、頑張って納得するというのではなく、心から「あ、ホンマにそうやねんな」と思えたんです。その瞬間、ずっと続いた悲しみがやっと止まりました。それはこっちがやるべきことやのに、情けない話なんですけど。

僕の心は、TENNの母ちゃんに動かしてもらった。そして、今回、ライブの日を4月30日にしたのにも“もう一回、時計の針を動かす”という思いを込めたんです。というのは、現時点で「ET-KING」の最後のライブとなっているのが、2014年4月29日のフェスティバルホール公演。2年空いてしまうことになったけど、もう一回、スタートする意味を込めて、その間の時間を埋める意味を込めて、始めるなら4月30日やと考えたんです。

あと、場所を大阪城野外音楽堂にしたのは、天井のないところでやったら、より一層、聞こえやすいかなと。天に、TENNに届くように、外に決めました。

新しいことも始まってる

僕らはずっと大阪・大国町でメンバーみんなで共同生活をしていたこともあって、どこかで“みんながおって当たり前”と刷り込みのように、無条件に思ってきたんです。ただ、今回、TENNのことがあって、それがガラッと変わりました。ホンマに、ホンマに。“いるのは当たり前ではない”。そう、心底思うようになりました。切なくもありますけど。となると、より一層、好きなもんとおれる時間というのが、とんでもなく貴重で、幸せなものやと思えるようになったんです。

それとね、ヘンな話でスンマセンけど、この前、生まれて初めてゴルフしたんです。周りのお世話になってるおっちゃんが打つやつ(ゴルフクラブ)やらくれて始めたんですけど、アルバムを作ってる最中にも、みんなで息抜きに打ちっぱなしに行ったりね。細かいことですけど、時間は進んでるし、新しいことも始まってる。今は、それを感じる毎日ですわ。

あと、最近すごく思ったのが、人間って目の前にニンジンをぶら下げられたら、こんなに頑張れるんやと(笑)。いや、というのは、今、昔からの友達がスタッフをしてくれてるんですけど、彼らが今年の年末に城崎旅行に行くように段取りをしてくれたんです。メンバーの家族もあわせてみんなで。それを聞いてから、アルバム制作がはかどる!!はかどる!!(笑)。

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汚くて、きれいな音

デジタル全盛の今ですけど、ホンマに自分らが気に入った“汚くて、きれいな音”を自分らで売っていきたい。それはTENNも言ってたことですし。今となっては新たな言葉は聞けないですけど、あいつが言っていたこと、そして、言うであろうことをやっていくのが僕らの役目やと思ってます。

だからね、そのためにも、さらに馬力を入れるためにも、一日も早く、来年末の旅行も決めてくれへんかなと。それがあったら、さらにメチャメチャ頑張りますよ(笑)。

■いときん

1979年3月3日生まれ。兵庫県三田市出身。旧芸名はイトキン。高校卒業後、大阪の福祉専門学校へ進学し、99年にTENNさん、KLUTCHと「ET-KING」を結成する。その後、センコウ、BUCCI、DJ BOOBY、コシバKENが加入。2005年からは大阪・大国町でメンバー全員が共同生活をしながら音楽活動を行い、『ギフト』『愛しい人へ』などのヒット曲を生み出す。昨年4月29日の「ET-KING結成15周年記念全国ツアー おまえとおったらおもろいわ!」の最終公演をもって、活動を一時休止。その間にTENNさんの急逝という悲報が届くが、今年7月から活動を再開する。来年2月24日にはアルバム『Ideologie』をリリース。また、来年4月30日には再始動後初のワンマンライブを大阪城野外音楽堂で開催。アルバム初回限定盤の購入者、またはファンクラブ会員から抽選で2000人が無料で招待される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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