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志尊淳、“コネ”で仕事を取るのは難しいこと

中西正男芸能記者
来月には主演映画「先輩と彼女」も公開される志尊淳

テレビ朝日系「烈車戦隊トッキュウジャー」(2014年)で主演にあたるトッキュウ1号を演じ、子どものみならず、幅広く人気をゲットした俳優・志尊淳さん(20)。放送中のTBS系連続ドラマ「表参道高校合唱部!」(金曜・後10時)に続き、21日放送のフジテレビ系特別ドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(後9時)にも出演します。さらに、10月17日には主演映画「先輩と彼女」も公開。ブレイクの階段を猛スピードで駆け上がっていますが、階段一段一段には苦悩がぎっしりと詰まっていました。

1年間で180位→7位に

「これをやる!!」と決めたら、それがクリアできるまでとことんやる。どうも、それが小さな頃からの性分みたいでして(笑)。

小学生の頃、親が「武道を通じて礼儀を学んでほしい」ということで、剣道をやることになったんです。でも、正直なところ、僕は野球がやりたかった。だから、親に言って、剣道と野球をしばらく両方やってたんですけど、どっちつかずというのがイヤで…。本来、好きだった野球にしぼりたいと思ったんですけど、途中で剣道を投げ出すのもイヤなので、ちゃんと結果を出してから野球に専念しようと。なので、剣道に区切りをつけるために稽古に打ち込み、大会で優勝してから野球一本にしたんです。

中学に入ってからも、その性分はさらに強くなりまして。通っていた中学がかなり勉強に力を入れている学校だったので、テストの度に順位が張り出されるんです。クラス分けも成績順にされますし。入学以来、大好きな野球に没頭して部活が一番大事だったので、勉強の順位なんて気にせず、だいたい学年300人の中で180位くらいだったんです。

ただ、何回もテストが続く中で、生徒の中でも「上位のヤツって、やっぱりスゴイよな」みたいな空気が出てくる。それが強くなってくると、僕の中で、そこで勝手に自分の全てを評価されているような感覚になって、それがおもしろくないなと。なので、だったら、順位を上げようと思って、1年間で7位までは上げました。

この世界に入るモチベーションになったのも、この“スイッチが入ったら、とことんやる”という性分あってのことでした。野球部を引退して迎えた中学3年の夏休み、池袋で友達と待ち合わせをしていたんです。サンシャインの辺りで待っていたら、こちらをチラチラ見てくる大人がいる。中学3年の僕にとって、池袋に出るというのは結構怖いことでして(笑)、内心では「何だろう、この人…」とちょっとおののいていたら、その人が「スミマセン、芸能事務所の者なんですけど、興味ありませんか?」と話しかけてきたんです。

その瞬間は、まさに衝撃でした。一気に意識が変わったと言いますか。「うわ、本当にスカウトなんてものがあるんだ!!そして、自分でも、声をかけられるんだ!!」という。その日は友達と遊んでいても上の空で、もらった名刺を大事に握り締めてました。

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もっと名刺をもらいたい

それまで芸能界なんて意識はまったくなくて、そこと自分が交わるなんて、夢にも思わなかった。ただ、スカウトされて思ったのが「もっと、名刺をもらいたい」ということだったんです。なので、池袋の日以来、毎日走って体形を絞り込むようにもなりました。すると、また声をかけてもらえて、またモチベーションが高まる。そうなると、また頑張って走るというサイクルになりまして。野球部の時はキャッチャーだったので、かなりガタイもよかったんですけど、現役の頃から比べると、結果、18kgくらい絞りました。

そこから読者モデルみたいなお仕事もさせていただき、その仲間からワタナベエンターテイメントスクールのオーディションがあるのを聞いたんです。正直な話「ま、一日で終わるみたいだし、タダだし、一回やってみようかな…」くらいの気持ちで受けてみたんです。すると、ありがたい話、学費免除で入れるということだったので、部活も辞めたし、せっかくだし1年間やってみようと。

そして、スクール在学中だったんですけど、マネジャーさんから「このオーディションに行ってきて」と言われたのが、結果的に僕のデビュー作になった「ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン」だったんです。

まだスクールに3カ月しかいなかったんですけど、なんと、5次審査までクリアして合格することができた。つい最近まで、こんな世界に関わるなんて思ってもみなかったので、自分でも「こんなことがあるんだ…」という感じでした。

公演が終わって、またやりたくなった

ただ、つい最近まで普通に一般の学生として暮らしていたということは、当然、芝居も、歌も、ダンスもやったことがないということ。ミュージカルなんて、何一つ分からない。そして、僕の役が、アクロバットをしながらテニスをする役だったんですけど、アクロバットなんてさらにやったこともない。何から手をつけていいのか。頑張るにも、頑張り方の想像もつかない。そんな感覚でした。

宙返りなんてのはもちろん、逆立ちもできない中、みんなの前で受け身も取れずベチャッとぶざまに倒れて、笑われて、スタッフさんからは「何でできないんだ!!やってもらわないと困るんだよ」と言われて。本当に、悔しい思いもしました。

言うまでもなく、舞台に立つ以上はきちんとやらないといけない。そして、こちらがデビュー作だとか、ミュージカルやアクロバットの経験がないなんてことは見てくださる方にはまったく関係がない。それが正解なんです。ただ、それでも「じゃ、何で、何もできない自分を選んだんだ!!こっちからしたら、一生懸命やってるし」となるくらい、追い込まれもしました。ただ、すべてを跳ね返すには、やっぱり、やるしかない。文句を言ってるヒマもない。全体稽古の前にアクロバット教室に通ってレッスンを重ね、稽古の後は家の前で母親とお姉ちゃんにダンスのフリを見てもらうという日々が続きました。

そして、本当に、本当に、皆さんに支えられて、なんとか本番を迎えることができた。最初は何が分からないのかも分からないところからのスタートで「今から投げ出すわけにはいかないが、この公演が終わったら絶対に仕事を辞めよう」と思っていた。それが、少しずつ、少しずつ、ダンスで表現ができるようになり、芝居に気持ちが込められるようになり、演出家の方ともきちんと話ができるようになり、すべての公演が終わると、これが、また、やりたくなったんです。不思議なことに。

「テニスの王子様」は最初の作品でしたし、とりわけ自分への影響が大きかったですけど、基本的には、毎回どの現場も一回一回が真剣勝負で、すべてのお仕事がターニングポイントだと今も強く思います。常に、考えているのが「とにかく、この目の前の作品を全力で終わらせよう」ということ。その日、その日、できることを全力でやる。その積み重ねを必死にやっているうちに、今日になったという感じです。

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芸能界は9割がコネ!?

最初、スクールの説明会に行った時、とても印象に残っているのが「芸能界は9割コネクションです」という言葉でした。その時は「これから芸能界を目指す人に『9割コネ』と言ってしまうのがすごくおもしろいな」と単純に思ったんですけど、今はその言葉の意味が分かる気がします。

単にコネと言うと、すごくズルいというか、クリーンじゃないというか、そういうイメージが先に立ちますけど、言い方を変えると“つながり”だったり、“信頼”にもなるんだろうなと。まだわずかな年月ですけど、やってきて痛感しているのは、本当のコネなんてのは簡単にできるものではないということ。自分という人間を相手が理解してくださったうえで、やっと生まれるものですから。だから、語弊(ごへい)を恐れずに言うと、仮に「コネで仕事を取った」と言われても、僕は何とも思わないです。コネで仕事を取るなんて、ものすごく難しくて、ものすごく大変なことですから。

だから、結局の結局、僕ができることは「これからも全力でやっていく」ということなんですよね。…うわ、すみません、思いっきり、真面目に語りすぎてますよね…。ついつい、なんとも、申し訳ないです(笑)。

■志尊淳(しそん・じゅん)

1995年3月5日生まれ。東京都出身。2011年にワタナベエンターテイメントスクール卒業。舞台「ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン」(向日岳人役)で俳優デビューを果たす。ワタナベエンターテインメントの俳優集団「D-BOYS」のメンバー。2014年には「烈車戦隊トッキュウジャー」に主演し、さらに注目を集める。TBS系連続ドラマ「表参道高校合唱部!」(金曜・後10時)に出演中。21日放送のフジテレビ系の特別ドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(後9時)にも出演する。主演映画「先輩と彼女」も10月17日から公開される。身長178cm。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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