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連休中、観光客戻る京都~リベンジ消費とこれから

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
京都の夏の風物詩「鴨川納涼床」の準備も整っている(2022年5月1日・筆者撮影)

・東海道新幹線の利用客も増加

 東海道新幹線は、連休初日の4月29日に東京発の一部の列車で100%を超す混雑するなど、前年に比較すると指定席の予約状況も4倍程度となっている。JR東海は、旅客の好調な出足から、4月22日になって4月27日から5月8日に45本の臨時列車を追加で運転することを発表した。2018年の連休と比較すると指定席の予約状況は8割以上まで戻しているようだ。

多くの乗客で賑わう新大阪駅(2022年5月1日・筆者撮影)
多くの乗客で賑わう新大阪駅(2022年5月1日・筆者撮影)

・京都の華やかさも取り戻しつつある

 5月の大型連休の5月1日の京都は、多くの観光客で賑わっていた。飲食店やカフェなどでは、入店待ちの列ができているところも見られた。中心部の四条河原町周辺は、コロナ前のようにかなりの人混みとなっていた。

 京都市内では、4月には3年ぶりに祇園甲部の「都をどり」が開催された。5月1日からは先斗町の「鴨川をどり」も開催され、7月の祇園祭の山鉾巡行も3年ぶり開催が発表されるなど、次第に観光都市京都の華やかさも取り戻しつつある。

・連休中の京都旅行は、まだ大丈夫

京都市観光協会が発表した3月の京都市内主要ホテルの客室稼働率は45.0%となり、まん延防止等重点措置の解除などの影響から改善してきていた。京都市内のホテル従業員は、「東京方面から、ご夫婦や少人数での旅行も増えつつあり、夏に向けて本格的な回復に期待が高まっている」と言う。

 京都市内では、コロナ前にインバウンドを期待して新しくホテルが次々に開業した。その後、コロナになって、廃業や休業も一部に見られたが、今年に入ってきて観光客が戻るといった期待から新規開業や再開するところもあり、京都市内のホテル客室数には余裕があるようだ。

 宿泊予約サイトなどから見た連休中の京都市内のホテルは、ビジネスホテル、シティホテル、高級ホテルのいずれでも空室がある。5月1日夜の段階の予約状況では、これから連休中に思い立って京都市に観光に訪れても、まだホテルの確保は大丈夫そうだ。

3月以降のリベンジ消費に期待がかかる
3月以降のリベンジ消費に期待がかかる

・夏に向けて大きな期待が

 京都の夏の風物詩である「鴨川納涼床」も、5月1日から営業を開始している飲食店が多い。昼過ぎまでは生憎の雨模様だったが、午後からはいち早く楽しむ人たちの姿もあった。

 その床を持つ料理店が並ぶ先斗町だが、依然として「休業中」という張り紙や、「テナント募集」の看板がかかっている店舗が目立つ。

 ある料理店の経営者は、「3月の桜の頃から、通りを歩く人は戻ってきているように見えるが、近隣からの若い人が中心だ。桜の頃から、首都圏からの観光客の予約が入ってきているが、まだ本格的とは言えない」と言う。しかし、「首都圏などからの常連客が、2年ぶり、3年ぶりにやっと来れたとご家族などでやってきてくれるようになっている」とも言い、これからの祇園祭り、五山送り火などの開催へ、大きな期待する。

先斗町を歩いても、まだ休業中や貸店舗の看板が目立つ。(撮影・筆者)
先斗町を歩いても、まだ休業中や貸店舗の看板が目立つ。(撮影・筆者)

・リベンジ消費とインバウンド観光客

 紀尾井町戦略研究所株式会社が、2022年4月28日に発表した<KSI Web調査>「最初の緊急事態宣言から2年。まん延防止等重点措置解除後の新型コロナに対する変化は」によると、大型連休中に、1泊以上の旅行の予定がある人は8.1%、日帰りで人が集まりやすい場所にでかける予定がある人は10.3%と、依然として多くの人が観光に対して慎重な姿勢を示している。また、政府が4月8日からアメリカやヨーロッパ、アジアなどの国や地域の入国拒否を解除することを決定したことについては、支持しないが44.2%、支持するが29.5%、わからないが26.3%と、こちらも慎重な意見が多い。

 行動制限の緩和などが継続されていけば、次第に国内観光客は増加するだろう。この連休の人出が報道されることで、「自分たちも出かけよう」と考える人も増える可能性がある。京都市内でも祭りやイベントが再開されており、この夏にかけて観光客が急増する可能性もある。

依然として多くの人が観光に対して慎重な姿勢を示している。
依然として多くの人が観光に対して慎重な姿勢を示している。

・「国際観光都市・京都」はどう変化するか

 インバウンド観光客を待ち望む意見も、観光業界関係者から根強い。インバウンド観光客による経済効果は、コロナ禍前には、自動車部品や電子部品の輸出額と同等程度にまで拡大していた。コロナ禍によるインバウンド観光客の喪失は、大阪市や京都市の観光業界だけではなく流通小売業にも大きなマイナスの効果を与えた。

 しかし、こうした復興への不安の声も大きい。「観光復興が本格化することが明確になれば、再び外国資本が流入するのではないか。特に円安になっており、チャンスだと考える投資家が動くだろう。そうなれば、また同じことの繰り返しになる」と金融機関の職員は指摘する。また、京都市内の料理店経営者は「なんの手も打たずに、コロナ禍前の観光公害を再現するのでは、市民からの批判を浴びるだけではなく、将来的に重要な富裕層の顧客を失うことになる」と懸念する。

 「リベンジ消費」による国内観光客の増加が第一ステップだとすれば、第二ステップではインバウンド観光客の増加が起こる。

 この5月の連休は、第一ステップの端緒となりそうだ。さらに第二ステップに向けて、「国際観光都市・京都」がどのように変化するのか、目が離せないだろう。

神戸国際大学経済学部教授

1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、山形県川西町総合計画アドバイザー、山形県地域コミュニティ支援アドバイザー、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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