いつもそこにあった小売店が消える~コロナで街が変わる

コロナ禍による売れ行き不振が小売店を苦しめている。(画像・筆者撮影)

 新型コロナウイルスによる経営悪化については、飲食業や観光業がクローズアップされがちだ。しかし、その影響は、次第に小売業などにも拡大しており、ふと気が付くと、そこにあるのが当たり前だった小売店などが閉店していたということが、年度末にかけて相次いで起こっている。

・東急ハンズ池袋店も

 ネットでも多くの人が驚いたと意見を述べていた一つに、東急ハンズ池袋店の9月閉店の知らせだ。同店は、1984年に池袋駅方面からサンシャインシティへの入口にあたる場所に開店した。1階から8階までを占め、バブル景気も相まって、多くの人で賑わっていた。2019年6月にはリニューアルも行われたが、コロナ禍の影響もあり、9月末での閉店が発表された。

 40歳代の女性会社員は、「アート関係に詳しい店員が多く、大学の課題などをする際にも、池袋のハンズに行けば、なんとかなると同級生たちも通っていた」と懐かしむ。50歳代の主婦は、「ちょうど大学生の頃にオープンし、よく通った。買いたいものが沢山あって、夢が詰まっている気がして、本当に楽しかった」と言う。

 東急ハンズは、神戸の三宮店を含む3店舗を2020年12月末で閉店している。ある経営コンサルタントは、「もともと東急ハンズは、特別な商品を売っていたわけではなく、多くの商品を組み合わせ、うまくディスプレイし、若者が憧れる部屋や机の上を見せることで、ハンズで買うことの特別感を創り出していた。さらに、アルバイトやパートの社員に、工芸やアートなどの専門知識を持つ人材を配置して、モノを作ったり、加工する情報や知識を付加価値として顧客を集めてきた」と説明する。

 しかし、インターネットの普及によって、より多くの商品を比較検討し、より低価格で購入することが定着しただけではなく、「ほとんどのものについては、検索すれば、丁寧に説明しているサイトに行きあたる。動画サイトを見れば、マニュアルを見なくても自分でできる。」(20歳代の男子大学生)こうしたことが、東急ハンズの強みを急激に奪っていったとも言える。

 さらに長引くコロナ禍の影響で、西武グループの凋落によって、おしゃれで先端的なイメージが生まれつつあった池袋から、シンボル的な店舗が次々失われた。そうした流れの中で、東急グループに属する東急ハンズとしては、グループの本拠地である渋谷の再興に注力するという意味合いもあるのだろう。このように様々な要因が重なっての閉店決定だが、いずれにしてもコロナ禍によって、状況変化が加速され、コロナ後に元に戻らないのではないかと考える経営者が増えつつあることも確かだ。

3月21日閉店した「ジーンズショップ マルカワ本店」3月22日に撮影。(画像・筆者撮影)
3月21日閉店した「ジーンズショップ マルカワ本店」3月22日に撮影。(画像・筆者撮影)

・「駅前から、あの店が無くなった・・」

 3月21日に、小田急町田駅の西口を出たところにあった「ジーンズショップ マルカワ本店」が閉店した。小田急沿線では最大級の商業集積地である町田の商店街の入り口に位置し、地下1階から5階までビルが丸ごと衣料品店であり、創業60年の老舗店だった。それだけに、地元はもちろん周辺都市の人たちからも驚きの声が聞かれた。

 会社側の発表によれば、長引くコロナ禍による販売不振から、急きょ2月に閉店が決まった。アパレル関係企業の経営者は、「コロナ禍によって、外出、出勤する人が減り、スーツはもちろん外出着を購入する人が激減した。在庫がたまり、大幅な値引き販売が行われている。状況が改善しないと考えて、店舗の縮小、事業からの撤退を決断する経営者が増えている」と言う。実際に地方の百貨店や商業ビルでは、テナントとして入っていたアパレルメーカーや小売店が撤退し、その穴を埋めるのに苦慮する状況が生まれている。

 これまでは、低価格の衣料品を提供する店と、通常価格でブランド品や最新流行の商品を提供する店とが併存したが、ネット通販が浸透し、低価格品を専門に販売している店のお得感が消失した。そこにコロナ禍で溜まった在庫を一掃するために、これまで通常価格で販売していた店舗でも大幅な値引き販売をしている。衣料品の小売業では、これまでもネット通販の影響などで経営が非常に苦しくなっていたところに、コロナ禍が襲い、収益力が戻らず、撤退を余儀なくされているという状態だ。

非常事態宣言解除後、商店街には人出が戻ってきているが、閉店する店舗が目立っている。(画像・筆者撮影)
非常事態宣言解除後、商店街には人出が戻ってきているが、閉店する店舗が目立っている。(画像・筆者撮影)

・都心の商店街も見かけは賑わっているが・・・

 ネット通販との競合に、コロナ禍が襲った。東京都内のある商店街組合の関係者は、「これまで高齢者はネット通販に消極的な姿勢だった。ところがコロナで外出が危険だということで、子や孫に教えてもらってスマホで通販を利用するようになった。使ってみれば、家まで届き、重いサラダ油やペットフードなどを持って帰らなくて良いと便利さに気が付いた。こうした便利さをいった高齢者層が、コロナが収まって、以前のように商店街に戻ってきても、同じように買い物をするとは思えない」と警戒感をあらわにする。

 都内の行政職員は、「以前からその傾向はあったのですが、昨年以降、急激に進んでいるのが、廃業した空き店舗を使って日貸し、週貸しの出店です。シャッターが閉まったままになるよりは、ずっとましなのですが、外からやってきて、売るだけ売ったらいなくなる。見かけは賑わっているようなのですが、衰退の兆候だと思っています」と言う。

 一方、都心部の商店街で小売店を経営する男性は、「テレビを見ても、飲食店が苦しんでいるとか、助成金を出せとか言っているけれど、去年一年間、街から人が消えてしまった。売上げが大幅に下がったのは、飲食店だけじゃないんだけど、不公平感が強いよね。大手とか、派手に倒産でもすればマスコミで報道されるんだろうけど、知らぬ間に、この3月末で廃業した商店は多いんじゃないだろうか」と言う。

・コロナ禍が街を変える

 消費者への各種アンケートを見ても、「コロナ前と同じような消費行動に戻る」とする人の割合は半数程度だ。流通小売業の経営者は、こうした消費者の変化を見通し、店舗の統合や廃止、販売チャネルの転換を進めている。ある商店街組合長は、「ネット通販よりも、店に出かけようと思わせるような力を付けられなければ、淘汰される。経営者が高齢化して、あと数年はなんとかと考えていた店は、これで消えるだろう。あとはそれぞれの経営者の能力次第だ」と指摘する。

 人や商店が求める街のあり方が変化しつつあり、コロナ禍が流れを加速している。新年度が始まったが、コロナ禍が収束した時には、街が大きくその姿やあり方を変えるだろう。「いつもそこにあったはずの店」が消えることによって、多くの人が、今まさに、その変化の波を実感しているはずだ。

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