今日、7日から次々営業再開、、、大規模感染リスクはそのままで!?

なんの備えもなく、改善もなく元に戻るだけで良いのでしょうか(写真:アフロ)

・今日から営業再開が増加

 今日5月7日から、全国で営業を再開する店舗が急増しています。

 福島県郡山市のうすい百貨店は、4月23日から食料品売り場以外の全フロアを休業していましたが、やはり今日から営業再開をします。そのほかにも岩手県のさくら野百貨店北上店や鹿児島県のマルヤガーデンズ、熊本県の鶴屋百貨店など、全国で営業再開の動きが拡がっています。大丸松坂屋は、全国の8つの店舗で食品フロアのみ、平日のみですが、営業を再開します。また、これら以外の百貨店でも、来週明けの11日、12日頃からの営業再開を発表するところが増えています。

 

 こうした動きは、百貨店だけではなく、アウトレットモールやショッピングモール、飲食店などでも7日から営業再開をするところが増えてきています。

 散々、話題になったパチンコ店も、7日から休業要請が解除されて営業再開するのが13県、11日からが4県。もともと休業要請が出されていなかった高知県、徳島県を加えると、来週月曜日には19県でパチンコ店の営業が再開されます。休業要請が解除されていないけれども、今日から営業再開をするパチンコ店も複数あるようです。

 「日常が戻ってくる」という安堵感の一方で、なんとなく腑に落ちないような気持ちを持っている方も多いのではないでしょうか。

・テナント側が悲鳴

 こうした動きの背景にあるのは、百貨店やモールに出店しているテナント側の要請も強いようです。百貨店やモールのテナントで多いアパレル系は、新型コロナウイルスの流行以前から、景気の低迷やネット通販などの影響を受け、厳しい経営状況に直面していました。

 「これから夏物に入れ替えという時期に、急きょ閉館で、そこから立ち入りもできなくなったので、商品は一か月前のまま。従業員の給与は雇用調整助成金で、あとは補助金が出るじゃないかと言われますが、それでも全く足りない。赤字を垂れ流している状態で、これ以上、耐えられない。」関西地方のあるショッピングモールに出店する衣料品販売店の経営者は、そう嘆きます。去年の秋以降、暖冬で売り上げは伸びず、クリスマスや年末商戦も不発でした。「なんとかおぼれずに泳いでいたのを、上から頭を押さえつけられて水の中に突っ込まれている状態。もう息が続かない。百貨店やモール事業者は、テナントから撤退するか、早期再開かと突きつけられてしまっていた」と説明してくれました。

・自助努力も必要だが

 一方で、こうした動きに懸念を持つ経営者もいます。「同業他社が営業再開する気持ちもわかる。しかし、まだ感染拡大が本当にこれで終わりかどうか判断できない」と話してくれたのは、首都圏の飲食店経営者です。「経営者仲間と話をしても、資金的にも、精神的にもかなり追い詰められてきています。でも、営業再開することで、自粛破りだとか、嫌がらせを受けることも覚悟しなくてはいけない」と、非常に悩んでいると言います。

 別の飲食店経営者も、「無利子融資や助成金など、いろいろな人に相談して、申請をしていっている。しかし、やっとのことで書類を作成しても、審査が混んでいて時間がかかったり、あまりに細かい条件があったりと、世間で言われているほど、簡単にお金は入ってきません」と言います。この経営者は、「ただ、外出自粛や休業要請などを受けて、商店街組合で取り決めて休業しているのに、営業して、長い列を作ったり、店の前で飲食させているのを見ると、不公平だなあと思います」とも言います。

・もう大丈夫なのか?

 「これで、もう大丈夫なんだと言い出している経営者も多いですよ。」外出自粛や休業要請を感染者数の推移など一定の基準で判断するという大阪府独自の解除基準「大阪モデル」の発表を、すでに自粛や休業の解除だと勘違いしている人も多いというのは、大阪の商店経営者です。「大阪府は15日にクリアできていれば、解除していくと発表していますよね。これは素晴らしいし、目途が立ったのは良い。しかし、テレビなどでもう基準はクリアしているという情報をくり返すものだから、もう大阪は大丈夫だと思っている人も多い」と苦笑いします。

 関西地方の中小製造業企業経営者は、「みんな、かなりストレスが溜まっている。仮に15日の段階で基準がクリアした場合、段階的な規制解除といっても、実際に段階的に動く人間はいないのじゃないだろうか。一気に街にあふれだすだろう」と言います。「知り合いの飲食店経営者たちも、資金的にももう限界が近い。7日、15日と雪崩のように営業再開、町に人が戻るだろう。しかし、本当に大丈夫なのだろうか」と感染第2波、第3波の流行が起こらないか心配だと言います。

・営業再開後の大規模感染リスク低減は無し?

 ドイツなどでは、営業再開に当たって、新たな換気装置などの増設や衛生管理基準の見直しなど感染症予防対策を講ずることを条件にしつつあります。飲食店など人の集まるところでは、換気装置の増設やトイレなどの改修などを休業期間中に行い、次の流行期に備えるべきでしょう。

 もちろん日本でも、休業給付金ばかりが注目されていますが、環境省がすでに「大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業」を開始している。「中小企業が運営する不特定多数の人が利用する業務用施設(飲食店等)」に対して、高機能換気設備等の導入費用の2/3が補助されます。経営者も足元の問題の解決も大切ですが、同じ事態を繰り返すことを避けるために、こうした先々への対策を打っておくことも今の時期大切でしょう。

教室などへの感染症対策設備の増設は急務だ(画像・筆者・画像を加工しています)
教室などへの感染症対策設備の増設は急務だ(画像・筆者・画像を加工しています)

 大学などでも再開時期を巡って、授業料の一部返還や9月入学の実施など議論が多くなっています。商業施設の営業再開にしても、大学などの学校教育問題にしても、ことさら対立を煽り、おもしろおかしくしようとする動きも強いようです。しかし、そこからはなにも改善策は生まれないでしょう。それよりも、様々な分野の既存施設の大規模感染リスクを低減しなくては、また今年の年末から新年にかけて新型コロナウイルスやインフルエンザをはじめとする新たな感染症の影響を再び受けることになりかねません。

 本来、政府が資金を大規模に投入するべきは、この大規模感染リスクを低減するための事業ではないのでしょうか。それが完成してから、次の段階に観光振興などのPRキャンペーンという順番のはずです。

・「全てが過去と同じように戻る」で未来が見通せるのか

 「緊急事態宣言」は政府が出すが、「休業要請」や「外出自粛」は都道府県の責任でどうぞ、というのがどうも現在の政府の方針のようです。ですから、「休業要請」や「外出自粛」に対する補償も協力金も各自治体の判断でというようですが、地方自治体にはそれだけの充分な予算はありません。こうした無責任に見える政府の姿勢が、悪循環を生んでいるように思えます。

 結果的に、企業経営者たちは営業再開を決断せざるを得なくなり、そして地方自治体も企業経営者たちからの突き上げで、規制を緩和せざるを得なくなる。そして、飲食店、百貨店、モールなどの集客施設も、大学など学校施設も、大規模感染リスクを低減するための設備投資も行わないままで、次々と再開され、全てが過去と同じように戻る。しかし、それで、本当に「安心」できるのでしょうか。次の流行シーズンも、新たな未知の感染症は確実にやってくるのです。

 先にあげた環境省の「大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業」のような補助策を利用しながら、経営者としては、もうすぐスタートする「WITH コロナ」時代に備えるべきでしょう。

 

※環境省大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業

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