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グリーンエネルギーのはずが? - メガソーラー発電所建設でトラブル続出

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
八幡野八幡宮来宮神社(伊豆高原)

・グリーンエネルギー?

原発事故を契機に脚光を浴びている再生可能エネルギーだが、進展してくれば、そこには様々な問題が発生してきている。「グリーンエネルギーだと期待していたのが、こんなのことになるなんて」という声が、最近、よく聞こえてくる。

・神社で開催された催し

2017年6月10日、伊豆高原の八幡野八幡宮来宮神社で、メガソーラー発電所の建設について考える集まりが開催された。主催したのは、環境団体・伊豆グリーンプロジェクトチームで伊東市八幡野地区に民間企業が計画している大規模な太陽光発電施設建設「メガソーラー発電所」建設に反対を表明している。

この日は、関係者によるシンポジウムや演劇などが行われた。「貴重な鎮守の森に隣接した広大な土地が造成されてしまえば、生態系も大きく変わってしまう。」主催者団体の関係者は、神社で開催した意義をそう話す。

・東京ドーム20個分の開発計画

伊豆高原に建設が計画されているメガソーラー発電所は、過去にゴルフ場建設が計画されていた山腹の山林を伐採、造成する。敷地面積104ヘクタールで、そのうち47ヘクタールにソラーパネル12万枚を配置し、発電量40.7メガワットの大型施設となる。敷地面積では、東京ドーム20個分という巨大なものだ。

山林を造成する大規模開発工事を伴うことから、環境破壊や災害発生を心配する住民だけではなく、樹木が無くなることで泥水が海に流入することによる海中の環境変化を懸念する漁業関係者、ダイバーなど観光関係者からも反対運動が起こっている。

・高まる周辺住民の不安

反対しているのは、今回の催しを主催した伊豆グリーンプロジェクトチームだけではなく、伊東メガソーラー建設の中止を求める会やダイバーや漁師などが作る伊豆高原メガソーラーパーク発電所計画から海を守る会など複数の団体だ。

伊豆高原の場合、火山活動によって形成された急峻な地形であり、開発予定地からは急な斜面で海岸までつながっている。そのため、専門家からは土砂の流出や地下水への影響などが指摘されており、それだけに周辺住民からの不安の声が強い。

・メガソーラー発電計画を巡るトラブル

伊豆高原だけではなく、ここ数年、全国各地でメガソーラー建設を巡ってトラブルが発生している。今年(2017年)に入ってからでも、山形県飯豊町、栃木県日光市、三重県志摩市、京都府南山城村などで反対運動や行政の不許可などが相次いでいる。昨年(2016年)には、高知県四万十市がメガソーラー建設計画を条例に照らして不許可とした案件や、愛知県瀬戸市では事業者が市側の中止勧告を無視し、建設、売電を開始し、問題化した案件など全国でメガソーラーを巡る問題が続出している。環境にやさしいはずが、逆に環境破壊としてやり玉に挙がっているのは皮肉なことだ。

・固定価格買い取り制度の改正でメガソーラー人気は継続

政府は、2009年に太陽光発電の余剰電力買取が開始し、2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を導入した。太陽光発電以外の再生可能エネルギーにも拡げ、余剰電力買取制から全量買取制となったために、事業性を見出した多くの企業が発電所建設に参入したのだ。

しかし、政府が定めた買い取り価格が高額過ぎるという批判を浴び、見直しが行われた。そのため、一時は事業から撤退したり、倒産する企業も現れ、太陽光発電パネルのバブルは弾けたとも言われた。ところが、太陽光発電パネルの生産が韓国や中国で急増し、それにともない太陽光発電パネルの価格も下落、投資金額が低減された。そのため、新たなメガソーラー発電所建設を計画する事業者は依然として多い。

さらに、2017年4月1日より改正施行された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)では、売電業者は従来は義務化されていた一般電力会社を通さず、電力小売業者への直接販売が認められた。そのため、市場が拡大するという見方がも出て、メガソーラー発電所建設に対するファンドは依然として多くの投資家の関心を集めている。

・一部企業の強引な姿勢が問題化

メガソーラー発電所建設に対して反対運動などトラブルが続出している背景には、立地に適切な場所が無くなってきていることがある。建設に適した場所が少なくなってきた結果、山林などを買収し、造成によって用地を確保しようとする。

ここ数年、大量に敷き詰められた発電パネルからの反射光や反射熱などによる住環境への影響や、森林伐採による雨水や土砂の流出など自然災害への影響、さらに景観の悪化による観光産業への影響や野鳥など野生生物や植物への影響が問題視されるようになった。

・外資系企業主導に不安の声

さらに、外資系企業、特にソーラーパネルメーカーが出資した企業が、発電所建設を行っていることも、反発を引き起こしている。

当初は国内メーカーのパネルを利用することによる国内の産業振興の意義も主張されてきた。しかし、中国、韓国などでの外国企業による生産急増によって価格が下落した。国内メーカーが次々に生産の縮小、撤退をするに及んで、国内産業振興の意義は薄れた。政府が補助金を出して海外製品を購入することに対する疑問も出てきている。

さらに、海外メーカーが日本国内の投資家からファンドの形で資金を集め、その資金で自社製品を購入し、発電所を建設する計画に対して、「単に設備販売をしているだけで、その後の長期的運営まで本当に考えているのか疑問」という批判も強い。

メガソーラー発電所建設において、地元との協調を行い、地域活性化の可能性を探そうとする動きも一部企業では見られる。一方、地元と対立し、反対運動が起こっている事例の大半は、企業側の拙速な計画など強引さが目立っている。

・後手に回る行政

問題を複雑化させているのは、対応が後手に回っている行政の問題がある。メガソーラー発電所の建設に対する法規制はなく、地方自治体は新たな条例による規制を行う必要がある。

しかし、住民からの反対運動が起こってから、問題が発覚しても、企業側の手続きが正当に行われて、開発を阻止する手段がないというケースも多い。冒頭で紹介した伊豆高原のケースも、その一例で、自治体としては既存の建築基準法、森林法、環境基本法などに合致していれば企業側に中止を命ずる手段はない。

産業振興の面でも疑問が出ている。メガソーラー発電所の多くは無人で、遠隔操作だけで済む場合が多い。そのため、地元にとっては新規の雇用も創出されず、固定資産税も再生可能エネルギー関連は軽減措置が行われるために、地元にとっての経済効果は少ない。

こうしたことから、多くの地方自治体で規制条例が導入もしくは導入が検討されている。再生可能エネルギーの導入は資源の少ない日本にとっては、今後も重要な課題である。一部の企業のために、この流れが阻害されることのないよう、政府や自治体による適切な規制や指導が行われるべきだ。

・地域住民との連携があってこそのグリーンエネルギー

自然に優しい発電方法だからと、地方に迷惑施設を押し付けて、そこで発電した電気は都会に送るというのであれば、大きな意味での環境に優しいとは言えない。すでに、企業によっては地域社会との連携を打ち出し、発電施設を設置するだけではなく、地域振興策を提案し、地元連携を成功させつつある事例も出ている。

環境にやさしく、高利回りだからと再生可能エネルギー関連ファンドに投資する前に、その計画がどういったものか、投資する側も良く調べておくべきだ。地元住民と対立するような計画を強引に進める企業では、その後の運営にも問題を生じかねさせない。環境にやさしいグリーンエネルギーだと出資をしたら、それが地域の環境破壊を引き起こし、地元住民の生活に影響してしまうのでは、意味がないと感じる人が多いだろう。

原発事故を契機に脚光を浴びている再生可能エネルギーだが、善意で投資した人も「グリーンエネルギーだと期待していたのが、こんなのことになるなんて」と嘆いた頃には、手遅れである。環境問題を憂慮して投資先を考えている人にとっても、本来の「グリーンエネルギー」とはなにか、今、伊豆高原で起こっている問題から学ぶべきことは多い。

神戸国際大学経済学部教授

1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、山形県川西町総合計画アドバイザー、山形県地域コミュニティ支援アドバイザー、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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