右翼から見た民主主義とは?鈴木邦男に密着!

自宅で語る鈴木邦男さん(筆者撮影)

政治団体「一水会」の元最高顧問で、右翼の政治活動家として知られる鈴木邦男さんは不思議な存在だ。右翼なのに「愛国心という言葉は危険だ」と言い、「不自由な自主憲法より、自由な押しつけ憲法がいい」と改憲には反対の立場を取る。一部の右翼からは「左翼にいってしまった立場の分からない人」扱いを受けている。しかし鈴木さんは、政治思想や宗教に関係なく、様々な人たちと交流を続けている。その中には、元オウム真理教の上祐史浩さんや、麻原彰晃の三女の松本麗華さん(アーチャリー)、北朝鮮在住のよど号グループ、福島みずほさんなど、様々な背景を持った人たちがいる。そんな鈴木邦男さんの不思議を解き明かしたいと、私はこの夏から彼に密着するドキュメンタリー映画を撮影している。

一水会で行われた三島由紀夫と森田必勝の追悼祭で(筆者撮影)
一水会で行われた三島由紀夫と森田必勝の追悼祭で(筆者撮影)

鈴木さんの第一の不思議は、「愛国心」という言葉に疑問を抱いていることだ。長年、「愛国心」について考えてきた結果、「愛国」という言葉を理由に自分の正義を振りかざし、自分と異なる考えの人たちを排除することは危険だと言う。鈴木さんは特に、右傾化している日本の流れに危機感を感じている。「昔は色々な思想があったけど、今は思想ではなく、無意識のレベルで『日本は素晴らしい』『日本を愛さない者は非国民だ』と言われる。今、国家がそういう思想を持って、それを国民に押し付けようとしていることに僕は反対だ」と唱える。確かにここ何年か、テレビでは外国人が日本にやってきて日本が素晴らしいと連呼する番組や、どんなに海外で日本人や日本製品が素晴らしいと思われているかといったような内容の番組ばかりで、特に東京オリンピックに向けて、海外に日本がどんなにすごいかをアピールすることにメディアも政府も必死だ。私もそんな風潮に疑問を感じていた。そんな社会の流れが、自国さえ知っていれば、海外で学ぶ必要もないと思っている内向き思考の若者たちが増えている原因になっている気がしてならない。

上祐史浩さんと元公安調査官の西道弘さんとのトーク会場で(筆者撮影)
上祐史浩さんと元公安調査官の西道弘さんとのトーク会場で(筆者撮影)

鈴木さんの第二の不思議は、自分と異なる意見、思想の人たちの考えを積極的に学ぼうとする姿勢にある。自分と違う思想の人たちを「排除する」とか「こんな人たちに負けない」などの政治家の言葉を聞くと、自分と敵対する人たちを否定するという社会の傾向が強くなっていることをまざまざと感じる。そんな社会の流れの中で、鈴木さんはあえて自分と違う考えの人たちのところに出向いて行って、彼らの考えを聞こうとする。鈴木さんは、かつて敵対していた元日本赤軍の足立正生さんのパレスチナ勉強会に出向いて行ったり、よど号グループの人たちに会いにいくために北朝鮮まで何度も行っている。「方法はちがっても、日本のことを考えて、命をかけて戦ってきた人たちに出会うことは心を打つ」と鈴木さんは熱く語る。

また鈴木さんは世の中から糾弾された人たちとも交流し、彼らを理解しようと努力している。元オウム真理教の関係者たちとの交流を通して、「なぜあんな大きな事件を起こすまでに宗教が暴走したのかを学びたい」と鈴木さんは語る。ひかりの輪の代表の上祐史浩さんは、分裂した元信者たちの橋渡しをする「人と人との接着剤」に鈴木さんはなってくれるのではないかと期待していると語る。アーチャリーさんは「鈴木さんのすごいところは、報道だけを見てこういう人だと判断するのではなく、当事者に遠くまで会いに行くこと」だと語る。他者から学ぼうとする姿勢、また学びに対する好奇心が、74歳の鈴木邦男さんをいつまでも元気で若々しく、活動的にしているように見える。

作家の雨宮処凛さんとのトークの後で(筆者撮影)
作家の雨宮処凛さんとのトークの後で(筆者撮影)

鈴木さんの第三の不思議は、どんな人たちからも愛される老人だということだ。彼の周りにはつねに様々な人が集まってくる。ずっと独身を通し、都内の小さなアパートで一人で暮らすが、彼の周りにはつねに支える人たちが沢山いる。近年増え続けている独居老人とはかけ離れた存在だ。作家の雨宮処凛さんは、「孤独死しないための老人向けのマニュアル本」を書いたらと鈴木さんに冗談ぽく言う。鈴木さんの周りに様々な人たちが集まってくるのは、彼が自分の正義を振りかざさず、偉ぶらず、様々な背景の人たちを受け入れる姿勢を持っているからだと思う。

この何ヶ月間、鈴木邦男さんを見つめてきて、他者を排除せず、様々な価値観を持った人たちを受け入れ、共存していこうという鈴木さんの姿勢に多いに学ぶべきことがあるのではないかと実感している。そんな鈴木邦男という人の不思議と魅力にせまるドキュメンタリー映画を来年発表し、これからの日本のあり方を考えるヒントになればと願っている。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています】