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英雄モウリーニョがローマに、インテル3冠レジェンドらの印象は? 「セリエAが美しく、面白く」

中村大晃カルチョ・ライター
インテル監督に就任した2008年、イベントでのモウリーニョ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

イタリアメディアの関係者は、ほぞをかむと同時に、ほくそ笑んでいるかもしれない。

ローマが5月4日、来季からの新監督にジョゼ・モウリーニョが就任することを発表した。2010年にインテルで3冠を達成し、レアル・マドリーに去って以来、11年ぶりのイタリア復帰となる。

パウロ・フォンセカ体制の終焉が確実だったローマだが、直近で後任候補最右翼と言われていたのは、マウリツィオ・サッリだった。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙や『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙は、4日付の紙面でもサッリ招へいを前提とした記事を報じていた。

それが、モウリーニョである。度肝を抜かれたに違いない。ジャンルカ・ディ・マルツィオ記者は、『スカイ・スポーツ』で近年でも有数のインパクトと評した。移籍市場を主戦場とする記者たちには、「やられた」との悔しさがあるだろう。

一方で、モウリーニョほどメディアにとって「おいしい」監督はいない。会見などでの発言、ピッチ内外での行動やジェスチャー、最近ではSNS投稿と、すべてが人々の目を引くからだ。来季は話題に事欠かない。担当記者たちは忙しくなるはずだ。

そして、メディアだけではない。ロマニスタを筆頭とするファンも楽しみにしているだろう。カリスマの存在は、リーグ全体を盛り立てる。

ただ、インテリスタだけは、複雑な心境になっておかしくない。45年ぶりの欧州制覇とイタリア勢初の3冠、これ以上ない栄光にインテルを導いたモウリーニョは、まさしく英雄だ。モウリーニョもまた、事あるごとにインテルへの愛情を口にしてきた。この11年、相思相愛だったのだ。

そのレジェンドが、ライバルクラブのひとつであり、セリエAでタイトルを競ったローマのベンチに座る。インテル関係者やそのファンは、どう感じているのだろうか。

少なくとも、当時会長だったマッシモ・モラッティは喜んでいる。『ガゼッタ』電子版によると、モラッティは「驚いたが、とてもうれしい。リーグ戦が非常に美しく、面白くなる」と話した。

CL優勝時のモウリーニョとモラッティ
CL優勝時のモウリーニョとモラッティ写真:アフロ

「今の監督で優勝したことを考えれば、今年のインテル復帰は難しかった。ローマの選択も、モウリーニョの選択も、興味深い。アントニオ・コンテとの勝負はもちろん、両者とも特別な気合で面白くなるだろう」

幹部だったマルコ・ブランカも「とてもうれしい。ローマのクラブとオーナー、選手にとってファンタスティックな補強だ」と述べている。

「ローマは超一流の監督を得た。全体的な環境やセリエAの成長を絶対的に保証してくれると思う。ローマは超一流レベルの監督を得た。だから、そのレベルへの回帰を望んでいるということだ」

元選手では、エステバン・カンビアッソが「タイミングには驚いたが、インテルは特別だがイタリアのチームで指揮を執るのに問題はないという直近の発言で、こういうことは想像していた」と話した。

ディエゴ・ミリートは「イタリアサッカーにとって非常にポジティブなことだ」と述べている。

「インテルに戻ってほしかった。我々は彼が大好きなんだ。彼がうまくやることを願うよ。(古巣の)インテルやジェノアとの試合以外で、ね」

同じ気持ちのファンも多いだろう。ただ、インテルとローマの現状が、インテリスタの余裕につながっているのも確かだ。対戦時にどう反応し、試合結果で心境や関係に変化はあるのか。来季の両クラブの立場次第で、愛情そのものにヒビが入ることもあり得るのか。

確かなのは、来季のセリエAにモウリーニョ狂想曲が戻ってくるということだ。やっぱり、メディアはほくそ笑んでいるのではないだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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