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インテル攻撃陣は「近く・確実に・効率よく」得点? セリエA前半戦のシュート決定力比較

中村大晃カルチョ・ライター
2020年11月22日、セリエAトリノ戦でのルカクとラウタロ(写真:ロイター/アフロ)

「ボールがゴールに入らなかった」

「好機を演出したが、フィニッシュ精度を欠いた」

指揮官たちがこのように話すことは少なくない。実際、サッカーは点を取ってナンボのゲームだ。どれだけ見事なプレーを構築し、相手のゴール前に迫っても、大事なのは得点して勝つことだ。

1月31日、スイスの研究機関『国際スポーツ研究センター(CIES)・フットボール・オブザーバトリー』が、欧州の31リーグを対象に、1ゴールに要したシュート本数のランキングを発表した。『InStat』によるデータを参照にしたもので、1月25日までの国内リーグが対象となっている。

最も効率が良いのは、4.7本のシュートごとに1得点をマークしているハンブルガーSV(ドイツ2部)。2位はオリンピアコス(5.2本)、3位はバイエルン・ミュンヘンとVVVフェンロ(5.3本)だった。

では、セリエAのチームはどうか。一部でかつての「セブンシスターズ」のように評される上位7チーム(ミラン、インテル、ローマ、ユヴェントス、ナポリ、ラツィオ、アタランタ)に絞って見てみよう。

トップは全体29位のインテルで、6.0本ごとに1得点だった。以下、ローマ(6.1本)、ミラン(6.7本)、ラツィオとアタランタ(7.0本)、ユヴェントス(7.1本)、ナポリ(7.2本)と続く。

2月1日『CIES』データ参照、筆者作成
2月1日『CIES』データ参照、筆者作成

インテルはリーグ最多の49得点、ローマも3位の44得点を挙げている。ただ、すべて得点数と比例するわけではない。同じ7.0本ごとに1得点を記録しているアタランタとラツィオでも、前者は45得点でリーグ2位だが、後者は35得点とリーグ7位だ。

また、よりゴールに近い位置からシュートするほうが、得点の確率が高まるのは言うまでもない。シュートの平均距離を見ると、ロメル・ルカクとラウタロ・マルティネスという強力2トップを擁するインテルは、他と比較してかなり近い距離(15.2m)からシュートしているようだ。

2月1日『CIES』データ参照、筆者作成
2月1日『CIES』データ参照、筆者作成

さらに、ペナルティーエリア内からのシュートの決定率でも、インテル(65%)はユヴェントスと並び、アタランタ(67%)に続く2位の数字を記録している。インテルが「ゴール付近に迫り、高い決定率で効率よく得点しているチーム」となる。得点数が示すように、リーグ屈指の攻撃力というわけだ。

2月1日『CIES』データ参照、筆者作成
2月1日『CIES』データ参照、筆者作成

一方で、興味深いのが、1試合未消化にもかかわらず、リーグ4位の43ゴールを挙げているナポリだ。ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は、決定力が課題とたびたび話している。

実際、7.2本ごとに1ゴールというナポリの決定力はリーグ9位で、平均シュート距離は「セブンシスターズ」で最も遠い17.9m。ペナルティーエリア内の決定率も56%と“7強”で最低の数字だ。リーグ全体で見ても、距離は15位、ボックス内決定率は17位となっている。

ナポリはジェノア戦やフィオレンティーナ戦で6-0と圧勝しており、アタランタ戦やカリアリ、クロトーネとの試合でも4得点を挙げた。だが、6つの黒星のうち3試合で無得点、3試合で1得点に終わっている。ハマればゴールを量産できれば、そうでないとネットを揺らせないということだ。

得点数が4位、失点数も2位ながら、6敗して5位という成績の一因かもしれない。未消化のユヴェントス戦に勝てば、3位ローマに勝ち点で並ぶのだが、ガットゥーゾとナポリを取り巻く雰囲気は重苦しい。結局のところ、カルチョの世界で最も重視されるのは結果だからだ。

サッカーは、内容が良くても勝てないことがある。逆に、今ひとつの内容でも勝利が求められる時がある。ただ、悪い内容で安定して勝つのは難しい。長いシーズンの最後に笑うことができるのは、それらのバランスを最もうまく取れたチームだ。

前半戦を首位で折り返したのはミランだった。ただ、「セブンシスターズ」の勝ち点差は9ポイント。近年まれにみる混戦を制し、最後に笑うのはどのチームだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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