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「敗北者たちめ!」 罵倒にキレたローマ副主将をクラブが擁護 「恥ずべき言葉を使った人と違う」

中村大晃カルチョ・ライター
9月9日、練習試合でのペッレグリーニ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

何が決定的な引き金だったかは分からない。ほめられた行為ではないかもしれない。だが…。

12月6日のセリエA第10節で、ローマはサッスオーロとホームで0-0と引き分けた。ミラン、インテル、ナポリ、ユヴェントスと、今節勝利した上位を争うライバルたちに差を広げられている。一方で、宿敵ラツィオには勝ち点1差に迫られた。

チームに不利に働いた議論を呼ぶ判定も少なくなかっただけに、サポーターがフラストレーションを募らせても不思議ではない。だが、ファンとは呼べない一部が暴走したようだ。

試合後、副キャプテンを務めるロレンツォ・ペッレグリーニが、インスタグラムのストーリーズで、罵倒を浴びせる者たちへの怒りを表した。

「君たちはおしゃべりし、全員を罵倒し続ける。僕たちは、このユニフォームのために走って戦い続ける。敗北者たちめ。フォルツァ(がんばれ)、ローマ。この素晴らしいグループよ、フォルツァ」

その後、ペッレグリーニは「『敗北者』という言葉を使ったのは間違いだった」と釈明している。

「ただ、スポーツ的な批判をする人たちに向けたものではない。もちろん、そういった批判をする自由は誰にでもある。そうではなく、侮辱する人たちに向けたものだった。僕たちがサッカー選手である前に人間であることも忘れないでくれ」

サッスオーロ戦でペッレグリーニは決定機を逃す場面があった。危険なタックルを足首に受け、負傷交代も余儀なくされている。そのプレーで相手にレッドカードが出なかった判定も物議を醸した。選手がナーバスになっていたことは想像に難くない。

それゆえに、「敗北者」という言葉を使うほどキレたのかもしれない。もちろん、それでも安易にSNSで怒りをぶちまけるべきではなかっただろう。だが、もうひとつの理由もあったのかもしれない。

翌日、ローマのグイド・フィエンガCEOは、『ANSA通信』の電話インタビューで「選手としてだけではなく、人としても、我々はクラブとしてペッレグリーニを支える」と、副主将を擁護した。

「昨日のように、間違いを犯し、すぐにそれを認め、気分を害したかもしれない人々に謝るのは、誰にでもできることではない」

さらに、フィエンガCEOは「ペッレグリーニは謝罪した」と続けている。

「直近で彼と彼の素晴らしい家族に恥ずべき言葉を使ってきた多くの人々と違ってね。それらの人の言葉は、サッカーに関する批判や評価とは関係なく、人を侮辱するためだけを狙ったものだ。ロレンツォはローマの財産であり、我々は彼を誇りに思っている」

フィエンガCEOのコメントから、ペッレグリーニをキレさせた理由のひとつに、家族に対する侮辱もあったことがうかがえる。ペッレグリーニは今月、第2子が誕生予定と明かしたばかりだ。

地元出身でフランチェスコ・トッティやダニエレ・デ・ロッシに続く「ローマっ子のキャプテン」として将来を期待されているペッレグリーニだが、同時に批判と重圧も大きい。

その批判と重圧に耐えられるかどうかは、ペッレグリーニ次第だ。先輩たちも同じ道をたどってきた。だが、家族への誹謗中傷は別物だ。トッティもデ・ロッシも同様の被害に遭ってきた。しかし、「だから彼らのように乗り越えろ」というものではないはずだ。

もちろん、真のサポーターは、ローマの財産を大切に思っているに違いないだろうが…。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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