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「トッティのつもり?」「図に乗るな」 SNSで失敗のザニオーロに批判、ローマのファンが擁護

中村大晃カルチョ・ライター
2019年12月、セリエAフィオレンティーナ戦でのザニオーロ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

クラブを去った今でも、ローマにおけるフランチェスコ・トッティは絶対的な存在だ。それは誰もが知っている。では、ローマの選手がトッティを描いた壁画の存在を知らないことは、罪なのだろうか。

イタリア紙『コッリエレ・デッロ・スポルト』や『メッサッジェーロ』などによると、ローマのニコロ・ザニオーロが10月7日、SNSに投稿した画像を巡って一部のファンから批判を浴びた。

ザニオーロが投稿したのは、モンティ地区にある有名なトッティの壁画だ。しかし、その顔はトッティではなくザニオーロのものだった。加工した画像と思われる。

おそらく、ザニオーロは壁画の存在を知らず、ファンが自分のために描いて知らせてくれたと勘違いしたのだろう。「モンティ地区にこの壁画をつくってくれた人に特別な感謝。あなたたちを、そしてこの素晴らしいクラブカラーを纏えることを誇る」とのコメントを添えていたからだ。

当然、ローマのサポーターは、壁画のオリジナルモデルがトッティだと知っている。そのため、一部が「図に乗るな」「分をわきまえろ」「トッティにまでなったつもりか?」と“炎上”させてしまったのだ。

さらに、壁画の存在を知らなかったことを批判する声も寄せられた。『メッサッジェーロ』紙も「ザニオーロ、SNSでなんという失態!」という見出しで勘違い投稿を報じている。

その後、ザニオーロは投稿を削除した。

だが、彼のミスは、批判の嵐にさらされるほどのことだったのか。

2018年夏に移籍してから、ザニオーロは一気に花形選手へと成長した。地元出身のロレンツォ・ペッレグリーニとともに、ローマの将来を担う若きスターと期待されている。それでも、トッティまでの道のりは長い。それは本人が誰より分かっているだろう。

21歳らしいやんちゃなところも時折見せるザニオーロだけに、一部の過激ファンは、天狗になっていると考えたのだろうか。

ただ、周知のように、ザニオーロは先月、左ひざ前十字じん帯断裂の重傷を負ったばかりだ。右ひざの同じ負傷から8カ月も経たないうちの2度目の悲劇である。母親は、診断直後に本人が涙しながら引退まで口にしたと明かした。

それから気持ちを奮い立たせ、手術を受け、ザニオーロは来年の復帰を目指してリハビリを始めた。その選手が「オレはトッティだ」などと考えるだろうか。

壁画を知らなかったことも、『コッリエレ・デッロ・スポルト』によれば、大半のサポーターは問題視していないという。「彼はマッサ(トスカーナ州)生まれでローマに来て3年」「くだらない合成でイタリア最高のタレントを攻撃するなんて、言葉もない」といった擁護の声が上がったのは幸いだ。

先日、ザニオーロは同じ前十字じん帯の負傷に見舞われたローマ女子チーム所属のイタリア代表、ジャダ・グレッジに激励の動画メッセージを送った。その中で、彼は「本当に自分を大切に思う人のそばにいて、自分のことを考え、より良いかたちで復帰するのが大事」と話している。

ザニオーロも、自分を愛す人のそばで、ピッチに戻ることだけを考えているはずだ。ファンは、その日を楽しみに待っている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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