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インテルが監督交代すべき5つの理由? 「勝者のメンタリティー」にはコンテ続投が必須か

中村大晃カルチョ・ライター
8月9日、ELレヴァークーゼン戦を翌日に控えたコンテ。来季もインテルで指揮?(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

目標は一致している。ヨーロッパリーグ(EL)でベスト8に駒を進めたインテルが目指すは、10年ぶりの国際タイトルだ。優勝すれば、指揮を執るアントニオ・コンテ監督にとっては、国際舞台での初トロフィーとなる。クラブも指揮官も、目の前の戦いに集中しているところだ。

一方で、インテルはコンテの進退を巡るシーズン後の話し合いも注目される。セリエA最終節のアタランタ戦で、指揮官が試合後にクラブを公然と批判したからだ。以降、インテルは“離婚”の可能性が騒がれている

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は先日、指揮官の望む補強に動く用意がクラブにあるが、公の場でのクラブ批判や挑戦的な姿勢は今後容認しない考えと報じた。その点で合意できない場合、待っているのは“離婚届”という。後任候補の最右翼と言われるのが、マッシミリアーノ・アッレグリだ。

◆交代賛成派

アルベルト・チェルッティ記者は、アッレグリ招へいに賛成している。8月6日、『Calciomercato.com』のコラムで「私がインテリスタなら、少なくとも5つの理由から、来季はコンテの代わりにアッレグリを見たい」と主張した。5つの理由は、要約すると以下となる。

  1. コンテの不満継続による緊張への懸念
  2. ユヴェントスでの後任アッレグリの戦績
  3. 欧州のステージにおける両監督の違い
  4. チームマネジメント力に長けたアッレグリ
  5. アッレグリに期待が懸かる優勝の新記録

シーズン中もクラブを批判していたコンテだが、アタランタ戦は2-0と快勝し、優勝したユヴェントスに勝ち点1差の2位でシーズンを締めくくった試合。それにもかかわらず、コンテはクラブ批判で空気を一変させてしまった。

指導者転身後、コンテがどの雇い主とも衝突してきたのは周知のとおりだ。チェルッティ記者は、続投すれば今後もインテルを批判し続ける恐れありと指摘。2014年、プレシーズン開始後にユヴェントスを退団した過去から、「新たに危険な緊張を及ぼす可能性が高い」と懸念を示す。

そして、コンテからユーヴェを引き継いだアッレグリは、すぐに結果を出した。国内連覇を続けるとともに、チャンピオンズリーグ(CL)で12年ぶりに決勝進出。在任5シーズンで5年連続スクデット(セリエA優勝)、コッパ・イタリア4連覇、そして2度のCL準優勝と堂々の成績を残している。

ビッグイヤーには届かなかったが、CLファイナルを2回戦った実績は大きい。対するコンテは、国際舞台でベスト8どまり。決勝に駒を進めたことはない。今季のCLでも、インテルはグループステージで敗退している。

チェルッティ記者がもうひとつ指摘したのは、アッレグリがコンテやアッリーゴ・サッキのような「完全主義・集権主義」の指揮官でない点だ。「マルチェッロ・リッピの戦術的折衷主義、カルロ・アンチェロッティのバランス、ファビオ・カペッロの良識」や、「父親や主人になることを求めずに、最高級の選手たちやフロントと対話する能力」を持つと称賛した。

最後は、希望的な理由だ。ミランとユヴェントスでスクデットを獲得しているアッレグリは、インテルでもセリエAを制覇すれば、北のビッグ3すべてで優勝した初の監督となる。ユヴェントス同様、インテルでもコンテの後任として国内の頂点に立てば、サポーターの喜びは想像にかたくない。

◆交代反対派

しかし、就任1年でコンテが去れば、大きく計画が狂うのも事実だ。フィリッポ・トラモンターナ記者は、チェルッティ記者の3時間後に同じ『Calciomercato.com』のコラムで、コンテは続投すべきと監督交代に反対した。

今季のインテルはセリエAで24勝10分け4敗。ジョゼ・モウリーニョの下で3冠を達成した栄光の2009-10シーズンと同じ成績だ。欧州の舞台で8強まで進んだのも、3冠シーズンの翌年、レオナルドの指揮でCL準々決勝を戦って以来、9年ぶりとなる。復活の兆しとも言えるだろう。

トラモンターナ記者は「今のインテルが飢えていることは否定できない。監督の飢えだ」と、コンテによってインテルが変わりつつあると強調した。

「取りつかれたような、ヒステリックで狂気的な勝利への飢えだ。だがそれは、恐怖や無冠の年月を経て、インテルに必要だ」

さらに、同記者は「これがコンテであり、契約した時からそれは分かっている。受け入れなければいけない」と続けた。

勝者のメンタリティーをつくるため、選手たちを勝利に取りつかれたかのようにするために、今のインテルに適切な人物だ。今後2年もそうでなければならない」

インテルがコンテの下で「明らかに成長」していると主張するトラモンターナ記者は、「そのプロセスに反するようなドラスティックな対策・決定に至ることなく、この状況をマネジメントできるのが偉大なクラブ」と訴えた。

「コンテの代わりに誰が来ても、直近の進化をもたらした素晴らしい仕事を中断することになる」

◆まずはEL

トラモンターナ記者の主張に加え、コンテからアッレグリへの変更は、莫大なコストを要することも忘れてはいけない。コンテの高額サラリー契約を残したうえで、同じく高額サラリーとなることが不可避のアッレグリと新契約を結ぶからだ。

ただ、チェルッティ記者が言うように、ユヴェントスはアッレグリの下でコンテ時代を上回るほどの結果を残した。インテリスタが何より望むのは、タイトルという復活の証だ。

だが、そのタイトルをコンテが手にすれば、続投の可能性は高まる。クラブがコンテの要求を満たす可能性も高くなるからだ。

結局のところ、ELトロフィーが、クラブとコンテの双方に利点となることは変わらない。インテルは、10日のレヴァークーゼン戦を乗り越えられるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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